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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第三章 深海都市ヴェリオン編
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・第百十二話 『進展』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


※今回ボヤキ無しです。

ネタが無いんじゃない!セイはボヤく間も無いくらい焦ってたんだ!と、言ってみる。


 おれは『図書館ライブラリ』を展開した。

 目の前に浮かび上がった、黒い背表紙のカタログ。

 中から一枚のカード、竜兵が製作した「ドラゴンホットライン」用の銀板を取り出し、『カード化』を解除する。

 

 「君たちは一体何者・・・。」


 「ローレン様、お下がりください。」


 ローレン、オーゾル両名が、目に見えて警戒を強めた。


 「アニキ・・・良いの?」


 二人の様子を伺いながら、少し心配気に竜兵が尋ねてくる。

 おれは、「ああ、緊急事態だ。」と答え、ハタと思い出す。


 (そういやウララは今、シャングリラか・・・。)


 もうこの際仕方ないだろう。

 「竜兵はウララを呼んでくれ。」と指示を出し、「わかった!」と頷いた竜兵も『図書館ライブラリ』を展開。

 赤い背表紙のカタログから、おれ同様銀板を取り出した。

 転移者組、及び各国の首脳陣とも相談して、『カードの女神』がくれた『加護』のことは、できるだけ周囲にバレないよう注意していたが。

 現状は、そんな甘いことを言っていられる場合じゃない。

 おれたちの認識の齟齬を早急に伝えないと・・・。

 呼び出しベルの代わりにドラゴンの咆哮、それが相手方に鳴っているのが感じられる。


 「セイか?どうした?」


 「なによ竜?トラブル?」


 ほとんど同時に受け取ったんだろう。

 室内に響くクリフォードとウララの声。


 「ウラ姉、ちょっとまずいかもしんない。」


 「クリフォード、とりあえずそのまま聞いてくれ。」


 オーゾルが油断無く周囲を見回し、ローレンは興味深そうにおれたちを見つめた。

 全員の視線がおれたちの持つ銀板に注がれている。

 オーゾルはチャンスとでも思ったんだろう。

 「ローレン様・・・今なら・・・。」と、全身に力を入れたが、ローレンが「いや、オーゾル待て。」と、その機先を制す。

 おれはダメ元でも誠意を通すべく、二人に対し真摯に呼びかけた。


 「事は一刻を争う。納得もいかないだろうが、とりあえず今からのやり取りを見て、決めて欲しい。」

 

 ローレンは目を瞑り黙考。

 逆にオーゾルは瞠目し、ローレンの指示を待つ。

 ややあって目を開いたローレンは、一度バイアに視線を向けた後、「いいだろう。」と鷹揚に頷いた。


 クリフォードから訝しむ気配が伝わってくる。


 「セイ、そこにお前達以外の誰かが居るのか?」


 「ああ、今日取った宿で・・・偶然ローレンとオーゾルに会った。」


 カードの向こうで、「ローレン・・・オーゾル・・・。」と呟いたのが聞こえ、少し後「なるほど。」と返事が返ってくる。

 どうやらクリフォードは、二人の存在を知っているようだ。

 本当にできる王様だな。 


 「それでセイ、何がまずいのよ?」


 クリフォードが人心地付けるのを待っていたかのように、ウララが先ほど竜兵が放った発言に、質問を投げかけてきた。

 

 「ヴェリオンにアンデッド・・・ゾンビが攻撃をしかけているって話だ。」


 おれの言葉にオーゾルは、「貴様!また戯言を!」と立ち上がりかける。

 それを制するのはローレン。


 「オーゾル、とりあえず最後まで話を聞いてみようではないか。少年二人はともかく・・・そこなご老体が、これほどの真剣な威圧を出されているのには、きっと何かしらの意味があるのだろう。」


