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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第三章 深海都市ヴェリオン編
128/266

・第百二十一話 『守りの指輪』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


※日頃のご愛顧に感謝して、活動報告の方へSSを載せます。

ぜひ覗いてやってください。


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、君はホナミのことを覚えているだろうか?

 兄貴とも仲良くしていた彼女に、一体何があったのか。

 ドクロ面の地球に帰りたい発言も気にはなっているが、それよりも引っかかるのはホナミの行動だ。

 今考えられるのは彼女が狐面の女として、この世界に対し弓引くようなことをしているのだろうと言う、状況証拠でしかない予想だけ。

 それもまだ本当にその顔を見て確かめた訳じゃない。

 ただ竜兵がそう感じたと言っただけ・・・。

 まぁおれの中でもすでに確信に近いんだが。

 ホナミが狐の女だったとして・・・秋広は今どうしているんだろうか?

 『港町カスロ』に居るはずのパモピモから続報はまだない。

 そして彼女の使役していた盟友ユニットには、確かな意思が感じられたと言う情報。

 もしかしてホナミは『略奪者プランダー』ではない?

 いや・・・楽観的思考はやめよう。



 ■


 

 ある意味ラッキーだった。

 おれの運もまだ多少は残っているんだろうか?

 大きく見咎められるでもなく、早々に宿屋に引き上げた。

 この宿屋に泊まれたことは不幸中の幸い、本当に僥倖だったんだろう。


 『反転リバース』の効果で異界化した町。

 そしてそれを開放したおれたち。

 しかし町の連中はそのことに余り気付いていなかった。

 もちろん何人か、この宿の女将さんなんかもそうだが・・・気付いた人は居たらしい。

 けれどほとんどの人間が今回の事変に対し、明確な解答を持ちえていなかったのが幸いした。

 それにある程度の力を持たない人間は、最初に鳴った三連続の鐘で深い眠りについていたとか。

 当然朝方の町は混乱していたし、ローブで隠した竜兵はともかく、バイアの存在を見止めてしまった者たちも僅かながら存在していて・・・。

 幾人かの町人には絡まれるような、振り切るような感じになってしまったし、未だ気絶中のアフィナとシルキーに気付かれたらどうしようと、内心ドキドキしながらの逃避行だった。

 素性を隠しておきたいのは事実。

 バレているなら仕方ないとも思ったが、これくらいの混乱ならあえて目立つ必要も無い。


 そんなこんなで幾人かの町人を連れたまま、宿に戻るはめになったんだが・・・。

 結局この宿、『朝日亭』の女将さんが「うちのお客様になにか?」ってな感じで、事情を知りたがった住人たちを追い返してくれたおかげで、事無きを得ることが出来た。

 なんでも女将さん、この町ではかなりの発言力を持ってるらしい。

 それにあの時住人たちに向けられた、顔は笑ってるのに冷たい目線。

 明確な凄みを感じたぞ?

 あれは歴戦の勇士だ、女将さんを怒らせちゃいけない。

 自称貴族の変態紳士二人(実際ヴェリオンの貴族なんだが)には、きつくきつく言い含めた。


 おれたちは出発予定を少し遅らせ、昼頃までの滞在を女将さんにお願いした。

 それを快く応じてくれた女将さん。


 「今朝は色々大変でしたしね・・・。」


 そう言って微笑む女将さんは、なんだか全てお見通しって感じだった。

 

 「まぁそういう事があった。」


 「ドラゴンネットワーク」越し、クリフォードとウララに説明を終える。

 「そう・・・ホナミが・・・。」と呟いた後に押し黙るウララ。

 ウララもホナミとは仲が良かったし、色々と思うところがあるのかもしれない。

 

 「しかし厄介だな・・・。さすがに今回の件は罠だった、先手を打たれていたと見るべきだろうが・・・実際問題、アフィナとシルキーが、セイたちの足手まといになっている現状は、傍目から見ても間違いなかろう。」


 クリフォードは静かに告げる。

 人の住む町に入ったとたんに受けた襲撃、今まで受けたことの無い夢からの攻撃。

 これは彼も言った通り罠だと思われるらしい。

 彼の経験上、おそらくは町自体に設置型の罠魔法がしかけてあり、それの対象がおれだった。という予想。

 そこはさすがに『略奪者プランダー』と言えど、相手が誰かわからなければできなかったことだろうと。

 竜兵が平気だったのはそういう理由があるようだ。

 もしかしたらウララには対策がしてあったのかもしれない。

 

 更にはアフィナとシルキーが人質になるという、正におれのアキレス腱とでも言うべき事象。

 彼女達はシャングリラでもおれと同行していたため、罠の対象に組み込まれていたんだろうこと。

 クリフォードはむしろ、そっちの方を重く見ていた。

 今回のことでおれたちは一層警戒を強めた。

 それは現場には居ないクリフォードなら尚のことなんだろう。


 「クリフのおっちゃん。それはもう大丈夫、おいら二人の防衛強化したから!」


 竜兵がクリフォードの心配事に答えを示す。

 彼は宿に戻ってから、一心不乱でアクセサリー『守りの指輪』を作り上げた。

 今のパーティメンバー用に簡易結界のような物を作ったらしい。

 当人曰く、「指導者級以上の干渉、古代級以上の魔法を受けない限り大丈夫!」らしい。

 ええ、オーパーツですがなにか?


 「そ・・・そうか。確かにそれ以上になれば、魔力の流れ等で隠密性は格段に落ちるしな・・・。私の結界具でも持たせるべきだったな、済まない。」


 竜兵の進言を聞き、銀板越しに聞こえるクリフォードの少し上ずった声。

 たぶん竜兵の製作チートにドン引きしているんだろう。

 まぁこれである程度は懸念が拭えたか?



