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指揮権

「ありえない……」


そう言ったのは蒲田卓だった。


その数秒後、卓と伊藤典和の二人だけが立花千鶴から距離を取り警戒心を露わにした。


「博文は一年生の教室で閉じ込められたんだっ!! それに郁も一階のっ……防護扉に……。だからっ、二階から一階に行ってまた三階に上がってくる時、何もないなんてありえない!?」


教室にいる全員が千鶴と古河愛を疑心と警戒で見る。


「な、何を……」


自身の失敗を暴露したばかりの千鶴は弱弱しく反論するまでの余力を見せられない。その中で手助けではないが、千葉俊介は思いつく事を尋ねる。


「反対の昇降口側の階段から昇ってきた可能性は?」


嘘。千鶴はそれを吐くことはできた。だが、結果的に遠回りをする形の中で、誰かに見られる可能性は遥かに高い。もし、今いるメンバー以外がその事を告げたなら、状況は現状より悪くなる。


千鶴は助けを求めるように愛を見るが、怯えたように首を振っただけだった。この瞬間嘘すらも選択肢から消える。だから千鶴も同じように首を振る事しかできなかった。


誰も何も言えない。


沈黙の中、本来いるはずのない人間の一人である相沢武雄が初めて動きを見せた。


「ほらよ」


厭味ったらしく荒木修也にガムテープを投げつける。


「疑わしい奴はそれで縛るんだよな」


荒木の怒りの矛先は完全に変わる。しかし、自分で起こした行動を否定も肯定もこの場面ではできない。


ビィイイとテープを剥がした。


「言われなくてもな」


自然に千鶴と愛を囲むように、荒木修也、柴崎薫、朝倉正吾、相沢武雄、上杉幸助、景山豊で円を作る。


「お、おい!」


中断した喧嘩から予想していなかった展開に感情が追い付いていけず、笹倉直の停止を掛ける声も半端なものだ。


「ひ、ひろちゃん」

「これはしょうがないでしょ。とりあえず、縛っておくだけだし」


小池エナ、渡辺美紘、も何もできない。


「止めなくていいの?」

「どうして?」


何もせず、ただ疑念を抱き、傍観者に加藤梢と千葉俊介。


「うそでしょ……」

「ま、まってよ」


二人の声に誰も耳を貸さない。


「じっとしてろ、縛るだけだ。とりあえずな」


優しくも冷たい声だけが荒木から掛けられる。


そして、残された本来いるはずのない最後の一人、佐々木鏡花だけが別の行動を取ろうとしている人間に気付く。


「どこに行くの、加瀬君?」


加瀬良太。不思議と行動の中心人物となる人間に良くも悪くも目を付けられている。


「見てきた方が早いから」


雰囲気がいつもと違う、投げやりにも似たその言い草。この中で加瀬良太という人間の変化に気付いたものは何人いただろうか。


「良太、俺も行く」


その内の一人である直が声を掛けた。


「別にいいよ。ここにいて」


良太はエナと美紘を一瞥してから教室の扉から出て行った。しかし、直はその意味を理解していない。


「ったく」


だから、拒否されても行こうとした。


それを意外にも良太が苦手とする美紘が、直の服を掴み良太の意図をくみ取った。


「ここにいろって」


そして、良太の行動によって変化は別にも起きる。


「笹倉、俺が行く」


ガムテープを武雄に投げ返し荒木は良太の後を追った。


「は? あ゛? どうすんだよ」


突然の手に入れた指揮権に、円を囲った数人と目を合わせる。だが残念なことに、行動を起こす中心人物は卓しかいない。だが、卓はすでに自信をなくしすでに自分自身の判断を疑っている。


よって、


「疑いが晴れるまで皆で見張ればいいだろ。だから縛らなくてもいい」


この教室の指揮系統は直に委ねられた。


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