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次まで

追い付いてきた荒木に良太は余計なことを言わず、もう一つの現場に二人で近づいていく。走ることはしない。当然だ、卓の話では小塚博文は閉じ込められているはずなのだ。ところが一年生の教室の扉は全て解放されている。


「これで決まったな」


それでも良太は全ての教室を廊下から見て回った。


荒木はその行動にはついて来ず、廊下の壁に設置されている椅子に座り様子だけを見ていた。良太が戻ってくると、


「気は済んだか?」


「まぁ」


緊張感のない良太の表情に荒木が気付く。


「なんだ?」


「え?」


「何かあっただろ?」


「あったというのとは違うけど、違和感がある」


「違和感ねぇ。んなもん、最初からありまくりだろうが」


「そうだけど、その中での疑問っていうのかな」


「まぁいい、言えよ」


投げやりに近い言葉だったが、答えが出ない疑問にもしかしたら荒木なら気付くかもと尋ねてみた。


「監視している犯人がいるなら、どうして全員に瞬間を見せないんだろう?」


「はぁ? 瞬間?」


濁した言い方にすぐに気付かなかった荒木だったが、気付いた時表情は強張った。

だけど、と荒木は整理する。


「いや、まて、最初に見ただろ?」


それは『裏かくれんぼ』というゲームが始めって最初に起きた出来事でのことだ。


「でも、あれはあくまでフィルターを通しての事で、直接的には目で見ていない」


再び荒木が考え込む。


「……、現状見ているのは二人……。っ!? 尚更あいつらが犯人だってことだろうがっ!」


その答えに良太の表情は変わらない。


「本当に二人だけなのかな?」


イラつきのあまり荒木は舌打ちをした。これは良太に対するものではなかった。普段柴崎薫に抱く面倒くさい存在に自分自身がなっているからだ。全ての答えを他人の口から出してもらわなければいけない、それは他人に操られているのと変わらない。それを荒木は嫌いであり、待ってもらっているこの状況も嫌いだった。なおかつ、他人にそのポジションを取られ、それに甘んじている自分が楽しいと思えることもさらに感情を高ぶらせた。


だが、その感情を荒木は自身で跳ね返した。冷静に今まで起きた事情を思い起こし、良太がいる答えへと辿り着いた。


「あー、そうか。なるほどな」


今まで味わった事の無いほどの気分に荒木はまるで、長距離のマラソンを走りきったようなすがすがしさで満ち溢れる。


「体育館の二人か」


もう一つ映像でしか見ていないが、死者の現場を見ている。その時に映像に写っていたのが、真壁信也と柳生武だった。あの時の映像では誰か分からない血液が写り込んでいたが、二人の慌てた様子からもう一人誰かが死んでいる。だとしたら、真壁と柳生もその現場を目の当たりにしている。


そうなれば、


「ちょ、ちょっとまて」


そこまで辿り着いて疑問が疑問をよんだ。


可能性としては怪しい人間が四人になる。ただ逆に、三階にいる蒲田卓と伊藤典和の疑いに疑問が浮かぶとしたら、訳が分からなった。


そこまで辿り着いたが荒木の脳は止まらない。


「……全員か」


そこで千鶴の提案が思い起こされた。


「どっちにしても、一度生きている全員を集めないといけない」


「面倒くせぇな」


そういいつつも、荒木の立ち上がる姿は軽いものだった。


「状況からすると単独行動は危険だな」


「閉じ込められたら意味がないしね、できるなら全体行動が一番理想だろうけど、まぁまず難しいだろうね」


喧嘩、もその理由の一つだったが、根本的に恐怖を味わった存在がいる限り安全だと思われている教室から出すのは難しいだろう。


「二人ぐらいなら力づくでも出せるぞ」


そこは自分の役割だろうと協力関係を提示する。


性格的にそれを良太は苦笑いで否定しようとした。その結果荒木からなんて言われるのかも予想して。


しかし、その言葉を口にする前に荒木の視線が違う方向に向いている。目を見開いていることから、新しい何かが起きていることが暗示された。


良太も慌ててその方向を見た。


そして、良太と荒木にもその時は来た。


白い十字と赤いカウントダウン。


鐘の音。


そして、自身の名前だった。


「なんで俺の名前が……」


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