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疑わしい存在

 階段の近くまでそう距離は離れていなかった。それでも完全に人の気配が消えるまで荒木修也と加瀬良太は一言も発しない。良太は特に話がなかっただけなのだが、荒木の方はというと少し違った。


「良太」


良太は感情もなく荒木に視線を向ける。


「現状をどう見てる?」


とてもアバウトな質問だった。


良太は足を止め静かに考える。実の所、喧嘩を止める要因になった良太の推測は確証なんてものはなかった。もし、クラスメイトの中に裏切り者がいないという推理が外れていれば荒木を疑い、嘘や誤魔化しをした方が良い。しかし、良太は元から推理をしていない。して見せたのは架空の敵を作りクラスメイトに共通の敵を与えるという戦略だった。


それで争いはある程度そがれる。


だから、荒木の質問にどう答えるべきなのか考えなければいけなかった。


その思考している時間が掛かったためか、荒木は急かすように質問の意図をくみ取れるまでにヒントを出した。


「教室で言っていたことだ。なんでお前はあそこまで言いきれた」


ああ、と良太は声を漏らした。その時点で表面的な部分ではなくもっと根底にあるものに関しての探りを入れられていると気付く。


気付いてなお、良太は薄っぺらい答えを言った。


「敵は一人の方が良いでしょ?」


これが日常の出来事であれば荒木は笑っただろう。しかし、不可思議な状況に置かれ非現実的な状況下ではそれは怒りの矛先を受けるものだ。


一瞬荒木の表情が怖いものになる。


だが、荒木修也と言う人間は根本部分が馬鹿ではない。喧嘩を止めるためだったとしたら、今その火種を作るのは明らかにおかしい。そして、そういう部分で加瀬良太という人間は信用できる。


ではなぜ? という部分を荒木は瞬時に考える。


『監視カメラ』


答えはすぐにでた。今も見られているのなら迂闊な事を言って『犯人』である人間に気付かれてはいけなかった。


急激に荒木の態度が変わってしまう。態度自体は自然なものだったが、この不可思議な状況で自然体、さらにいえばこのタイミングでの普通は違和感が強かった。

それに対し良太は微笑んだ。


「たぶん、意味ないよ」


「あ?」


「本当に監視されているなら、この中で隠し事はできない。それに、見られていることを自覚して行動するなら誰とも連携が取れなくなる。そうなると一人で全てを解決しないといけなくなる」


おそらくそれは無理だろうと良太でなくとも結論付けてしまっている。それは荒木も同様で、嘘や誤魔化しがきかないならと元通りの態度に戻した。


「なら、どうするんだよ」


おそらく荒木が今後、共に行動するというニュアンスを含んだ質問をしたのは初めてだろう。ようやく、良太は荒木修也と人間に可能性を感じる。


「少し腹割ってもらってもいい?」


良太の視線が力強い、普段話していても目が合わされることが少ないからこそ、真剣なものだと荒木は感じていた。だから、自身の疑いを持たれては面倒になると普段学校では見せた事の無い真面目な態度で返事を返した。


「そ、じゃあ。俺が分かっているというよりも、気付いたことと、可能性を先に言うよ」


「まて、ここでいいのか?」


荒木は周囲を確かめる。今話をしているのは三階の踊り場だ。声量で言えば自分達のクラスに声が届くことはないかもしれない。しかし、どこで誰が見て聞いているのか分からない。加えて、監視カメラの存在も考えるならば少しでも気付かれない可能性のある場所に移動した方が良いのではないかと考えられた。


「別にいいよ。さっきも言ったけど監視カメラの存在はどっちにしても確認できなかったし、俺たちに気付かれないように設置しているなら探すだけ無駄。数も分からないし。それに教室から出てきたのは、立花さんが言った通り一度全員を集めて、情報をまとめる必要がある。だったら、俺の話はいずれにしろ皆に話す」


ここで荒木に疑問が浮かぶ。


「だったらなんで今話す必要がある」


ここでは荒木は考えるのを止めていた。これがもし柴崎薫だったら、真意から何から何まで荒木が考え、整理しなければいけない。だが、本質事態を理解している良太なら考えるよりも答えを求めた方が早い。


「まぁ、そうなんだけど、もしまた閉じ込められたら話す機会がなくなるかもしれないし、それに頼みたいこともあるから」


またも疑問が浮かぶが効率を考え今度は何も言わなかった。


それに良太は納得し、話を戻した。


「憶測でしかないけど、怪しいと思う人が四人いる」


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