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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
101/266

・番外編 あるお嬢様の日常

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


※バレンタインに活動報告へ載せた番外編SSです。

楽しんで頂けたら幸いです。

 

 みなさんごきげんよう。

 ワタクシの名前は天京院飛鳥てんきょういん あすかと申します。

 ご存知の方もいらっしゃるかしら?

 そうですわ!『ソード』のアスカです!

 今日はワタクシの日常を紹介と言うことらしいので、気合を入れて・・・キーンコーンカーンコーン。

 四時限目終了のベルですわ。


 「みきちゃん、お昼ですわよ?」


 ワタクシは隣の席に座る親友に声をかけました。

 ・・・反応がありませんわね。

 妄想フレンドではありませんのよ?


 ワタクシの親友、九条美祈くじょう みきはとても可愛らしい方ですわ。

 柔らかな栗色の髪をショートカットにして、小動物のような幼い顔立ちなのにスタイル抜群。

 性格も穏やかで争いごとを好まず、にも拘らずしっかりとした芯を持っているような娘ですの。

 彼女とワタクシが親友と言い合えるような間柄になったのは、それはもう濃厚なエピソードがあるのですけれど、今回は省きますわ。


 彼女はどこか虚ろな目で窓の外を眺めていました。

 いつもの穏やかな表情も可愛らしいのですけれど、こんな時の彼女はどこか得体の知れない色気を醸し出しているような気がしますわ。

 こういう時の彼女は大抵同じ事を考えています。

 みきちゃんの最愛のお兄さん、二月ほど前から行方不明になってしまった人。

 九条聖くじょう ひじり、通称『悪魔デビル』のセイのことを・・・。


 「みきちゃん、お昼ですわよ。」


 「あ!あすかちゃん、ごめんね。またぼーっとっしてた?」


 肩をトントンと叩いた事で、やっと声をかけられていることに気付いたみきちゃんは、案の定ワタクシに謝りました。


 「みきちゃん、気にすることはありませんわ。お昼にしましょう。」


 笑顔で彼女を励まし、微笑ながら「うん。」と返事が返ってきたので、お弁当を広げることにしますわ。

 相変わらずみきちゃんのお弁当は可愛らしいですわね・・・。

 栄養バランスも素晴らしいですわ。

 栄養士の資格を持っているワタクシのSSシークレットサービス、山本の作るお弁当と比べても全く遜色がありません。

 彼女はそれを毎朝自分で作っていると言うのですから驚きですわ。

 ワタクシがみきちゃんのお弁当に見惚れていると、横から声がかかりました。


 「みきちゃん、あすかちゃん、混ーぜて。」


 そう言ってイスをズリズリ引きずって合流したのは、井上若菜いのうえ わかな

 このクラスでも浮いているワタクシとみきちゃんの数少ない共通の友人ですわ。

 

 「あ、わかなちゃん。今日はお弁当なんだねー。」


 「こちらへどうぞですわ。」


 みきちゃんと揃って歓迎します。

 わかなちゃんは『リ・アルカナ』での関係こそありませんが・・・。

 基本ほとんどの方と敬語で話すみきちゃんが、ご家族とワタクシ以外で唯一普通に話せる方ですの。

 黒髪をおさげにして眼鏡をかけた、いかにも図書委員って雰囲気なのですが、話してみるととても気さくで明るい方ですわ。



 ■



 お弁当が終わった後、わかなちゃんが突然意味深な笑顔を浮かべて、こんな事を言い出しましたわ。


 「二人はもう明日のこと決めた?」


 「「明日?」」


 一瞬教室が静まり返り、クラスメイトがこちらを伺ったような感覚がありましたわ。

 一体なんなのでしょう?

 意味がわからないワタクシとみきちゃんが、声をそろえて聞き返します。

 明日は何かありましたかしら?

 わかなちゃんは「またまたー。」なんて仰りますが、二人とも頭の上に?が舞っているでしょうね。


 「えっ?本当にわからない?」


 本当に意外と言う顔をされたわかなちゃん。

 ワタクシとみきちゃんは首を傾げましたわ。


 「明日・・・バレンタインデーだけど・・・。」


 「あ・・・。」


 小さく呟くみきちゃん。

 ああ・・・そんなイベントもあるんですのね。

 でもその話題、今のみきちゃんにはちょっとヘヴィですわね・・・。

 みきちゃんは悲しげに目線を下げてしまいますわ。

 わかなちゃんもそんな様子に気付いたのか、「ご、ごめんね。なんかまずいこと言っちゃったみたい。」と慌てています。

 みきちゃんはそんなわかなちゃんに、優しく微笑むと言いました。

 

