・第百二十四話 『事情』
いつもお読み頂きありがとうございます。
ブクマ励みになります^^
※いやー、文章書いてる時、小まめに保存しとかないとだめですよねー。
ええ、昨日のことです。
TV、PC、エアコン使用中・・・余りにもお腹の空いた作者は冷食の焼きおにぎりを電子レンジにinした訳ですよ。
まさか3000文字以上書きかけた今話が「タハー」になるとは・・・。
異世界からこんばんは。
おれは九条聖、通称『悪魔』のセイだ。
美祈、これは想定外だった。
兄貴はてっきり、航海中に動きがあるものだと思っていたよ。
そうきたかー・・・。
それがおれの正直な感想。
戦うのがいやなら、いっそ最初から会敵しない。
今までの『略奪者』たちの行動から、そのパターンを想定しなかったおれのミスだ。
一応現在は原因不明となっているらしいが・・・。
もしかしたら・・・万に一つ・・・奴らのせいじゃないのかもしれない?
いや、それはありえないだろう。
いくら贔屓目に考えてもタイミングが良すぎる。
ん?ローレン、『略奪者』じゃないかもしれない?
どういうことだ・・・?
■
おれたちは促されるまま倉庫内の隠し部屋、備え付けられた大型のソファーに腰掛ける。
人数的に足りない分のイスは、『図書館』から取り出した物を『カード化』解除していきわたらせた。
腰に下げた金箱から甘ったるい声。
「ますたぁ~?出ても平気~?」の問いに「良いぞ。」と返す。
なぜかすぐには出てこないイアネメリラ。
箱の中がざわついているような気がする・・・。
「ちょっ!しつこい~!エデュッサもカオスも後で覚えてなさいよ~!」
うん、コレ触れない方が良さそうだ。
やっと出てきたイアネメリラの姿を一目見て絶句する。
彼女、普段から中東の踊り子さん並みに露出の多い衣装なんだが・・・それはちょっとはだけすぎだろう。
綺麗な薄桃色、ウェーブがかった長い髪も、なんだかすごく乱れている。
普段は色っぽいお姉さんなんだが、今回はそれと違ったなんともあられもない姿。
紳士な竜兵は慌てて目を逸らし、変態紳士なおっさん二人はガン見・・・。
おれは着ていたローブを脱ぎ、その姿を隠した。
「一体何が・・・。」
「うぅ~!エデュッサとカオスが、私だけますたぁに呼ばれるのがズルいって、二人がかりで~!」
うへー、叫び声の内容から何となく察してはいたが、なにその変態コンビ。
おれは絶対関わりたくない。
ゆえに丸投げすることを決めた。
「メリラ、リザイアに言いつけろ。」
「うん!今度からそうする!」
顔を真っ赤にちょっと涙目で衣装を整えるイアネメリラが、決意を胸にしっかりと頷いた。
おれたちが落ち着くのを待ち、ローレンは再度告げる。
「この町全ての船が、現在航行不能。」だと・・・。
おれはその言葉を聞き、頭の中で反芻する。
ローレンの言ったこと・・・漠然としたイメージではわかる。
おそらくまた、不幸と踊っちまってるだろうこと。
「一体、何が起きてるんだ?」
しかし、航行不能・・・それだけでは意味がわからない。
言われてみれば確かに、さっと見ただけだがこの倉庫街に面した港も、やけに停泊中の船が多かった気はする。
けれどそれは、時間帯とか時期的なことだと勝手に予測していた。
だが、ローレンの口ぶりからすると、一切の船が出港していないことになる。
おれの疑問にローレンは、「まずこの町についてからの、我々の現状を聞いてくれ。」と前置きした。
おれたちの表情をゆっくりと見回し、その意思を確認したのだろう。
ローレンは静かに語り始める。
合わせてオーゾルが、いつのまにかお茶の用意を始めていた。
「まず、我々がこの町に着いたのは一日半前。そこから情報収集、我が国『深海都市ヴェリオン』へ情報の伝達をしようとしたが、全くうまくいっていない。」
