表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第三章 深海都市ヴェリオン編
151/266

・第百四十四話 『永続化(リフレイン)』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


※セイ視点です。


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、どうやらウララの方も色々あったらしいぞ?

 兄貴は未だ知る由も無いのだが・・・。

 それというのもあれだ。

 全部アイツ、マドカが悪い。

 『地球』でバトルしてた時からそうだったが、『デス』なんて大層な称号持ちのくせに、まぁネチネチネチネチとこすっからい。

 マドカのプレイスタイルは保険、これに尽きるな。

 使役する盟友ユニットには必ず、何がしかの保険がかけてある。

 『魔力暴走』で自分の『魔眼デスゲイズ』を爆破した時にも思ったが、アイツにとって盟友ユニットは友じゃない。

 あくまでも駒・・・そんな感情が透けて見える。

 盟友ユニットを共に歩む者と見るおれのスタイルとは、決して相容れる事は無いだろう。

 そうだよ・・・『地球』で偽善者って言葉をプレゼントしてくれたのはアイツだった。

 陰険なのはその顔だけで十分だろ?

 いや、待てよ・・・むしろそのこすっからさが、『デス』って称号になったのか?



 ■



 イアネメリラに「ますたぁ、三時間経ったよ?」と優しく肩を揺り起こされる。

 霞む頭、ぼやけた視界で状況を確認。

 毒状態は何とか治まったと言えるだろう。


 おれたちが『妨害チャフ』の効果によって、行動と情報を制限されてから、約三時間が経過していた。

 今はめいめいで休憩中だったりする。

 それぞれ消耗しているからな・・・。

 特にアフィナとシルキーはかなりお疲れだ。

 おれが『図書館ライブラリ』から出した毛布に身を包み、座り込んでじっとしている。

 かく言うおれも、さっきまでは横になっていたんだが・・・。

 バイアやヴィリス、おっさん二人が周辺警戒を買ってでてくれたおかげだ。


 おれが起きた事で状況が動くと感じ取ったのか、バイアとローレンが合流する。

 体調を気にする二人に、片手を上げ問題ないことを伝えておく。

 ヴィリスとオーゾルは、引き続き周辺警戒に当たるようだ。

 『聖水竜帝アクエリアスドラゴンロード』の背に座る竜兵が、銀板ドラゴンホットラインを操作しては首を振り、神殿を往復するアリアムエイダが肩を落し深いため息を吐く。

 

 (だめか・・・。)


 未だドラゴンホットラインは元より、神殿の結界装置、転移門も復旧していない。

 本来の魔法効果ならば約三時間、それが効果終了、一つの目安。

 もちろん中には『制約』のような長時間効果を発する物もあるが、幸いにして『妨害チャフ』はそれには該当しない・・・はずだった。


 「アニキ、言いたくは無いけど・・・さすがはマドカだよ。」


 苦々しく呟く竜兵におれも、「そうだな・・・。」と相槌を打つ。

 一度発動した魔法効果が時間通り消えない理由に、おれたちは簡単に思い当たる。

 お互い理解していることを、確認のためあえて口に出す。


 「『永続化リフレイン』がかかってるんだろうな。」


 それしか考えられない。

 おれと竜兵は揃って肺の中の息を吐き出した。


 『永続化リフレイン』・・・その名の通り、時間制限のある効果を永久化する魔法。

 おそらくは『妨害チャフ』の効果発生をトリガーとして、事前に仕込んであった物。

 所謂、盟友ユニットの破壊を起点とした三連コンボなのだろう。

 おれたちはそいつに、まんまと引っかかった訳だ。

 余りにも用意周到、そのウザったさにある種感嘆する。


 それはともかく。

 竜兵がおれを見つめ、「どうする?」と目で訴えかけてきた。 


 「ここで立ち止まる訳にもいかないからな・・・動くしか無いだろう。」

 

 「だよね・・・。」


 答える竜兵もわかってはいるのだろう。

 この国に、マドカがちょっかいをかけているのは間違いない。

 もしかするとホナミも?