 ■



 クリフォード、ウララとの会話を打ち切って少し。

 ベットに横たわっていたシルキーが目を覚ます。

 彼女は目を擦りながら「ウーン。」と一つ伸びをして、辺りをゆっくり見回した。

 

 「おはようセイさん、これはどういう状況?」


 こてんと首を傾げ、不思議そうに聞いてくるシルキー。

 ポニーテールがゆーらゆら。

 どうやら操られていた時のことは記憶に無いらしい。

 覚えてないならさぞ不思議だろう。

 寝るときは隣部屋でアフィナと二人だったのに、今は違う部屋。

 それも身内を始め、変態紳士を含めた全員が集まっている。


 「シルキー、具合が悪かったりはしないか?」


 おれの問いに対しシルキーは、「うーん、そう言われて見ると、少し頭が重いかもしれない・・・。」と、何度か頭を振る。

 おれは簡単にこれまでの状況を説明した。


 「また迷惑をかけてしまったんだね。セイさんごめんなさい。」


 ベッドの上に女の子座りで悲しそうな表情のシルキー。

 目の端に涙を浮かべながら真摯に頭を垂れる。

 おれもどうしていいかわからず彼女の頭をポンポンと撫で、「まぁ気にするな。それに竜兵が対策を立ててくれたからな。」と言って、竜兵が作り出したアクセサリー『守りの指輪』を渡す。

 おれと竜兵、それにヴェリオンのおっさん二人はすでに装備済み。


 「竜君、ありがとう。」


 そう言って頭を下げたシルキーに、「気にしないでー!」とサムズアップの竜兵。

 彼女は受け取ったアクセサリーを身につけながら、ついでとばかりにアフィナを揺り起こす。

 起こしたアフィナに自分がされたのと同様の説明をした後、シルキーはおれの方へ向き直る。


 「それはそれとして、セイさん・・・。」


 「ん?なんだ?」


 シルキーは一度口ごもり、アフィナと視線を交錯させると、妙に静かに問いかけてきた。


 「イアネメリラ様はわかるとして・・・その人は誰かな?」


 彼女の視線の先には、おれの手にぴったりとくっついたままのカオス。

 そしておれの頭をホールド中のイアネメリラさん。

 ええ、状況は何も改善してないんですよ。

 むしろイアネメリラさんが首を極めに来てるんで、かえって悪化したかもしれませんね。

 どうしてこうなった?


 「またハーレム要員が増えてる・・・。」

 

 アフィナがボソリと呟く。

 ハーレム?ハーレムって何ですか?

 

 「カオス~?もう帰っていいよ~?」


 イアネメリラの声がかなり冷たい。

 ついでにおれの首が絞まってますが・・・。


 「イアネメリラ様は、旦那を独占したいだけでしょ♪」


 おい、カオス・・・イアネメリラを刺激するな。

 全部おれに返って来るんだぞ!


 「うふふ~。」「アハハ♪」


 おれの身体に接触したまま、負のオーラ出すのやめてくれませんかね?

 お前ら仲良くしろ!

 今にも一触即発、なんだか残念と馬の人まで混ざりそうな雰囲気に、おれは声を荒げた。

 

 「いい加減にしろ!メリラもカオスも強制送還するぞ!」


 「だって~!」「あ!旦那横暴だよ!」


 黙って見ていた変態中年たちも気色ばむ。

 

 「オーゾル!修羅場だな!」


 「ええ、あの少年のタラシっぷり、このオーゾルも脱帽です!」


 ええい、やかましい!

 しかも何でそんなにイイ笑顔なんだよ、チクショウ。

 そこへ妙にドヤ顔の残念が、無駄に胸を逸らしながらおれに向かって指を突きつける。

 お前・・・他人に指を指すなって教わってないのか?


 「大体にしてセイが、また新しい女の子を増やすから悪いんでしょう!」

 

 「・・・はぁ???」


 思わずそのセリフに絶句した。

 こいつ何言ってんだ?

 おれの態度に当の本人アフィナは、「え?え?」と混乱している。

 ん?もしかしてこいつら・・・気付いてないのか?

 おれは認識のすれ違いに初めて気が付いた。


 「あのなぁ・・・こいつ、『愚者の王』カオスは男だぞ?」


 しばしの沈黙。


 「「「「「えっ!?」」」」」


 その場に居る全員、話題の本人カオスと老練なバイア以外が驚愕する。

 あ、バイアも声こそ出さないがビックリしてるな。

 いやいや、イアネメリラは知ってるだろ?

 しかしいかにも初耳と言う態度・・・あれ・・・知らないのか?


 「えーとアニキ・・・それ本当?」


 いち早く復活した竜兵が、恐る恐る尋ねてくる。

 おれの首肯に対しアフィナが、「じゃあ・・・何で・・・。」と呟いた。

 そこに先ほどまでの勢いは無い。


 「んー、こいつオカマ?いや・・・ガチホモなんだ・・・。」


 「いやーん♪旦那、せめて男の娘って言って~♪」


 「・・・・・・。」


 無言でおれたちを見つめ、口をアングリの一同。

 いや、お前らなんか反応しろよ。


 「おい、カオス!どさくさ紛れに服脱がそうとすんな!」


 「旦那の子供が欲しい♪」


 訳がわからない。

 やはりこいつを呼んだのは早計だった。


 「お前とおれじゃ子供はできません。アンダスタン?」


 「愛があれば、性別の壁なんて越えられるよ♪」


 だ、誰か助けてー!




 


ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


※SSはシリアス0、かなりギャグテイストです。

え?本編も大して変わらない?

良く聞こえません、なんだか電波悪いですね^^


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