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派閥とチーム

「意味が解らない」


そんなことを今まで口を閉ざしていた朝倉正吾が呟いた。それは『裏切り者』の意味は理解し、誰しもが疑問として抱いたもう一つのルール。


「私たち以外の鬼って誰?」

覚えた様子で第三者の影を匂わせる麻生望。


望と普段から一緒にいる鈴木加奈が皆に聞こえるように、望に話しかける。

「……『裏切り者』のことじゃないの?」


その二人の近くにいた田辺紀子が、

「ち、違うんじゃない。だって『裏切り者』を見つけるなら、『裏切り者』が私たちを見つけるのっておかしいじゃん」


「え、でも『裏切り者』が裏切っていることに気付いていないならあり得るかもよ」


熊谷志保の言葉で区切りがつくと、一様に近くにいたクラスメイトを見てから、各々が考える。自分が裏切り者の立場にいないかを。

お互いを、そして自分自身を疑い始めたクラスメイトをよそに、誰かの言葉に惑わされることもなく、成り行きを見ていた直は自分の言葉が誰かに届かぬよう良太に話しかけていた。それは自分の言葉に責任を持てないと判断したからの直の配慮だった。


「なんで、いきなり会話増えてるんだ? 良太……、聞いてるか?」

「ん? あ、悪い考え事していた」


理解しているからこそ良太は直を疑わない。同時にその質問をした直も良太を裏切り者だとは思っていない。


「たぶん、自分は『裏切り者』じゃないってアピールしてるんだと思うけど」

「でも、普通なら逆じゃないか、あんな状態で声出す方が疑われないか?」

「どうだろうね。熊谷さんが言ったこと考えればどっちでも変わらないけど」


直とクラスメイトの様子を話し合っていると、良太は視線を感じそちらを振り向いた。すると、ニヤついた様子で今の会話を聞いていた荒木が目を逸らしていた。


「良太?」

「ん、いや、なんでもない」

「ぼうっとしすぎじゃないか? あんま考えすぎるなよ」


直の優しい言葉に良太は軽く笑って、荒木の事は一旦考えるのを止める。すると、卓が再び教卓に立っていた。


「どうだろう、どのみち意味が分からないことが多い。だったらチームを作って行動するというのは」


何のために、と誰もが思った。この教室から出られない今、皆で行動した方がいいのは明白だった。しかし、そんな当然の考えとは別に卓は荒木達のグループから離れたいという思いがあった。


「私は賛成。一緒に行動していい?」


委員長同士というべきか千鶴はさっきの一連があったおかげで、卓の意図することをまっさきに理解し、同意した。千鶴がいるならという理由で女子が数名、卓と元々仲が良かった男子が数名集まる。


「他に行動したい人は?」


他からは、すぐに賛同を得られない。それには『裏切り者』の存在が脳裏にあり、人数が増えた分だけその『裏切り者』がチームにいる可能性が高まるからだ。


「僕はさっきの熊谷さんの言葉で、『裏切り者』になっている人が僕たち以外の鬼だと思った。だとしたら、このゲームを攻略するなら『裏切り者』には一緒にいてもらった方がいいと思うんだ」

「なぁ、それって矛盾してないか? 裏切り者が俺たちをゲームに参加させたんなら、裏切り者が俺たちを見つけるなんて変だろ」


チームに入るか入らないかの決断をするために、景山豊が尋ねる。


「いや、していない。さっきも言った通り、熊谷さんの言葉で考えるなら、『裏切り者』はそれに気づいていない、それに気付かせることがルール①の答えになるし、自然とルール②の解決にもなる」

「だからさっ、熊谷の『裏切り者』が気付いていないって根拠は?」


何度も自分の名前が飛び交うのに志保はイラついた様子で、「名前出すのやめてよっ」と周りの女子に零している。志保のその様子に気が付かないまま、卓は言い放つ。


「じゃあ、『裏切り者』は僕たちをどうして裏切ると思う」

「そんなの知るかよ」

「じゃあ、『裏切り者』はどうして僕たちと同じ教室内にいる?」


あっ、と豊は何かに気が付いた。


「確かに、『裏切り者』が一緒に閉じ込められているのはおかしいな」

「だろ。だから、きっと知らないうちにその役割を押し付けられてるんだ」


その瞬間大体の人間が、卓が作るチームに参加した形になった。そして、卓のチームに来た人間が『やっかいな人間がいない』という卓の意図に気付き始めた。

それはさっきまでのやり取りの仕返しで勝ち誇るような構図。卓はこうなることを計算していた、荒木達が卓のチームに来ることはしない。なぜならそれは間違いなく荒木のプライドを傷つけるからだ。

なにやら荒木と柴崎がひそひそと話し合っているうちに、卓はさらに追い打ちをかける。すでに残っているのは、一〇人にも満たない数だった。そして最初に卓が目を付けたのは、


「笹倉君達もどうかな?」


直と良太の二人だった。

どうする、と直が良太に尋ねてくるが、すでに良太はどこかのチームに入る気はなかった。人間の悪意が込められているのに気づいてしまっている良太には、卓のチームに魅力を感じていない。それに、単純に団体行動が好きじゃなかった。

良太が予め用意していた返事をしようとすると、


「なぁ、良太」


卓と直の交渉を遮る形で荒木が声を掛けてきた。


「後にしてくれないかな」

「こん中におかしなやついねぇ?」


しかし、チーム作成のために人間の取り合いをしている卓とは別に、初めからチームを作る気がない荒木は、最初から、卓、そしてそのチームに入った人間を眼中に入れていなかった。

だからこそ、そのことに気付いていた良太は、場の空気が悪くなることに表情を歪める。しかし、荒木はお構いないしにその事を口にしてしまった。


「なんで今日休んでる三人がいるんだよ」


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