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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第四章 氷の大陸メスティア編
187/266

・第百七十七話 『里』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈!魔眼である!

 兄貴も耳を疑った。

 その余りにも有名なキャッチコピー。

 額に第三の目が出てきて二重人格だったりとか、或いは漆黒の竜を放って敵を消し炭にしちゃったりするのだろうか?

 うん・・・何か混ざったな。

 特に後半は魔眼じゃなくて邪眼だった気がする。

 本人に聞けば、「魔力の質を視覚として捉えるだけ」だとか。

 でもおれの魔力にアルカ様の力が混ざってるって言ってたからなぁ。

 使いようによっちゃ、かなりの便利能力じゃないのかと思う。

 いや・・・そもそもが魔力ってなんだよ?って言われたらどうしようもないんだが。

 え?おれは厨二じゃないぞ!?

 実際にそういう不思議エネルギーがあるんだから仕方ないじゃないか!

 待て!おれは確かに左利きだが、右手に何かが封印されてるとかねーから!



 ■



 突然の平伏から魔眼のカミングアウト。

 これが『地球』だったら、正直厨二を疑うしかないのだが・・・ここは異世界、そんな能力も十分ありえる。

 言われてみればおれの「魔導師」って名乗りも完全にスルーだった。

 それに・・・ポーラは初対面でロカさんのことを、「精霊の類」って口にしていたからな。

 一見して赤い目と黒い毛並みの子犬にしか見えないはずなのにだ。

 その時すでにおれたちの魔力を視認していたって事だろう。

 いや、これは誤算だった。


 とりあえずしきりに恐縮するポーラを宥め、アルカ様の『加護』について当たり障りの無い所を説明しておく。

 一応の納得を見せたポーラに安堵しつつ、その会話の中でフォルテに確かめた。

 ちゃんと活動してくれるのか?それとももう箱に戻って休むのか?

 これから移動するに当たり、今までのような無気力状態だと非常に足手まといだからだ。

 せめて・・・武器持ってる時の半分でもやる気を出してくれればなぁ。 


 「うーん・・・。」


 さすがに真剣に考えているのか、顎に手を当て首を捻るフォルテ。

 結構きつめに言ったからな。

 いくら貴重な遠隔物理の盟友ユニットだったにせよ、毎度毎度船上でのくだりを繰り返す気にはなれない。

 最悪、『魔導書グリモア』から控え(サイド)に降格も考える。


 フォルテはひょいっとおもむろに、金箱に頭を突っ込む。

 明らか上半身だけ、どうやっても人間が入れるようなサイズじゃない箱の中へ消える。

 パッと見、恐怖映像以外の何者でもない。


 (おま!少しは空気を読め!)


 せっかく落ち着いたポーラが、また動揺してイスから立ったり座ったりしてるじゃねーか!

 その姿は癒されるけども!(マテ 


 箱に頭を突っ込んだフォルテが、「うわぁ・・・。」と呟くのが聞こえた。 

 すぐにこっち側に戻ってくると、「信じたくない。」とでも言うように何度も頭を振っている。

 そしておれに正対すると、両手を腰にピッタリ付けた丁寧なお辞儀。

 角度がすごいな・・・正に90度、最敬礼ってやつ?

 そして普段・・・それこそVRバーチャルリアリティで使っていた時ですら聞いたことの無いハキハキ感、ありえない言葉を発した。 

 

 「若様!僕頑張るからこっちに置いて下さい!」


 ・・・いや、何があった?

 ロカさん共々凍りつく。

 こいつがこんなになるほど箱の中がひどいのか?

 聞きたいような、聞きたくないような・・・むしろ決して聞いてはいけないような。


 「フォルテ・・・箱の中はどうなっているのであるか?」


 アッー!