 リーンドル以来彼女の目撃情報は無いが・・・いや、「タウンハンター」氏と行動を共にしている可能性はあるんだったな。

 もうあのバカ(秋広)は再会時、必ず正座させると決めた。


 それもともかく。

 相変わらず目的が不透明なんだが、今はそれを解明する手立ても無し。

 しかしろくでもない考えだろう事は容易に想像できるし、『回帰』のパーツ回収の件もある。

 結局おれたちの行動に、選択肢など無いのだ。


 それは決定事項、しかし当然ながら問題がある。


 「結界がまともに動いてないんだもんなぁ。こうなると・・・ヴェリオンの救援のために、何をしたら良いのか・・・国自体にはすでにマドカが入ってるっぽいし・・・急ぎたいんだけど転移門も動かないし・・・うぅ~ん、いやらしいなぁ・・・。」


 問題を再確認するように、竜兵が言葉を紡ぐ。 

 まったくもって同意見だな。


 (せめて『妨害チャフ』を解除できれば・・・でも、待てよ?)

 

 『地球』の知識、思い当たる一つの可能性。

 本来なら時間制限で消える魔法効果を、永続化させた時の現象。


 「竜兵・・・『永続化リフレイン』なら、どっかに魔方陣があるんじゃないか?」


 「あ!・・・アニキ!魔方陣を壊せば・・・。」


 一度発生した魔法効果は、その効果が消えるまでなんらかのエフェクトを生じる場合がある。

 強化魔法だったら魔法文字の円環であったり、『魔王の左腕』のような手甲・・・装甲のような物もあった。

 一概に全ての魔法に当てはまる訳でもないのだが・・・『永続化リフレイン』の場合、赤い魔方陣になって現れるはずだった。

 当然その魔方陣を破壊すれば効果を消せるため、トラップ魔法の使用者が隠蔽するのが常だ。



 ■



 「だけど・・・当然隠されてるだろうな。」


 「・・・だよね。」

 

 敵も味方も考える事は同じ。

 ゴールの見えない話に、おれと竜兵は改めてうんざりする。

 それまでおれたちの話を黙って聞いていたローレンが、なまず髭を弄りながら口を開いた。 

 

 「セイ君、竜兵君、その魔方陣と言うのはどんな物なんだね?」


 「ん?・・・ああ、直径1mくらいの赤い魔方陣だな。」


 おれの返答に「ふむ。」と頷いたローレンは、おもむろに口に指を咥えると・・・指笛を鳴らそうとしたように見えた。

 しかしその指笛は音を発しない。

 何を始めたのかわからないおれたちが、彼をただじっと見つめていると・・・。

 ローレンは何度か頷いた後、「見つけたぞ?」と言い放った。


 「「は?」」


 おれと竜兵の驚きの声が、見事なほどハモる。

 

 「いや、だから、見つけたぞ?」


 改めて言い直すローレン。

 再度告げられた言葉が頭に伝わって来ても、おれたちはポカーンのままだ。

 バイアやアリアムエイダ、イアネメリラはおれたちとローレンの顔を、何度も見比べ首を捻る。

 確かにこの世界の住人にはわからないかもしれないな。

 ただ・・・竜兵もおれと同じ気持ちだろう、どうにも意味がわからない。

 二人の共通認識として出てくるイメージはこうだ。


 (あのマドカが隠蔽した魔方陣をそんな簡単に?)

 

 おれたちの動揺をよそにローレンは、「やれやれ、その顔は信じていないな?」などと呟きながら「お手上げ」のポーズ。

 そしてこれ見よがしに茶髪天パをふぁさ!と、かき上げる。

 

 「私は貴族だからな!」


 いや、意味がわからん。

 自信満々なローレンに対し竜兵が、「マジか!貴族すげー!」と目をキラキラさせる。

 待て竜兵、それは罠だ!