まぁこいつらが如何に手練の諜報員であったとしても、一日半で情報を網羅できるわけも無い。
それはある種仕方ないものだが、本国と音信不通ってのはなんともまた。
「大きな原因は二つ。一つ目は、この町にもすでに話に聞く『略奪者』の手の者と思われる存在を確認していること。幸い竜兵君の作った『謎の道具』が機能したためなのか、我々が先に気付いたようで事無きを得たが・・・おかげで行動を制限されてしまった。そして二つ目は、ヴェリオンを含む他国に至る海路が機能していないこと。これにはどうも『アリポスの谷』に住むと言われる、『海龍』アリアムエイダの動向が関わっているようなのだが、詳しいことはいまいち要領を得ていないと言える。」
ふーむ、正直状況はよろしくないな。
むしろ悪化しているのか・・・。
『略奪者』の手の者ってのがどんなのかはわからないが、もう一つの問題。
『海龍』アリアムエイダには覚えがある。
『水平線を守りし者』、基本住居である『アリポスの谷』最深部にある神殿に棲み、海洋の平和を見守り、船乗り達の守り神と言われる存在。
竜兵の盟友である『龍樹』マヤと対になる、体長は100m以上の海蛇型、所謂サーペント系のドラゴン族だ。
話の行きがかり上、竜兵とバイアに視線を向ける。
「アニキ、アリアムエイダはVRに反応しなかったよ。」
「うむ。あやつとわしが最後に会ったのは10年ほど前じゃが、その時も確かに健在じゃったのぅ。」
確かにカードゲーム時代、竜兵が使っているのを見たことはあるが、VRが実装されてからは見ていない。
「アリアムエイダは、『略奪者』に使役されていると思うか?」
おれは浮かべた疑問を彼らにぶつけてみる。
竜兵、バイアは難しい顔で「ウーン。」と首を捻るが、ローレンは「それは無いだろう。」ときっぱり言い切った。
各々の視線を集めたローレンは、その考えを語る。
「要領を得ていない。と言っておきながら、使役されている訳ではないだろうと言うのも、いくつか理由があってだな。船が航行できないのは、ヴェリオンを含む他国との航路。その実『アリポスの谷』を通るルートだけなのだが、そこ以外・・・つまり内海なんかで漁を行うくらいなら問題ないらしいのだ。それに『アリポスの谷』が航行不能と言って別に、攻撃を受け船が沈められたりといった被害を被ったたわけではなく、そこまで行くとやんわりと逆方向に舳先を変更され、どうやっても帰港させられてしまうらしいのだ。この町、特に漁師や船乗りはアリアムエイダを信奉する者が多いゆえ、これはきっと、守り神の思し召しだから船を出すな。と言うことになってしまったそうだ。」
なるほど、つまり今のところ敵意は感じられないってことか。
だがそれだけじゃ、『略奪者』が関与していない理由には少し弱い気がする。
あいつらのやり方から、遠回りな何かを画策している可能性を否定はできない。
おれたちの納得半分と言った反応に、ローレンはその核心を話す。
「実は・・・私はある程度の海洋生物と意思を通わせることができるのだが、今回アリアムエイダに向けて発した『念話』に返答があった。彼女はこう言っていた。「こちらは危険、大変な事が起きている。妾の念を感じ取れる者よ。そなたが何者かはわからぬが、願わくば『竜の都』に住む『古龍』バイア様に救援を求めて欲しい・・・。」とな。それだけ言った後、アリアムエイダとは交信できなくなった。」
■
「なんと・・・。」
思わず絶句するバイア。
「海洋生物・・・例えそれがドラゴン族であろうと、意思の疎通ができるローレン様。それと人化したバイア様が、すでに出会われていた偶然。このオーゾル、運命と言う言葉を痛感しましたぞ。」
オーゾルが感慨深気に呟く。
確かに・・・一見すればそうだろう。
だが出来すぎているような気がしないでもない。
いや、これは考えすぎだろうか?
