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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第三章 深海都市ヴェリオン編
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・第百二十六話 『魔海の口(ガレオンイーター)』前編

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^



 異世界からこんばんは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、急展開だ。

 兄貴も当然、この町になんらかの動きはあるだろうと思っていた。

 それが『海龍』アリアムエイダのことだけならまだ良かったんだが・・・。

 ドクロ面の『略奪者プランダー』は、『デス』のマドカと見て間違いないだろう。

 思わずアイツの不健康そうな面を思い出したよ。

 お前、仮面被らなくてもドクロ顔だったよな?

 何を考えて『略奪者プランダー』なんてやってんのか知らないが、船を壊す・・・か。

 これから『深海都市ヴェリオン』・・・海中に作られたそこへ向わなきゃ行けないのに、勝手な都合で足を壊されると困るんだ。

 『地球』じゃ一応顔見知りだったがな・・・おれの前に立ち塞がるなら、お前は敵だ。

 いや、それも今更だな。

 向こうはとっくにその気だったはず。

 『悪魔デビル』を怒らせた輩の末路、知らないとは言わせないぜ?



 ■



 (マドカ・・・船を壊す・・・。)


 情報を反芻。

 その言葉が浸透してくるにつれ、嫌な予感が背筋を駆け巡る。

 今のおれは、相当焦った顔をしている自覚があった。

 おそらくは竜兵も同じ。

 そんなおれたちの様子を、他の面々が心配そうに伺う。


 「お竜ちゃん、兄者君?一体どうしたと言うんじゃ?」


 バイアが代表して声をかけてくる。

 いかに『略奪者プランダー』絡みとは言え、おれや竜兵がこれほど反応するとは思わなかったんだろう。

 それは予感。

 心当たりが有り過ぎる。

 マドカの常用していた一枚の盟友ユニットカード。

 今現在、その制約・・・条件が整いすぎていた。


 「あ、ああ。バイアちょっと待ってくれ。ピモ、マドカって呼ばれた奴は船を壊すって言った後、何をした?」


 おれはバイアを始め、他のメンバーにも目線でお願い、ピモから情報を確認する。

 

 「んー?なんか海に向けて、カードを三枚使ってた。それでなんかブツブツ言ってたよ。」


 ほぼ確信に近い悪寒。

 カードを三枚・・・おそらく二枚は紋章クレスト用のコスト。

 そしてブツブツってのは当然、召喚のこたわりだろう。

 おれはピモに、「そのブツブツ聞こえたか?」と再度尋ねる。

 銀板の向こう側、ピモは「え?んーと、んーっと・・・そうだ!」と少し逡巡した後、何かを思い出す。


 「んっとね・・・『混沌の海の捕食者、なんとかかんとか・・・我と共に!』だったかな?」


 「ピモ、なんとかかんとかの所は・・・『駆者を捕らえすり潰す者』じゃなかった?」


 竜兵があやふやな部分を補足すると、「それそれー!」と興奮した返事が返ってくる。


 (やっぱりか。)


 おれと竜兵は、顔を見合わせ頷き合う。

 いや、心底嫌な予感はしてたんだ。

 できればキノセイであって欲しかった。


 「間違い無い。『魔海のガレオンイーター』呼びやがった!」


 『魔海のガレオンイーター』・・・またしても異界の英雄級盟友ユニットだ。

 水中にしか召喚できず、見た目は海中から突如現れる巨石群。

 しかしその実態は、水と異界、そして口が融合した魔法生物。

 巨石にしか見えないそれは・・・奴の口から覗く乱杭歯だ。

 

 「アニキ・・・おいら、最悪だ・・・。」


 「そうだな・・・。」


 竜兵がすっかり項垂れて、小さく呟く。

 おれもそれに賛同、気持ちは大いにわかる。

 ある意味これは、おれにも竜兵にも効果抜群、メタとも言えた。


 『魔海のガレオンイーター』の能力アビリティは『物理無効』と『騎乗殺し』・・・。

 『物理無効』は読んで字の通り、おれの格闘は元より、竜兵の大剣による斬撃も当然無効。

 そりゃそうだ・・・相手は水そのものみたいなもんだからな。


 そして『騎乗殺し』・・・その効果は単純明快。

 おれの盟友ユニットである、『反乱者』アリアンの能力アビリティ『帝国殺し』が帝国兵を即死させていたのと同様、『騎乗』を持つ盟友ユニットや『謎の道具ミステリア・グッズ』なんかを一撃で死亡、又は破壊する能力アビリティ

 つまりドラゴンの背に乗って戦う竜兵、そのスタイルを根本から否定するような相手だ。


 更に言えば・・・船って乗る物だよな?