 視線は油断無く、特にバイアの動きを警戒しているのがわかる。

 バイアの威圧、やっぱすごいんだな。

 そんな事を感じていると、クリフォードとウララから疑問の声が上がった。


 「セイ、それのどこに問題があるんだ?・・・何か新しい情報でも出てきたのか?」


 「そうよ、『死屍累々(コープスフェスティバル)』で間違いないって話だったじゃない?」


 建設的に新たな情報を得たのか?と推測するクリフォード。

 ウララは逆に、自身のカードゲーム知識を再確認する。


 「クリフォード、ウララそこだ。この世界では・・・生き物が死んだらカードに変わり、アルカ様の輪廻の輪に戻る。つまり・・・死体が残らないんだぞ?」


 「・・・・・・。」


 「そんなの当たり前・・・あっ!」


 クリフォードは絶句、ウララは簡単に切り捨てようとして、言外に告げられた意味を正しく理解する。



 ■



 黙って話を聞いていたローレンが、「少年・・・セイ君と言ったか?少し確認させてもらってもいいだろうか?」と声を上げた。

 おれは黙って首肯する。


 「どうやっているのかはわからないが、もしかしてその銀板から発せられる声は、『神官王』クリフォード様の物なのか?」


 「そうだ。ローレンは彼と面識が?」


 おれの肯定にポツリ、「やはり・・・。」と呟き、黙考しながらも大きく頷くことでおれの問いに答える。

 フローリアはヴェリオンと友好国だ。

 そのトップと貴族なら、面識があってもそう不思議はない。


 「ローレン様・・・。」


 オーゾルは未だ半信半疑。

 それも仕方ない、この情報の共有というチートな力は、正に竜兵が居るからこそ出来た代物だ。

 「その不思議な会話は私でも出来るのか?」と何かを整理したようなローレンの問いに、「ああ、そのまま話せば出来るぞ。」と答える。

 「では・・・。」と前置きして、ローレンはクリフォードに向けて言葉を発した。


 「無礼を承知でお伺い申し上げる。貴公が事実、『神官王』様であらせられる証拠を提示することはできまいか?」


 信じがたいのも理解はするが、確かに無礼だな。

 しかも本国に居るクリフォードに、どうやって証拠を提示させるつもりなのか。

 いや、これはあれか。

 この携帯電話とも言うべき「ドラゴンホットライン」の性能を知らなければ、それこそ近くに居て話してるくらいに思うのかもしれない。

 それこそ風魔法の音伝達かなんかくらいだと?

 そこら辺やっぱりクリフォードは、全部理解しているようだ。

 「ふむ、別に大した事でもない。」と軽く受け流し、「セイ、親書を見せて差し上げろ。」と快諾した。


 (ああ、そういやあったな。)


 ヴェリオンのトップ陣に会ったら見せろって、クリフォードが一筆書いてたんだ。

 セリーヌの神託でヴェリオンの窮地を知ってる事とか、おれたちを救援に派遣してることとかな。

 あとは『回帰』のパーツに関しても口を聞いてくれてるらしい。


 おれは『図書館ライブラリ』から、クリフォードの親書を取り出し『カード化』を解除。

 未だ警戒を解かないオーゾルを刺激しないよう、ゆっくりとした動作でローレンに渡す。

 封筒を受け取ったローレンは、その封筒に施されたフローリアの蜜蝋。

 星型の紋章クレストが付いたそれを見て、ことさらに瞠目した。

 クリフォードは、状況を見ているかのように指示を出す。


 「セイ、アフィナを紹介して懐剣を見せてやれ。」


 ああ、こいつもあの国の貴族だったな。

 正座状態で空気と化し、もはや涙目のアフィナを指し示す。


 「ローレン、オーゾル。彼女はアフィナ・ミッドガルド。フローリアの貴族で先代『風の乙女』シイナの娘、現在の『風の乙女』だ。」


 アフィナはこくりと頷き、懐から懐剣を抜き出すと、その柄頭を二人に向けて見せた。

 そこにはクリフォードの親書同様、星型の紋章クレストに意匠化された風の絵。

 それを見てポツリと呟くローレン。


 「確かに・・・間違いない。あれは『風の乙女』の懐剣。それに言われてみれば・・・シイナ殿にとても良く似ている・・・。」


 ローレン、オーゾルは顔を見合わせ、困惑しつつも納得したようだ。

 

 

 ■



 おれたちはある程度の情報を晒した。

 誤魔化しきれないだろうし、何より時間が惜しかった。

 うまい説明をするためにはどうしてもおれたちの存在、ひいては『略奪者プランダー』の情報が不可欠だったからだ。

 異世界転移、主神の加護、フローリアやシャングリラでの出来事。

 そしてヴェリオンの現状を把握し、救援の為に移動していることに至るまでかいつまんでだが、できる限りわかりやすく説明した。


 最初こそ半信半疑だった二人だが、その態度は一人の人物によって激変する。

 それはおれの盟友ユニット、『黒翼こくよくの堕天使』イアネメリラ。

 おれや竜兵の能力・・・カードに描かれた、この世界の英雄を呼び出せることを説明する際、さすがに宿の一室でバイアにドラゴン化してもらう訳にもいかず、イアネメリラに箱から出て来てもらった。

 そして彼女の姿を見止めた二人のおっさんは、瞬時に揃って平伏した。


 「なんと神々しい!貴方様の前では『美の女神』メイリダ様とて裸足で逃げ出すでしょう!」


 「イ、イ、イ、イアネメリラ様!ご尊顔を拝見できて、このオーゾル感激の極みです!」


 見事なまでのDogezaのまま、口々にイアネメリラを褒め称える二人。

 イアネメリラもかなりの困り顔で、「う~ん、顔上げて~?」と促しているが・・・。

 「「いえ、我々はこのまま!」」と額を床に擦り付ける。


 何が彼らをそこまで駆り立てるのか・・・。

 その原因はどうも20年前の大戦にあったらしい。

 何でも当時10代の彼らがほぼ初陣に近い形で参戦中、イアネメリラが敵勢力を鎮圧してくれたおかげで、九死に一生を得たんだとかなんとか・・・。

 本人はと言うと、「う~ん・・・覚えてない。」と言ってたが。

 何はともあれおれたちは、今から救援に向かう『深海都市ヴェリオン』の指導者と顔を繋ぐことが出来た。

 逆にここで出会えなかったら、自分達の認識違いにも気付けなかったかもしれない。

 双方納得、歩み寄った上でこの先の行動を話そうとした時。

 ずっとおれの側で動向を見守っていたシルキーが呟いた。


 「セイさん、そこの二人はいつまでその格好なの?」


 ・・・oh・・・。

 おっさん二人がパンツ一丁なことを、おれたちは完全に忘れていた。





ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


※相談が長くて、話全然進まねーなって思われてないですかね?^^;

作者も早くバトルシーンとか行きたいんですが・・・。

「ほぼ」毎日更新なので許してくだしあーorz

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