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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
103/266

・第九十七話 『残響(エコー)』

いつも読んで頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります。


※3/4 ルビ振り忘れ、書き足しました^^;

 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、おれって結構がんばったと思うんだ。

 それなのに、兄貴忙しくて死にそうです。

 被害を受けた建物や王城内勤務の犠牲者の処遇。

 なるほど、大事だね。

 マルキストが『天尊』カルズダート三世を廃し、『裁断王』マルキストとして即位。

 まぁ適任だろうな。

 『正義神』ダインがお隠れになったため、聖女こと『正義ジャスティス』のウララ様が代行、『正義の女神』として『天空の聖域シャングリラ』を保護。

 前半はともかく、後半聞こえちゃいけない単語があったね?

 即位の式典として『正義の女神』ウララ様のライブ。

 はい?

 ヴォーカル:『正義の女神』ウララ様、ギター:『悪魔デビル』のセイ、フルート:『横笛の乙女』テュレサ、ハープ:『歌姫』セリシア、総合MC『裁断王』マルキスト。

 えーっと・・・。

 ちょっと待って、整理させて!

 気持ちを!

 


 ■



 リゲルの人化は封印された。

 あの後は大変だったんだぞ?

 シルキーが完全にブチキレてなぁ・・・。

 普段怒らない人間が怒ると・・・ってアレだ。

 せっかく『再生』で繋げたリゲルの角を、素手でへし折ろうとしてたからな。(遠い目

 彼女のポニーテールも、その感情を表すように回転してたわ。

 いや、それどうなってんの?


 まぁ結局、ウララとアフィナが必死で説得して人化封印って落としどころになった訳だ。


 「シルキー、仕方ないわ!リゲルはまだ幼いんだもの。」


 「ボ、ボクらが助けられたのも事実だよ?ね、シルキー。」


 なんだろう・・・ウララの子供に対する異常な優しさ。

 その優しさをもう少し、おれにもください・・・。

 遠巻きにそれを見守っていたサーデインが、おれに向かって口を開いた。

 

 「どうやら落ち着きましたかね?主殿、一つ確認したいのですが・・・。」


 (なんだろうか?)


 おれが目線で促すと、「フローリアに連絡は入れましたか?」との言葉。


 「・・・あっ!」


 サーデインが「やっぱり。」と言いたげに嘆息する。

 また忘れてたわー。

 せっかく通信チートがあるのにな。

 おれこの世界に来てから記憶力がやばくなってないかしら・・・。

 カードの内容とか忘れないのに不思議だねorz


 おれは『図書館ライブラリ』から『吹雪竜帝ブリザードドラゴンロード』のカードを出し、とりあえずウララとマルキストを呼んだ。

 

 「今からフローリアに連絡を取る。ちょっとこのカードに触ってくれ。」


 そう言うおれに、不思議そうな顔をする二人。

 とりあえず自分で見て、話してみた方が早いだろうし・・・。

 おれはカードを持って、わざと口に出しながら『念話テレパシー』を送った。


 「【竜兵、おれだ。聞こえるか?】」


 【あ!アニキー!無事?ウラ姉は!?】


 「「これはっ!?」」


 意図したわけでも無いだろうに、ウララとマルキストの声が重なった。


 【ウラ姉!?ウラ姉だよねっ!?大丈夫!?怪我してないの!?】


 ウララの声を聞き興奮する竜兵を、【まぁこっちは何とかなったから安心しろ。】と一先ず落ち着かせる。

 マルキストは完全に動揺しているが、さすがはウララ、もう驚いていない。

 一瞬でこの現象の大まかな仕組みを理解したのだろう。

 おれのように声は出さず、【竜!心配かけたわね。アンタこそ無事なんでしょうね?】と問いかける。

 その言葉でウララの無事を確信できたのだろう。

 竜兵が元気良く応える。


 【おいらは元気だよ!ウラ姉が無事で本当に良かった!!!】


 【そう、ならいいわ!】


 マルキスト、完全に置いてけぼりである。

 それはともかく。


 【竜兵、クリフォードかヒンデ・・・だめだな。セリシアでも構わない。どっちか呼べるか?間違ってもヒンデックは呼ぶなよ?】


 おれの指示に【アハハ・・・。】と乾いた笑いを残し、竜兵が【ちょっと待ってて。】と移動する気配。

 しばらくして・・・。


 【セイ無事なんだな!?そちらはどうなった?】


 クリフォードと『念話テレパシー』が通る。

 

 【まぁ・・・概ね大団円と言ったところだな。ただしこっちにも『略奪者プランダー』が居た。それと、天使族がかなりの大打撃でな。復興にはそれなりに時間がかかるだろう。その絡みで『裁く者』マルキストがこの国の王になった。今ここに居るから、今後のことは王族で詰めてくれ。補足は入れる。】


 ウララが目線で殺してくる。

 ああ、これアレだ。

 「なんで『正義の女神』(あたし)の事をちゃんと説明しないのよ!」ってやつだ。

 勘弁してよ・・・おれのライフはほぼ0よ。

 しばしの沈黙の後。


 【なるほど・・・。マルキスト王よ、そこにおられるか?】


 クリフォードの『念話テレパシー』に思わず、「【はいっ!おります!】」と声に出して叫ぶマルキスト。

 どうやら本物の『神官王』と話していると悟り、ド緊張のようだ。

 落ち着け、他国の王ってだけでお前も今は同じだぞ?