 おれが聞くかどうか迷っている間に、ロカさんが率先して尋ねてしまう。

 フォルテは一つ頷き、見てきた光景を語った。


 「見た感じ無事なのはイアネメリラさんとリザイアさんだけで、現在戦闘中でした。他のメンバーは・・・死んでは居ないと思いますけど・・・。見渡す限り全員倒れてピクリとも・・・。あっ!メルテイーオさんは隅っこでガタガタ震えてましたね。未だに隕石が降り続いてますし、戻ったら間違いなく犠牲者の仲間入りです。」


 ・・・ナニソレ怖い。

 イアネメリラとリザイアが闘ってるらしいけどなんで?

 あいつら変態どもの再教育のために共闘してたんじゃないの!?

 しかもほぼ全員倒れてるとか・・・どう考えても悪ノリしたプレズントやラカティスは仕方ないにせよ、関係無かっただろうアルデバランとかアリアン、防御系では最高峰のサーデインも一緒くたに吹っ飛ばされてるって事?

 それに箱の中で隕石が降り続く状態ってなんなんだ?

 疑問符しか出てこねーよ!

 つっこみ所がありすぎるorz


 「なので・・・しばらくは誰も召喚できないかと・・・。」


 つまり今居るメンバー、ロカさんに残念と馬の人・・・保身のためやる気を出したニートと、魔法カードだけでしばらく凌げと・・・。

 なにその縛りプレイ。

 やり尽くしたゲームの二周目じゃねーんだぞ!?

 アフィナがおれに「ど、どういうことっ!?」と聞いてくるが、こっちが聞きたい。

 シルキーは目を見開き、ロカさんも口があんぐりだ。

 話についていけないポーラはオロオロするばかり。

 誰か頭痛薬を・・・。



 ■



 仕切りなおし、連れだって甲板へ向かう。

 寒いのはわかっていたからな・・・一応用意してあったコート類を、『図書館ライブラリ』から取り出し具現化、仲間たちに配布する。

 ロカさんはおれの腕の中だ。

 「ボクに抱かせて!」と抗弁するアフィナは当然シカトである。

 うん、あったかい。

 

 身を切る寒さが堪えたか、周囲に小さな火玉を浮かべるアフィナ。

 だからズボンを履けって言っただろう?

 シルキーはちゃんとおれの言うこと聞いて、ワンピースの下にズボン履いてるからな。

 アフィナの風魔法で船の下へふわりと着地。

 さくっと潜水艇を『カード化』して、『図書館ライブラリ』に収納する。 

 

