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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第四章 氷の大陸メスティア編
212/266

・第二百二話 『薪』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


 異世界からおはよう。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、湖の次は山なんだ。

 いや実際、兄貴も不安になるよ。

 なんせこの山を越えた先は、まだ見ぬ氷人族と雪人族のテリトリー。

 それも主戦場である、『紅雪の谷』って言う所らしい。

 ポーラの説明を信じるとだな・・・なんでもその『紅雪の谷』にまつわるエピソード、地名の由来ってのがちょっとしたホラーなんだよ。

 良くあるっちゃ良くある話なのか?

 本来真っ白な新雪が降り積もる谷は、氷人族と雪人族の度重なる戦争で・・・その犠牲者の血で赤く染まっているらしいんだ。

 な?ちょっとしたホラーテイストだろう?

 「どうしてそこまでするの?」って・・・そうだな、兄貴もそう思うよ。

 ただ一つだけわかってるのは、そこにあの青いおっさんが絡んでるってことだけだ。

 ならおれが出来ることは・・・信じて待っててくれるよな?



 ■



 なんだかんだ異常に疲れるはめになった、箱内のアレコレ。

 イアネメリラほんと自重しろよ?

 ロカさんとか全身アフロ化したショックで、ちょっと拒食症になりかけたんだからな!

 結局、メスティア上陸メンバーとなった現在。

 天気は快晴、朝一番から『氷積湖』をリライに乗って踏破中。

 ポーラも「じっさまの話だとここが好天なのは珍しいべ!」と言っていて、事実道程は順調そのものだ。

 にもかかわらず、おれは釈然としない思いでいっぱい、朝食は軽くしたはずなのに胸がいっぱい。


 (なんだろう・・・このそこはかとない不安は・・・。)


 原因はたぶんアレだろう。

 一番後ろに乗ってるアイツ。

 どうやらポーラとロカさんは視界に入れないことに決めたようだが・・・アフィナとシルキーはチラチラ何度も振り返る。

 気持ちは大いにわかるぞ。

 と言うかフォルテ、お前ばかなんだろう? 

 何が奴の琴線に触れたのか、「直してやる。」って言ってるのに頑なに拒絶。

 フォルテの頭部はアフロのままだった。


 「なぁフォルテ・・・お前ずっとそのままで居るつもりなのか?」


 「えっ!?」


 さも「びっくりした!」という風情、ちゃんと聞こえているはずなのに、わざわざ二度見までかますフォルテ。

 イラッ!

 一瞬で怒りのゲージが溜まる。

 何だろうか?こいつに舐めた態度を取られると非常にイラつく。

 おれの苛立ちに気付いたのか、慌てて手を振りながらフォルテは語る。


 「知らないんですか若様?アフロは男の最強ヘアースタイルなんですよ。攻めて良し、守って良し、枕にして良し!」


 良く分かった。

 つまりは最後の枕が目的なんだな?


 「良し、じっとしてろよ?今丸刈りにしてやるからな。」


 「ぎゃー!若様の鬼畜ーーー!」


 おれたちがどうでもいいことで争っていると、ポーラが窘めてくる。


 「セイもフォルテも暴れねぇで欲しいべー!こっから山さ登るのに、リライが難儀してまうべよ!」


 うん、正直すまんかった。

 「若様おこられたー!」とニヤニヤするフォルテに、おれは黙って金箱を突き出した。

 瞬間、「ごめんなさい!」と綺麗な土下座。

 今はもう落ち着いているはずなんだが、どうやらフォルテにとっても十分トラウマになったらしい。

 それにしても、リライの背中の上でジャンピング土下座とか・・・良くやるわ。


 緊張感を欠いた道中。

 視界、徐々に山脈が近づく。

 体感、徐々に体の均衡が傾いていく。


 「ポーラ、ここはもう山脈なのか?」


 「んだべな・・・おいはそう思うども・・・。ロカさんどうだべ?」


 おれの問い、しばし逡巡するポーラはロカさんに話題を振る。

 ロカさんは相も変わらずリライの頭頂部にすっく立ち、尻尾をピコピコ振りながら数度頷いた。


 「間違いないのである。今まで感じていたさらな水の気配、今はもう感じられないのである。」


 ふむ、どうやら『氷積湖』の分厚い氷の下、水源は健在だったらしい。

 それをロカさんは感じ取れていたようだ。

 水の気配が無くなったと言うことは、自ず陸地へと到達したと考えて良いだろう。

 

 (思ったより早かったな・・・。)


 リライのおかげか、何事もなく湖を後にする。


 「いやぁ若様・・・何も起こりませんでしたね?こういう時って・・・ね?」


 おいフォルテ、変なフラグ立てるのやめろ!

 我らが誇るフラグマスターのアフィナさんですら、はっきりと嫌な表情浮かべたぞ?