 「ううん、大丈夫だよわかなちゃん。わたしのあげたい人は・・・ちょっと遠くに居て無理なんだ。」


 そうとしか言いようがありませんわよね・・・。

 みきちゃんのお兄さんが今、どこにいるのかもわからない訳ですし。

 

 「そうなんだ・・・。ごめんね、みきちゃん。」


 たぶん遠距離恋愛中とでも解釈なされたのでしょう。

 申し訳無さそうに謝るわかなちゃんに、かえってみきちゃんが気を使うという謎空間が出来上がりますわ。

 その上なんだか、クラスメイトの男子たちの視線が気になりますわね。

 突然みきちゃんが、悪戯っぽい表情でワタクシを見ました。

 

 「あすかちゃんは山本さんにあげないの?」


 (なっ・・・!)

 

 「なぜワタクシが山本に、チョコレートをあげなくちゃいけないんですのっ!?」


 驚いて叫んだワタクシを、なんだか生暖かい目で見るみきちゃんとわかなちゃん。


 「へぇ~。あすかちゃんのイイ人は、山本さんって言うんだ?」


 驚いている間に、わかなちゃんが背後からワタクシを羽交い絞めにして、胸をもみ始めました。

 ちょっ・・・あん!

 わかなちゃんは「ほれほれー。吐かないともっと揉むぞー。」などと言いながら、どんどんワタクシを追い詰めます。


 「ワ、ワタクシと山本は、ただの主従関係ですわ!」

 

 ワタクシが叫ぶと、みきちゃんはにっこり笑顔でこんな事を言い出しました。


 「あすかちゃん、普段お世話になってる人にお礼って意味でも良いんだよ?」


 ・・・そうなんですの?

 そういうことなら・・・。


 「ま、まぁ・・・普段ずいぶん助けてもらっていますし、チョコレートの一つくらい差し上げるのも吝かではありませんわ。ワタクシからもらっても・・・嬉しくなんてないでしょうけど。」


 「そんな事ないよ!」「うん、きっとすごく喜ぶよ!」


 ワタクシの言葉をお二人は口々に否定します。


 「そうかしら・・・。」


 ワタクシの気持ちが半ば固まった所で、みきちゃんが悪戯っぽく笑いました。


 「あっ!そういえば一人だけあげるかな?」


 みきちゃんが思い出したように言います。

 教室が一瞬ざわついた気がしますわ。

 今日は本当に騒がしいですわね?

 「だれだれー?」とわかなちゃんが聞いていますが、みきちゃんは「ふふ。」と笑っているだけ。

 ワタクシも気になりますわ。


 「どなたに差し上げますの?」


 ワタクシが聞くとみきちゃんは、「お父さん。」と言って薄桃色の舌をちょこっと出しました。

 その余りの可憐さに教室が桃色の空気に包まれましたわ。

 そこには男子も女子もありません。

 ワタクシも同性にも関わらず、思わず抱きしめてしまいそうになったのは秘密ですのよ。


 これが女子力53万の実力ジツリキですのね・・・。

 みきちゃん・・・恐ろしい子・・・。


 

 ■



 彼女たちは知らない・・・。

 ウララが居なくなった後、彼女たち三人がこの学校の人気女子トップ3だと言うことを。

 セイが異世界へ転移してから、美祈が時折見せる異常な色気。

 これによりこの学校の男子生徒約八割が魅了済みだと言う事を。

 それなのに自分たちは浮いていると疑わず、無防備な美祈と飛鳥に注意を促すために若菜が接近したことを。

 しかもその若菜が、ミイラ取りがミイラ状態であることも。

 後日この日の出来事を隠し撮りしていた不埒者が、その画像を某動画サイトに投稿し、彼女たちがアイドルにしたてあげられて行くのだが・・・それはまた別の機会に・・・。

 

 一方その頃の異世界『リ・アルカナ』

 突然アフィナとシルキーがブルリと震える。

 

 「なんだお前ら?どうかしたのか?」


 セイの問いには、「何でも無い。」と答える二人。

 しかし即座に二人で顔を寄せ合う。 


 「シルキーも?」


 「アフィナさんもか・・・。」


 そこにもう一人。

 セイの箱から抜け出したキアラだった。


 「「まさか・・・」」


 「わ、わ、わ、私も感じました・・・!」


 三人は大きく頷いた。


 「なんだか分からないけど・・・とてつもなく強大な力を感じた・・・!」


 時空すら超越する美祈の女子力。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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