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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第三章 深海都市ヴェリオン編
162/266

・第百五十五話 『死(デス)』前編

お待たせしました!

やっとPCのネット接続が直ったorz

知らずに変なボタン押してたらしいです。

なにはともあれ、ヴェリオン編最終決戦開幕!


 フルネーム、そして通称を呼んだ時、はっきりとマドカはうろたえた。


 「なっ!なぜ?どこで・・・思い出した!?」


 これで確定、もはや間違いない。

 だがそれも今はどうでもいい。


 「いやっ!何かの間違い・・・そもそも認識阻害のマスクも・・・。」


 (なるほどね。)

 

 『略奪者プランダー』たちの奇怪な動物面、そんな効果があったのか。

 マドカに関してはドクロのそれだが、知人からの認識を避けるような力なのかもしれない。

 つまり仮面で顔を隠すのは、顔バレを防ぐってことよりも、おれたち幼馴染四人・・・もしかすると、まだ他にも居るかもしれない『地球』の転移者を懸念しているってことか。

 その目的はどうあれ、一定以上の効果はあったのだろう。

 事実おれも、名前を聞くまでは奴のことを忘れていた。

 間違った方向に突き抜けたオシャレとかじゃなかったんだな。 


 自身のドクロ面をペタペタと確かめ、まるで恐慌状態に陥ったかのように、落ち着き無く取り乱すマドカ。

 よっぽど仮面の効果に自信があったのか、それともおれに認識されることで取り乱すほど、後ろ暗い行いを重ねてきたのか。

 奴を冷たく見つめ、おれは再度言葉をかけた。


 「なぁマドカ、お前そのマスクの意味あんのか?元から骸骨顔だろ?」


 認識阻害の効果ならちゃんとある。

 だがその下に隠された素顔、痩せこけた骸骨顔を揶揄されマドカは、ビクリと肩を震わせた後、ゆっくりと顔を上げおれ見る。

 もちろんドクロの面はそのまま、表情は伺えない。

 それでも伝わってくる、なにかしらの観念と、明確な敵意。


 「・・・『悪魔デビル』・・・それがわかっていて・・・つまり、俺が『地球』の人間だとわかっていて、邪魔をするんだな?」


 マドカは墓石を擦り合わせるような陰鬱な声で、おれに問いかけてくる。

 その言葉に盟友ユニット以外、この世界の住人たちが一斉におれを仰ぎ見た。

 彼らにも意味がわかったんだろう。

 マドカの問いかけが示唆する事由。

 それはつまり、異世界への転移者・・・同郷の知人だったとしても、自分に弓引くのか?という意味合い。

 

 「当たり前だ。」


 一切の迷い無く即答で返せば、問いかけたマドカの方が絶句した。

 そして叫ぶ。


 「なぜだっ!?」


 思わず嘆息だ。

 ここまで来てそんな問答を交わすのか?

 

 (いや、あるいは・・・。)


 それだけじゃないのかもしれない。

 今でこそ大人しいが、あいつが乗ってるシャレコウベは異界の英雄、当然マドカの盟友ユニットだ。

 おれの懸念を絆的なもので敏感に感じ取り、イアネメリラが自然に肩に触れてくる。

 トントンと背中にハンドサイン。


 「何度も言わせるなよ。この世界の住人に、迷惑をかけるな。」


 幾度と無く繰り返した言葉。

 これこそがおれの偽らざる本音、ここに立っている・・・引いては『略奪者プランダー』に立ちはだかる意味だ。

 だがその言葉はきっと、奴には・・・マドカには聞きたくないことだったんだろう。


 「何がこの世界だぁ!俺は認めない・・・こんなのは現実じゃない!おれは今クエストをやってるんだ・・・邪魔するな!『悪魔デビル』!!」


 マドカは一瞬で激昂した。

 奴はこの世界のことをゲームだと言っていた。

 おれの認識では違う。

 この世界は現実で、ここに生きる人々も確かな一個の生命。

 しかしマドカにとって、それを認める訳にはいかないんだろう。


 ひとしきり叫んだ後、マドカは幽鬼のような瞳でおれを睨んだ。

 そして呟く。


 「・・・そうか。これがクエストか・・・。つまり俺のミッションは、貴様を・・・『悪魔デビル』を倒さないとクリアーできないんだな?」


 確認しているのではない。

 ただそう思い込もうとしている。

 その声音はとても正気の物とは思えず、元より陰気な声質が一層不安を駆り立てる。

 仲間たちも思わずブルリと身体を震わせ、数歩後退したのが感じられた。


 「お前・・・まだそんなこと言ってんのか?」


 「うるさい・・・黙れ!俺はお前を殺してでも、『地球』に帰る!」


 もうだめなんだろうか・・・だめなんだろうな。

 言葉が通じたことで、或いは同郷だったことで訪れたこの会話。

 だがお互いの道はずっと平行線、交わることはありえない。

 そもそもの話、マドカの正気すら疑わしい。

 おれは『魔導書グリモア』を展開した。



 ■



 おれが『魔導書グリモア』を開き、目の前に三枚のカードが浮かび上がるのと同時。

 マドカが乗っている髑髏が口を開けた。


 (やっぱりな!)