 ■



 遠目に見えていた山裾に到達。

 さすがにこの辺まで来ると、針葉樹の類が乱立していた。

 『地球』のように人手は入っていないだろう。

 思い思いの場所で天へと向け、大樹とも言えるサイズ。

 雪化粧で白く染まっているが、上部には針金のような葉が十分に茂っている。

 きっと古代兵器云々がある前から存在していた木々。


 斜度が付き障害物が現れたというのに、リライの健脚は全く翳りを見せなかった。

 おれたちを長毛でしっかり寒気から守りながら、彼は悠然と雪原を闊歩する。

 サックサックっと巨体には似合わぬ軽い足音。

 パウダースノーに見える細かな雪にも、彼の身体が沈み込むことは無い。

 揺れも少なく、いつのまにかアフィナとシルキー、それにいつものフォルテが舟を漕ぐ。

 騎獣に乗ったまま居眠りとか中々器用な真似を・・・。


 程なくして・・・。

 山の中腹ほどまで来たのだろうか?

 リライの軽快な歩みが緩やかになっていく。

 やがて彼は完全に立ち止まり、おれを振り向き「ヴォフ!」と一声。


 「ん?どうした?」


 「ああ、なるほどだべ。」


 意味が分からないおれに対し、ポーラは一人得心顔だ。

 ポーラ曰く・・・このまま進むと遮蔽物の無い山頂で、真夜中を迎えてしまうとのこと。

 人間は白夜のせいで完全に時間間隔が狂っているようで、リライが率先して「そろそろ休憩した方が良いんじゃない?」と示してくれたらしい。 


 「それに山頂付近には、「リライでも威圧できない魔物が居るかもしれない。」ってじっさまが言ってたべ。」

 

 ああ、その話はおれも聞いたな。

 ならば是非もない。

 リライが止まってくれた場所は木々が多少密集しながら、ぽっかりと開けた広場のようになっている場所。

 実に野営向きの場所と言えた。


 それにしてもとしみじみ思う。

 ポーラにせよ、リライにせよ、この地でもおれは出会いに恵まれた。

 この地域、彼らの協力無くして進むことは、絶対に不可能だっただろう。


 寝こけている三人を起こし、今日はここで野営することを告げる。

 今回は密集した針葉樹とリライの二方面で壁を、『図書館ライブラリ』から天幕を引っ張り出して設置。

 今日も今日とて『雪狼スノウウルフ』の毛皮を敷き詰める。

 こればかにできねーんだ。

 

 (さて・・・ダッチオーブンで簡単に済ませるか・・・。)


 そんなことを考えながら、『図書館ライブラリ』をめくっている内ハタと気付く問題点。

 意外と薪の消費が早いのだ。

 一応ヴェリオン出立時には結構な量を『カード化』してきた。

 しかし、本来ならば『最後の港町』ミブにて、再補充する予定だったのである。

 ポーラの里でそれなりに分けてもらったのだが。

 そこはやはり彼らにとっても必需品である以上、決して無理は言えなかったのだ。

 それでもおそらく彼ら、限界に近い量を持たせてくれたであろう。

 

 暖を取るため仕方ないっちゃ仕方ないのだが、思ったより使ってしまっていたようだった。

 もちろん今すぐどうこうって訳じゃあない。

 だがここは今、幸いにも木々に溢れる山中。

 薪集めができますね!


 そして思い出してほしい。

 今の状況、働いている人々、働かざるもの食うべからず!

 周囲の警戒に余念の無い『索敵』持ちのロカさんと、『魔眼』持ちのポーラ。

 料理や拠点作りを一手に振られているおれと、そのアシスタントであるシルキー。

 道中頑張り続けてくれたリライは、当然最初から論外。

 あれ?全く話に出てこない人が二名ほど居ませんか?

 そうです!皆さんご存知、残念とニートである。


 「薪の在庫が心もとない。アフィナとフォルテは薪広いだ。」

 

 「「えええええええええええええ!?」」


 声まで合わせるお荷物二人。


 「反論は認めない。」


 静かに告げたおれの声音に、揃って大げさ肩を落とす。

 小声で「横暴」「鬼畜」などと呟きながら、とぼとぼと歩きだした二人を端目に、おれはダッチオーブンに向き直った。

 その時おれは、すっかり失念していたのだ。

 変なフラグを立て終えているアフロニートと、フラグが遥か成層圏にあろうとも、確実に引き寄せる天運を持つ残念。

 揃って行動と言う安定感、フォローが居ないと言う危険性。

 そりゃ・・・拾ってくるよねぇ・・・。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


※実は・・・新作書いてみました^^;

まだプロローグだけ、かなたび優先の為不定期になると思いますが、良ければそちらも覗いてやってください^^

0時に予約投稿しておきます~><

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