直接攻撃するでもなく、危険な海域に進もうとしている者を守っているように見える。
ローレンとの会話に出てきた、アリアムエイダと思わしき存在。
そこには明確な意思が感じられるように思う。
『略奪者』に使役されている者は、自我を失ったようになる・・・。
今まではそう信じて来たが、ホナミの使役していたアリュセには意思を感じられたと言う。
頭の中で情報が錯綜していた。
(竜兵はどう考えているんだろうか?)
そう思い弟分を伺い見ると、そこには両の拳を握り締め、決然とした表情の少年が居た。
「アニキ!おいら、アリアムエイダを助けたい!」
すでに心の決まっている竜兵。
逆にその隣、バイアは目を閉じ髭を撫でている。
たぶんその姿勢は、「おれと竜兵の判断に任せる。」・・・そういうことだろう。
「・・・そうか。」
もう一度情報を確認する。
『略奪者』は『竜の都』を滅ぼしている。
尚且つ、バイアがすでに竜兵の盟友になっていることも知っているだろう。
逆にこの世界の住人、アリアムエイダはそのことはしらないはずだ。
それなら、『竜の都』に居るはずのバイアに救いを求めたところで、なんら不思議は無い。
おれがそう考えることさえもやつらの誘導だとしたら、それは最早どうしようも無いことだ。
いつも通り、殴って解決するしかない。
おれも決断した。
「よし。・・・『海龍』アリアムエイダを助けよう。」
「さすがアニキー!」
竜兵の顔がパーッと輝く。
話が決まった所で、アフィナが遠慮がちに声をかけてきた。
「ねね・・・セイ、竜君?秋広さん?の事は良いの?」
・・・・・・。
忘れてませんよ?
「うん、あきやんも一緒に探すよ!」
おっと・・・竜兵はガチで忘れていなかった。
いや、おれも忘れてないよ、ホント。
少々遠い目をしかけたおれの目に、木箱の陰に潜む何者かの姿が入ってくる。
「・・・誰だ。」
押し殺した声に、その(小さな)何者かはビクリと身体を強張らせた。
「タハー!サプライズしっぱーい!」
諦めて木箱の陰から出てくる羽根妖精一人、一匹?。
クリフォードの側近、羽根妖精コンビ、パモピモのどっちかだ。
見分けは付かない。
「パモだよー!あと、人単位ででよろー!」
おい、心を読むな。
ローレンが頬をポリポリと掻きながら切り出した。
「セイ君たちの探している同胞については、彼・・・パモ君に話してもらったほうが良いだろう。いや、私もびっくりしたんだよ。気付いたらいつのまにか私の肩に停まっていてね・・・。なんでも、竜兵君の作った『謎の道具』の魔力を感知して接触してきたんだとか。」
なんか竜兵の作るオーパーツが、ドンドンやばいことになってきてないか?
まぁそれを感知して、竜兵と繋げる羽根妖精も大概な気はするが。
「事情を説明したところ、ピモ君が我々の見つけた『略奪者』の手の者に張り付いてくれているんだ。それでパモ君はここで皆が来るのを待っていたんだが・・・。」
あら便利。
ローレンも他国の王様の側近をうまいこと使ってるな。
それはともかく。
なるほど・・・おれたちが来るのを、(隠れて)待ってたんだな。
「うん、サプライズー!」
満面の笑みを浮かべるパモにデコピンを食らわせる。
「ひどいよセイー!」と言って、ブンブン腕を振り回し突進してくる彼を掴み話を聞く。
「それで・・・「タウンハンター」秋広君はどうなった?」
「タウンハンター四人になったー!眼鏡のノッポ、狐の女、大剣背負ったお祖父ちゃん、真っ赤な髪のイッケメーン!」
「・・・はい?」
四人?狐の女はホナミ?
更に大剣の爺さんと、赤髪のイケメンを参入させたのか?
だめだ、思考が追いつかない。
フリーズしたおれの代わりに、竜兵が更に尋ねる。
「パモ?タウンハンターはどこに居るの?」
「うん、タウンハンターもうこの町に居なーい!二日前に『氷の大陸メスティア』に行ったー!」
はいー?
『氷の大陸』メスティアって・・・戻ってるよね?
おれと竜兵は顔を見合わせる。
「「秋広何してんのっ!?」」
二人の声が見事にハモった。
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