 それは確かな予感だった。

 奴は最初から平和的な話し合いなんて望んじゃいない。

 まして奴が乗っている盟友ユニットは、異界の英雄『餓蛇髑髏ハングリースカル』。

 『地球』で奴と対峙した時、決戦盟友ユニット・・・所謂『切りエース』として使っていた者だ。

 おれとの会話中、奴は自分の盟友ユニットに魔力を送り続け、それを開放するタイミングを見計らっていたんだ。


 髑髏の口内に、膨大な量の紫紺に揺らめく魔法文字が渦巻いている。

 一文字一文字が、まるで怨嗟の塊とも言うべき怖気走る気配。

 魔法文字が複数の円環を連ね、その中を潜り抜けるように魔力が集束していく。

 もうお分かりだろう?

 ビーム的な奴が来る!


 「メリラっ!」


 それが発射される直前、おれは叫ぶ。

 おれの懸念を汲み取り、万全の心構えで居てくれた美貌の堕天使。

 彼女が場違いなほど可愛らしく小首を傾げ、薄桃色の髪がふわりと揺れる。

 それはイアネメリラの代名詞とも言うべき特技スキルを発動させる所作だ。

 彼女が発動した『忘却』の効果で、マドカの操る髑髏の特技スキル『魔怨砲』の発動が遅延する。

 かき消すことは出来ない。

 相手も英雄級である以上、遅延効果は一瞬。

 だがその一瞬が何よりありがたい。

 おれは呆然とするアフィナを小脇に抱え、襲い来るであろう攻撃の射線から身を翻す。

 なんでお前はいつもトラブルの射線上に居るのか・・・?


 紫紺のビームがおれの居た場所を通り過ぎたのは、そのすぐ後だった。

 被害は皆無。

 シルキーは反対側に居たし、二人の人魚は水中に潜った。


 「忌々しい!イアネメリラか!」


 全く被害を受けていないこちらを確認し、マドカが憎々しげに吐き捨てる。

 そして浮いていた中空から、奇怪な頭骨ごと更に上昇し『魔導書グリモア』を展開。

 奴の前に浮かぶカードは三枚。

 条件は同じ・・・いや、仲間たちが居る分おれの方が多少有利か?


 その浮かぶ骸骨、眼窩に蠢く蛇が一斉に飛び出した。

 べちゃべちゃと石畳に落ちた蛇玉が、すぐにその身体を膨れ上がらせる。

 一匹の蛇は、瞬く間に蛇頭と人身を持つ魔物に変化した。

 

 それぞれが両手に長い鍵爪を構え、口から覗く牙にてらてらと光る緑の液体を滴らせる。

 しかしその瞳に蛇のような虹彩は認められず、どんよりと白濁した目がどこか遠くを見つめていた。

 そんなのが一気に30?40?瞬時には把握できない量、広間とは言えそれほど広いわけでも無い空間に現れた。

 そして蛇頭どもが一斉に、握った目でこちらを見る。

 抱えたアフィナが思わず、「ひっ!」と悲鳴を上げるのも責められない。

 

 少し距離を取る。

 

 「自分で動けるな?」

 

 腕の中、怯える少女に問いかける。

 さすがに人一人抱えたままではきつい。

 彼女はハッとした表情を作り、「うん!ごめんセイ。ボクだって足手まといはいや!」と言った。

 すでに十分足手まといなんだが・・・それは言わない約束なんだろう。

 とりあえずアフィナを降ろすと、そこからなし崩し的に戦闘が始まる。


 「セイ殿!これは!?」


 手近の蛇頭に襲い掛かられたオーゾルが、水球を使って相手を弾き飛ばしながらおれに問う。


 「異界の英雄『餓蛇髑髏ハングリースカル』とその眷属、『蛇頭スネークヘッド』だ。」


 おれは展開されたままの『魔導書グリモア』から一枚を選択。

 光るカードはおれの掌で具現化し、オニキスへと変化する。

 オニキスが砕け、そこから瞳型の紋章クレスト二つが浮かぶ。

 テキストの効果、ドロー1で手札は三枚に戻る。

 新たに引いてきたカードを見て一瞬不思議に、そして「もしかして・・・」の思いが募る。


 その思考を振り切り、一枚のカードをタップし召喚のことわりを唱えた。


 『砂漠の瞳の狂えし者、愚者たち全てを統べる者、我と共に!』


 金色の召喚光、箱から飛び出す青白ストライプの陽気なクラウン。


 「旦那!ご指名感謝しま~す♪」


 『愚者の王』カオス・・・おれの前で大袈裟なお辞儀をするその盟友ユニット

 雑魚の掃討にすこぶる強く、そしておれの貞操を狙う男の娘なピエロだ。


 「奴と親玉はおれとメリラでやる。他のメンバーは子分の処理だ。」


 おれの指示に各々了解の意思を返答し、それぞれの力で『蛇頭スネークヘッド』に攻撃を加え始めた。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

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