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結託の条件

すぐに荒木は問いただしたくなる。言っていることがさっきと違うからだ。だが、それも我慢した。


「それは武雄と上杉、平田勝に斉藤和也」


今度こそ荒木は尋ねた。


「なんでだ? それに斉藤和也なんていたか?」


「武雄と上杉に関しては性格的に、事態が起きてから行動してないっていうのがおかしく感じる」


「それはなんとなく分かるな。仮に俺が疑ったからなら余計だな」


相沢武雄と上杉幸助は普段なら荒木と行動を共にしていることが多い。仮に欠席をしていなかったら、おそらくそうなっていただろう。しかし、荒木に疑いを掛けられ、共に行動しなくなったとしても、間違いなくじっと教室にいることはしないだろう。それこそ、邪魔さえしかねない。


「で、荒木が知らないって言った和也だけど、普段から一人でいることが多いし、友達と呼べる人間がいない」


「随分安易な理由だな」


「いや、『裏かくれんぼ』が始まって教室が出て行った中で、一人で出て行ったのが気になってはいたんだ。普段の和也の行動ならたぶん、その場から動かないで存在感を消す」


「消すっていうか元からないだろ。俺マジで知らねぇし。まぁ、そう考えれば逆恨みって理由で俺たちをこんな目に合せるぐらいの憎しみはあるか」


「ああ、いや、性格的に考えればそれもないような気がする」


「はぁ? どっちなんだよ」


「正直、和也は臆病な人間だから単純に人が集まるところから逃げただけな様な気もしてる」


「念のためな……」


そこは誤魔化して良太は苦笑いをするしかなかった。


「最後は平田だな」


「理由は和也と同じなんだけど、唯一性格が全く分からない」


「むしろそこまで知っているお前がキモいけどな」


それに関しては沈黙をするしかない。


「まぁ、いいか。全員集めるならそいつらは警戒するってことだな」


「まぁ、不自然にならない程度にね……。それで、」


「ああ、今度は俺な」


良太からすればここからが本題だった。欠席組が教室から一度も出ていない次に教室から出ていないのは良太だった。それは人の行動基準を把握できるのに対して教室から出て行った行動を把握できない。小さな情報は景山豊から得ているが、不十分。それに全員が集まった場合、一番嘘や誤魔化しをする性格をしているのが荒木だった。


「校長室と放送室に何かあった?」


荒木は疑いが掛かるような間を開けずに答えた。


「映像と繋がることは何もないな。映像が流れてから考えても、あれは録画したんだろうな。放送室も同じだ、俺が荒らす前も普通だった」


「荒らす?」


「あそこには隠れるスペースがあるからな」


「ああ、なるほど」


情報としては十分だった。


そして、荒木が何かを隠していることが判明した。


質問に関する間は完璧なまでに普通で違和感などない。それでいて、この場面で嘘ではない、聞かれていないことには答えないという誤魔化し。それに気付いたのは感覚としかいいようがなかっただろう。


仮に荒木が答えた事だけが事実だったならば、当時の事を思い出し犯人に繋がる可能性を良太に預けた。しかし、そうしなかったのは、それよりも隠し事が念頭に置かれたためだ。


良太自身それを言葉では表せなかったが、それはなんの問題もなかった。


それに隠し事の理由を良太は理解できた。おそらく、何かが起きたときに起死回生の切り札か何かだろう。良太の性格からもそれは咎めることができない。


むしろ、良太が荒木に頼もうとしていたことが頼みやすくなったことに、気が楽になる。


「それじゃあ、頼みたい方だけど」


その続きだけは荒木にしか聞こえないよう小声になった。


「今まで通りでいてほしい」


その質問は頭の回転が速い荒木でも理解できなかった。


それを察し、良太は言葉を付けたす。


「周りの反応だけだけど、俺は直と一緒にいる」


「ああ、なるほど」


今度は荒木が十分な説明だと良太と同じセリフを呟いた。


直とは真逆ではあるが、新しく荒木との結託がなされた。


次には、少し時間が掛かった事に急ぎ早に荒木が本来の行動に戻る事を提案する。長くなればなるほど、教室に戻った時反応は疑いに近づくためだ。


直と違いこの二人が長い時間一緒にいるのは違和感が残る。良太も了承し、本来の目的であった。クラスメイトの惨劇現場へと二人は階段を見下ろした。


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