信用できる者②
「どこ行くんだよっ、おいっ!」
行き先も分からないまま着いて歩いていた柴崎が荒木に声を荒げた。
「あ゛っ?」
それが気に食わず、荒木は態度に眉間にしわを寄せながら振り返る。
「だから、どこいくんだって?」
柴崎の言葉は弱くなった。睨まれたことに対してビビったのだが、それを誤魔化すために口喧嘩も『面倒くさい』と一人偽装した。
「とりあえず職員室」
その翻された態度に荒木は内心で柴崎を馬鹿にしていたが、その感情にその場は乗っかる。所詮この二人の関係はお互いに利用に他ならない。ただそれを言葉にはせず、利益を優先していた。それを言葉で理解している荒木と、ふんわりとなんとかく理解している柴崎とでは、見えない差が上下関係を築きあげている。
「なんかあんの?」
「さぁな? 最悪放送室行けば、なんかあんだろ」
各教室に備え付けられているTVは放送室から映像を流すことができる。仮にあの映像が放送室から流されたとされれば『裏切り者』どころか確信犯がいる。
「放送室? ああ、そっか。ん? でもなんで職員室?」
「さっきの映像校長室だったろ」
「んぁ? 知らない部屋だったけど」
勘の悪さにため息が漏れる。
「俺たちが知らない部屋なんてそこぐらいしかないだろ。しかも、あれだけいい部屋なんて学校に校長の部屋しかねぇ」
「それなら――」
「校長室は職員室からしか入れないんだよっ、ちっ」
一から百まで説明しなければいけない不満に舌打ちが漏れる。後方を歩いていた柴崎には聞こえていなかったようで、納得したように柴崎が隣まで小走りで追いつく。
「なら、早く行こうぜ。俺たちだけさっさとクリアしちまえる」
荒木は考えるのを止めた。やめた代わりに、指示だけ出す。
「お前は玄関へ行ってガラス割ってこい。そこから出れるならその方が早い」
「あ、そ、そうだな。ん、ちょっと待てなんで俺だけ――」
「めんどくせぇなっ、俺の所為にしろっ、それでいいんだろ。どうせ出れねぇけどな。教室から出れなかったぐらいだ。そんぐらい仕掛けされてるっての」
捲し立てられ、ぐうの音も出なかった柴崎はしぶしぶ道を別れた。
柴崎がいなくなってから、
「マジで使えねぇ……」
愚痴を零し、すでに目を付けていた役に立つ人間に思考を切り替えていた。