 ローレンはニヤリと笑い、そのからくりを解説した。

 

 「まぁそれは冗談として・・・私は一度話さなかったかな?海洋生物と会話ができると。」


 「「・・・あ!」」


 またしてもハモるおれと竜兵。

 

 「海の同胞はらからが教えてくれたよ。この『アリポスの谷』の外、『港町カスロ』方面にその魔方陣が存在するとね。」


 (それは朗報だ・・・しかし、逆方向か。)


 「おっちゃん、それはどのくらい離れてるの?」

 

 竜兵も同じ事を考えている。

 このパターンは、経験上余りよろしくない。

 ローレンはまたも鳴らない指笛を使用、ふんふんと何度か頷く。 


 「ふむ・・・それなりの速度で進んでも・・・約一日はかかるだろうとの事だ。」


 (遠いな・・・。)


 現状その一日がもったいない。

 一日遅れれば、状況が悪化することはあっても好転することは無いだろう。

 なおも何かを聞いていたようなローレンが、さっと眉を顰めた。


 「それに・・・当然なんだろうな。守護する魔物が召喚されているようだ。同胞はらからが一人死んだよ・・・。」


 ちゃんと防人も残しているらしい。

 竜兵はおれへ向き直り、「アニキ!」と一言、いつもの眼差しを向ける。

 言いたいことはわかる。

 アイコンタクト、言葉が要らないほどの時間を共に過ごした弟分。

 その気持ちを汲んで、おれはあえて言葉に変える。


 「わかった。竜兵は『永続化リフレイン』の破壊を頼む。おれは、ヴェリオンに乗り込む。」


 竜兵はしっかりと頷いた。


 

 ■



 二手に別れないといけないおれたちは、メンバーの組み合わせを考える。

 そうは言ってもお互いの盟友ユニットははずせない。

 要はローレンとオーゾル、それにアフィナとシルキーの四人。

 この世界の住人たちをどうするのかだ。

  

 アフィナとシルキーは毛布に包まったまま、じっとおれのことを見つめている。

 その瞳は「絶対付いていく!」と雄弁に語っていた。


 (まぁ仕方ないな・・・。)


 その答えは予想道りだ。


 ローレンは、「竜兵君の方は正確な方向把握が必要だろう。私が行くよ。」と言う。

 それに同意なおれのメンバーには、自然とオーゾルが収まる事になった。


 方針が決まった所でアリアムエイダが声をかけてくる。

 

 「妾もお竜ちゃんに同行したいのじゃが・・・。結界がのぅ・・・。」


 そう、アリアムエイダは神殿の結界装置が沈黙してから、自身の『特技スキル』によって別種の結界を維持していた。

 カスロの船を反転させていた類のアレだ。

 ゆえに竜兵に同行はできない。と、思ったのだが・・・。

  

 「ルルゥオン!」


 突如岩の塊が唸り声を上げた。

 おれたちを守るように大人しく鎮座していた『大王海亀キングアダマンタス』。

 その巨体が沈黙を破る。


 「「なるほど・・・。」」


 言葉がわかるのだろう、ローレンとアリアムエイダが異口同音だ。

 二人を見つめるおれたちに、アリアムエイダが説明した。


 「この子が妾の結界を一部補助すると言うておる。さすがに妾本体は動けぬが、分体・・・そうさのぅ、三割程の力であれば同行できそうじゃ。」

 

 それは心強いかもしれない。

 竜兵もその鳶色の瞳を輝かせる。

 そんな竜兵に、バイアが思案顔で声をかけた。


 「お竜ちゃん、エイダのカードは持っておらんのか?」


 「ん?エイダ姉・・・あるよ?」


 極度のドラゴンスキー。

 そんな彼が、アリアムエイダなんてビッグネームを漏らす訳が無い。

 竜兵が『魔導書グリモア』の控え(サイド)から、『海龍』アリアムエイダのカードを出した。


 「これは・・・!」


 目を見開いたアリアムエイダが、そのカードに触れる。

 盟友ユニットを召喚するときの光、金色の輝きがアリアムエイダとカードを繋ぐ。

 全員がその光景に釘付けになる。


 「な、何が・・・!?」


 誰が発っしたかはわからない呟き。

 ほぅっと息を漏らしたアリアムエイダが静かに答えた。


 「なぜかわからぬが、妾の分体がカードに吸い込まれおった・・・。ただ何となくそうしなければいけない、それが正しいと思えたのじゃ・・・。」


 このカード、『リ・アルカナ』ってのは・・・一体何なんだ?

 




ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