 おれたちがぐったりするのもわかってもらえるはずだ。


 「『魔海のガレオンイーター』だと・・・!?」

 

 どうやらローレンはその名を知っていたらしい。

 いや、オーゾルもか・・・明らかに顔色が悪くなっている。


 「ピモ!それでそのドクロ面はどこへ行ったの?」


 竜兵がマドカの動向を確認。

 しかしそれに返って来るのは、「んー?わかんない!しばらくしたら、とんでっちゃった。」と言う言葉だった。

 

 (最悪だ。)


 倒すのが難い敵、なら召喚者を狙えば?との目論見は簡単に瓦解する。

 ローレンとオーゾルもおれや竜兵同様、一瞬で最悪な状況を把握した。


 そして・・・倉庫の外から破砕音が響く。



 ■



 「ア、アニキ!」


 「くそっ!始まったか!」


 情報の整理をしている間に、どうやら大元が動き出してしまったらしい。

 こうなったら仕方ない。

 いつも通り、おれが何とかするしかないだろう。


 「メリラ、行くぞ!竜兵はおれたちが使う予定だった船を回収してくれ。アフィナとシルキーはそっちだ。バイアも海には近付くな。パモとピモは何とか合流しろ。ローレンかオーゾル、どっちでも良い。案内を頼む!」


 おれの指示に各々「了解!」「わかった!」「私が行こう。」などと返答が返って来る中、当然不満の声を上げる者たちも居る。


 「セイ!ボクもそっちに行く!」


 「セイさん、私も・・・。」

 

 悲痛な表情でおれを見つめるアフィナとシルキー。

 戦闘には出さないと言われたバイアも少し不満そうだ。

 問答している時間は無いんだがな。

 理由を言わないと納得しないんだろ?


 「アフィナは風と火、そして木属性。今回の敵、海水の塊とは相性が悪すぎる。シルキーは雷があるが、『騎乗』持ちだから論外。バイアも同じ理由だ!」


 おれは少々荒っぽくだが、うむを言わせぬ勢いで理由を語る。

 普段とは違う緊迫した反応に、アフィナも思わず黙って頷く。

 「『騎乗』があるとダメなの?」と聞くシルキーの手を竜兵が引き、「それはおいらが説明するから。」とバイアを促す。


 「オーゾル!竜兵君たちの方を頼むぞ!」


 「ハッ!ローレン様お気を付けて!こちらはこのオーゾルにお任せを!さぁみなさん、セイ殿たちとは違う抜け道から出ますぞ!」


 気合も新たなおっさんたちのやり取りを背中に、おれは部屋の隠し扉を開け放ち、イアネメリラと揃って倉庫の外へ飛び出した。


 外に出た瞬間にわかる。

 この町に来てから、今までそれほど感じられなかったむわっとした湿気。

 港に揚げてあった船を、念のため『カード化』して『図書館ライブラリ』に回収する。

 都合三隻・・・手配してあった船よりは恐らく粗悪品。

 それに回収した船が潜水できるかもわからないが、本当の最悪は免れた。

 あとは竜兵次第。


 港に面した海面から空高く噴き上がる、幾本もの水柱。

 水柱によって粉々に粉砕された船だった物の残骸が、水面に叩きつけられゆっくりと海中へ引きずり込まれていく。

 海中から突如突き出た円柱のような巨石・・・奴の歯だ。

 圧倒的異様、それが遠めにもはっきり見えた。

  

 「これは・・・。」


 おれに続いて倉庫から出てきたローレンが絶句する。

 向こうはまだおれたちを敵とは認識していない。

 それよりも今は、破壊した船の残骸を貪ることに手一杯のように見える。

 全くもって食いしん坊な奴だ。


 (さぁて・・・どうしたもんかね。)


 「ますたぁ・・・。」


 イアネメリラはおれの後方で浮かび、その柳眉な眉根を寄せている。


 「セイ君、アレはマズいぞ・・・。君の実力を疑うわけではないが、『魔海のガレオンイーター』とは異界の邪神が侵略してきた折、その口で何十隻ものガレオン船を飲み込んだと言われる怪異。我が祖国でも最早伝説、生きた天災とでも呼称される存在だ。」


 説明ありがとう。

 カードゲーム時代の『リ・アルカナ』、そのカードテキストに書いてあった通りの内容だ。

 確かに海そのものとも言える存在感。

 おれたちなんて木っ端に等しいだろう。

 まぁそれでもやるしかねーんだけどな。


 「魔導書グリモア


 おれの目の前にA4のコピー用紙サイズ、六枚のカードが浮かび上がった。

 半端な攻撃・・・まして物理攻撃がまったく通用しないのはわかっている。

 かと言っておれの盟友ユニットたち、魔法使いに属するやつ等も火属性や闇属性に偏りすぎていて、邪神の眷属であり当然闇属性、尚且つ海水そのものと言った体の『魔海のガレオンイーター』に対し、決して相性が良いとは言えない。

 せめてロカさんが居れば『水支配』は有効かもしれない。


 そんなことを考えつつ手札を確認する。

 何を引いているかと思ったが・・・なるほどな。

 

 「とりあえず・・・一方的に蹂躙されるって事にはならなそうだぜ?」


 おれはイアネメリラとローレンに、ニヤリと笑いかけた。






ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


※纏まりきらなかったでゴワス。

前後編予定です。

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