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共闘?

荒木修也が詰め寄るように良太に近づいた時だった。


「ひっぃ!?」


朝倉正吾が尻餅をついて悲鳴を上げ、教室内が一気に警戒心で溢れた。


『何かが来る』


正吾の視線だけでそう解釈するしかなかった。五組のクラスの廊下はトイレの壁に挟まれ四組のクラスを通り過ぎない限り先は見えない。校内全体が閉じ込められてさえいなければ避難経路から一番近い分逃げることはできたのだろうが、それができない以上教室のどちらの扉から出ようと結果は変わらない。


ばたばたと走って近寄る足音の影が現れる。


その正体は蒲田卓と伊藤典和だった。


その瞬間、安堵した者が数名、さらに後ろから何かが来るのではと、そのまま警戒していた者が数名、現れた二人の表情から不穏を感じた者に別れた。


正吾が立ち上がり、何があったと質問をする。


誰もが卓が細かい分析付で説明するものだと視線を送るが、その表情は憔悴と恐怖に襲われていてとても声を出せるものではなくなっていた。


良太と荒木が顔を見合わせる。考える先は同じ、二人に何かが起き逃げてきた。じゃあ、何が起きたのか、それを知らなければならない。


荒木が表情を怖いものにし近寄るのを良太が片手で止める。怒りはこない。これは単純な立場と方法の違い。役割のようなものだった。


「典和何があった?」


典和も卓と同様な状態だったが、加えて動転しているのも窺えた。それが返って質問への単純な反射行動になる。


「あ……、ああ……。ひ、ひろふみ……が、教室……閉じ込められて、なんか、煙がでて、みえなくなって、俺たち、そこから離れて。そしたら今度は郁が……かおるが……階段の、扉が……扉に、急に重くなって、俺たちの力じゃ持ってられなくて、郁が通る時に離しちゃって、か、郁が、は、挟まれて! どうしたらいいのか分からなくなって!」


事態を見ていないほとんどが説明のほとんどを理解できなかった。


良太はもう一度卓を見た。補足を期待したのだが、ぶつぶつと何かを言っている。


「僕のせいなのか? 答えを間違えたから? だから二人が? はは、あんなの分かるわけないじゃないか。ただ、この状態から抜け出そうとしていただけなのに。何が間違っていたんだよ。分かるわけない。分かるわけないよ」


どうみても期待できない。


どうすればいいのか思考が静寂を呼んだ。


「あ、また誰かくる」


再び足音が聞こえてくる。


二度目ともあり、教室内と正吾の反応は薄い。実際そこに現れたのは、立花千鶴、古河愛の二人で得体の知らない化け物などではなかった。


千鶴はバツの悪そうな表情で愛を引き連れていたが、廊下に佇む卓の姿に一切の表情を誤魔化した。


「なにがあったんですか?」


その質問には誰も答えらず、視線が卓と典和にいく。それで千鶴は察した。そして千鶴は誤魔化していた部分を修正しようと率先してクラスをまとめようと動き出した。


「でもこれだけ戻ってきているなら、どうでしょう。一度クラスに皆を集めた方がいいのではないでしょうか?」


まるで選挙をする政治家のような立ち振る舞いだった。


「黒板に書かれていることも気になりますし、散らばった方々の情報を一度集めた方が分かることもあると思います」


それは誰もが納得した。


千鶴もどこかで手ごたえを感じ、先ほどのチーム崩壊の失敗が心なしか消えていくのを感じている。


しかし、それを憔悴し佇んでいた卓が留めた。


「どこから来た?」


「はい?」


簡略されすぎた質問に理解が追い付かず、若干の怒りを交えながら千鶴は狼狽える。一度は見放した卓にチームを崩壊させてしまった失敗を突いてくるものだと思ったのだ。


「どこからって、校内以外ないでしょう。それが何だっていうんですか?」


出来るだけ情報は与えたくない。与えてしまえば失敗を気づかれてしまう。千鶴は卓が優秀な人間だと認めている。だから、委員長と言う立場でも素直に従うことができた。しかし、今となってはただの敗北者。それは千鶴も変わらない、だが気付かれなければ同じにはならない。


「そんなことよりもどうしますか、できれば――」


卓の質問は他の人間からすれば意味が分からないことだ。それに普通ではない卓の状態の言葉に誰も耳を貸さない。おそらく全員が卓の失敗への充てつけ程度にしか見ない。だから無視してしまえば、


「他の奴は?」


その質問の瞬間、視線が千鶴に集まった。


教室内でチームを組んだ以上誰もが知っている。千鶴のチームが一番人数を有し、男女ともにいたはずだ。孝樹を覗いた男子は典和の説明の中に出てきているため、対象外だろうが、それならば女子の姿がないのはおかしい。


「そ、それは?」


千鶴はちらりと俊介をみた。


だが、すぐに視線を戻し考え始める。二階で起きた事実はどこかで見ていない限り誰も知らないはずだ。


では卓と典和はどこにいた?


それを千鶴は知らない。


見られていた?


思考がフル回転で働くが正確な答えが見つからない。


そんな悪意とは裏腹に、


「まさか……死んだ……のか?」


憔悴していた卓の言葉に教室内に緊張が走る。


「え?」


ところが千鶴だけが予想外な質問に思わず声が出した。

千鶴と違い、今の卓には細かい戦略やどうでもいい争いに思考を回す余裕はなかった。だから、質問は純粋な状況確認でしかなかった。


ようやく千鶴が冷静さを取り戻し、質問に答えて軌道修正をしようとした。


だが、


「卓の最初の質問に答えてもらってもいい?」


誰もの予想を反して今度は良太がそれを止めた。


「なんなんですか?」


「したいことは分かるし、さっきの提案も賛成だけど、また(・・)チームを作るつもりなら勝手にやってほしい」


偽善者ゆえに悪意に敏感な良太は、千鶴の行動に負荷を掛けた。


「珍しく怒ってるな」


誰にも聞こえない声で直がボソッと口にする。


「な、何を根拠に……」


「おいっ、時間な無駄だ、さっさと答えろよ」


チームがなくとも利害の一致で結束はできる。それが現状の荒木と良太の関係だった。


「い、言いますよ!」


「念のため、嘘と誤魔化しは止めた方がいい」


そして、別の立ち位置(ポジション)から俊介が追い打ちをかけた。


苦い顔をしたのち、脱力したように千鶴は素直に敗北(チーム崩壊)を認めた。


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