 ポーラの先導の下、流氷の上を歩き出す。

 向かうはポーラの住む里だ。


 「しかし・・・セイ・・・様は本当にアールカナディア様の使徒様なんだな・・・。」


 ポツリと呟くポーラ、微妙な距離感。


 「ポーラ、様付けとかやめてくれ。使徒なんて・・・そんな大層なもんじゃない。お互いの希望が一致しただけさ。」


 これは本当。

 おれは自分のことを使徒なんて者とは思って居ない。

 色々と便宜を図ってくれるアルカ様の願い、「この世界を救って欲しい。」ってのは・・・できる限り助力したいと思ってはいるが。

 あくまでもおれや幼馴染たちの目的は『地球』への帰還だ。

 各国を救ったり帝国と・・・ひいては『略奪者プランダー』と闘っているのも、根底にある理由はそこだ。

 まぁ・・・おれの目の届く場所、手が伸びる場所に限ってなら・・・吝かでも無いけどな。

 ポーラはおれの言葉にしばし沈黙、「・・・だか。」と小さく呟いた。


 それなりの速度で約一時間ほど歩いただろうか。

 変わり映えのしない白一色の平坦な世界に、初めて違う雰囲気が見えてきた。

 白一色なのは変わらない。

 いや・・・中には茶とか黒も存在していた。

 比較的落ち着いた感じの暗色系が多いかな。

 そして幾つものこんもりと盛り上がった小山とテント。

 所謂、カマクラのようなものを利用してテントと組み合わせているのか、二階建てになっているものすらある。


 そして茶とか黒っていうのは、ポーラの話にも出てきた海豹族やセイウチ族の獣人だろう。

 ポーラ自身と同族、白熊族の住人も見受けられる。

 『地球』では白熊が海豹を狩猟する映像とか見たことがあるが・・・どうもこの世界の住人同士では当てはまらないようだ。

 ほとんどが獣八割の獣人、所謂服を着た二足歩行の獣って風情だが・・・ラビト君とはまた違った真っ白ウサミミの獣人も居る。

 こっちは人族とほぼ変わらない姿に、ウサミミとウサ尻尾が付いてる感じ。


 幾人もの獣人が仲良く談笑、魚を塩漬けにしたり、家畜の世話をしたり・・・あれが『平角鹿王キングカリブー』か!でかいな!

 子供たちも元気に走り回っている。

 内の一人がこちらに気付き、周りの衆に声をかけて手を振ってきた。

 ポーラがそれに大きく両手を振り返す。


 まだ距離がある、聞こえないとは思うが小声で打ち合わせ。


 「んだばセイ・・・おめさんらはあくまでもただの旅人で、船が難破して遭難・・・たまたま近くで猟ばしとったおいが保護したってことで良いだな?」


 「ああ、それで頼む。」


 おれたちの姿にも気付いているようだが、特に敵対的な反応は無いようで一安心。

 でも・・・ポーラの反応見てるからなぁ。

 さすがにアルカ様の名前出すの躊躇うわ。

 しかしポーラにはまだ懸念があるようで・・・。


 「だどもセイ・・・里長さとおさ・・・おいのじっさまにはちゃんと話すべ。『平角鹿王キングカリブー』のこともあるし、じっさまはおい以上に鋭い魔眼持ってるでな。」


 ここに来て新情報である。

 なぜもっと前に言ってくれないのか。


 「ポーラ・・・?里長さとおさの一族なのか?しかも魔眼って・・・。」


 問われた本人は頭をポリポリ、「あれ?言って無かったべか?」などと小首を傾げる。

 間違いなく初耳である。


 「んだー、おいはこの里の長の孫だべ。魔眼はおいの一族が代々受け継いでる物だでよ。じっさまはもっとはっきり魔力が見えてるらしいだ。」


 なら誤魔化さないで素直に話した方が良いかもな。

 しかし・・・獣人種ゆえに年齢がわからず、適当におっさん認定していたんだが、孫って言うくらいならもしかして若いんだろうか?

 別にどうでもいいことかもしれないが、ちょっと気になるな。


 「因みに・・・ポーラは幾つなんだ?」


 「ん?歳け?おいは今年17になるだ。」


 まさかの同い年、人は見かけによらない。

 

 里を歩きながら住人に挨拶。

 いかにも朴訥そうな住人たちは、いたって穏やかだった。

 ポーラに「おかえり。」と声をかけながら、おれたちにも優し気な視線を送ってくる。

 田舎って大抵排他的な感じがするけど、どうもこの里は違うらしい。

 まぁポーラという長の一族が「自分が保護した旅人。」って触れ回りながら歩いているせいなのかもしれないが。

 さすがに子供たちは少し警戒、家の陰なんかからじっとおれたちの様子を伺っている。

 やめろアフィナ!手をワキワキすんな!もふりたいのはわかるけども!


 程なくして里の中央、他の家屋より一回り大きなカマクラに到着。

 ポーラが「じっさま、今帰っただー!」と声をかけ、出入り口に掛かっていた獣の皮を捲って中へ。

 促されるままおれたちも続く。

 中に入れば実に暖かそうな室内、ポーラより一回り大きな白熊が暖炉の前に後ろ向きで座っていた。


 「おかえりポーラ、なんぞ外が騒がしかったような・・・。」


 そう言いながら振り向いた白熊は、頬に大きな刀傷、いかにも無骨を匂わせる風貌。

 しかし振り向いておれを認めた瞬間瞠目、瞬時にがくりと跪き平伏して叫ぶ。


 「おお!神よ!」


 ちょ!ま!




ここまでお読み頂きありがとうございます。

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