 まぁ成り立ての王様だし仕方ないわな。

 

 【ククク、どうやら噂道り実直な御仁らしいな。ではお願いがある。これからの事を話し合う為にも、是非直接お会いしたい・・・と、言うよりそちらに伺わせて頂きたいのだが、構わないか?】


 どうやら鎖国中だったこの国の情報も、しっかり集めていたらしいクリフォードは、マルキストの様子にひとしきり笑った後そんな事を言い出した。


 【はい、こちらは問題ありません!むしろ今までの非礼に対し、こうして話を聞いて頂けるだけでも・・・それで、いつごろ会談を?】


 少し落ち着いたマルキストが『念話テレパシー』で回答する。

 すると、クリフォードが悪戯っぽく笑い、【今からお願いしよう。】と告げた。


 「「「え?」」」


 直接会おうって言った直後に、今から会談?

 たぶんその『念話テレパシー』を聞いた人は、みんなそう思っただろう。

 

 【アニキー!動かないでねー!おいらは行けないけど・・・。】


 竜兵の『念話テレパシー』が届いた直後だった。


 「こんにちは、セイさん。」


 にっこりと微笑む、20代にしか見えない清楚系美人のエルフ女性。

 横に並ぶ、ハープを持った妙齢の人族女性は会釈だけ。

 二人の女性の後ろに、ストレートの長い白髪、緑色の瞳、若木でできた冠を被り緑色の神官服を着て、木の枝を持ったエルフ族男性。 


 「お初にお目にかかる。私は『精霊王国フローリア』の現国王、『神官王』クリフォード・R・フローリア。此度の戦乱、誠にお悔やみ申し上げる。若き王マルキスト殿。」


 クリフォードが『歌姫』セリシアと、『森の乙女』カーシャを伴い転移してきたのだった。



 ■



 「それで・・・どうしてこんな話になったんだっけ?」


 「主殿、現実を見つめてください。その質問何度目ですか・・・。」


 おれの問いに、苦笑交じりの苦言を呈すサーデイン。

 どうやらクリフォード、竜兵が新たにこさえた『謎の道具ミステリアグッズ』を使って転移してきたらしいのだが・・・。


 シャングリラ側がマルキスト、カーデム老人、それにウララと、彼女が召喚したサラ。

 感動の別れの直後に呼ばれて、ちょっと切なそうだったサラに同情を禁じえない。

 そしてフローリア側が、クリフォードとセリシア、カーシャ。

 おれとサーデインを含めた九名で、緊急の会談を行った結果なのだが、未だに納得はいかない。

 

 実際の被害確認と今後の方針。

 『略奪者プランダー』の情報共有と対策の連携。 

 色々と話を詰めたのだが、「やはり即位式典は即行った方が良い。」とクリフォードの提案に全員が納得し、いざこれからその準備と言った雰囲気になりかけた時だった。


 アルカ様から『正義神』ダインの代行に任命された経緯を語った後、特に明確な発言をしなかったウララが、突然叫んだのだ。


 「セイ、あたし歌うわ!」


 会議の参加者が唖然とする。

 なにか言わないとまずいと思ったのだろう、「ウ、ウララ様?歌うのですか?」とマルキスト。

 ウララはそのマルキストにしっかりと頷き、瞳に力を宿す。

 

 「決めたわ!」


 ぐっと拳を握り締めるウララに、周囲はたじろぐばかりだった。

 いやいや、途中はしょりすぎだから。

 普通の人はそれじゃわかりませんよ?

 まぁ長い付き合いなんで、なんとなく言いたいことはわからんでもないが。

 ふ~っとため息一つ、質問する。


 「で?その心は?」


 「だから・・・即位の式典と鎮魂歌よ!」


 「なんでそんな事もわからないんだ?」と言う顔で見てくるウララに頭が痛い。

 これが普通だからね?君がおかしいんだよ?

 フリーズしていた面々が起動した。


 「なるほど・・・女神ウララ様自ら、鎮魂歌を歌ってくださるんですか?」

 

 サラの確認に、「そうよ!」と元気に答えるウララが、おれに命令するように言い放った。

 

 「セイ!ギター弾きなさいよね!」


 「・・・はい?」


 いや、多少なら弾けなくは無いが・・・鎮魂歌にギター?

 今度はおれがフリーズする。

 その間にドンドン話が決まっていく。


 「司会進行はマルキストがやるのよ!?さぁて・・・ライブよ!」


 『横笛の乙女』テュレサまで召喚したウララが、ペロリと舌なめずりをする。

 聞き間違いですかね?

 ライブって聞こえたんですが・・・。


 「それで・・・どうしてこんな話になったんだっけ?」


 「主殿・・・もう出番みたいですよ?」


 ウララに渡された『謎の道具ミステリアグッズ』、『海鳴りのギター』を抱え現実逃避。

 時は無情だった。

 マルキストの演説が終わり、「では国民の皆さん、『正義の女神』ウララ様のご降臨です!」と舞台袖を指し示す。

 何故かハンマー型のマイクを持ったウララが、おれの手を引っ張る。


 「いくわよ!セイ!」


 どうやら諦めるしかないようだ。

 舞台に降り立った女神は、自身に詠唱強化魔法『残響エコー』をかけ、ハンマーマイクを握りすぅっと息を飲み込んだ。

 いやな・・・いやな予感がするっ!

 ウララ!イケナイ!


 「あたしの歌を聞けぇぇぇぇぇ!!」


 秋広ぉぉぉぉ!!!

 感染力がやべぇぇぇぇorz


ここまで読んで頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。



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