チーム崩壊
約三年ぶりの続きをUPしました。
詳しは活動報告にまとめるとして、出来るだけ頑張りますので、
お付き合いいただけたら嬉しいです。
各集まりが各々の答えを絞り出している頃、取り残された立花千鶴のチームがいる教室で変化が起きていた。
いざこざは、――数分前。
進展のなさと閉鎖空間の中でさらなる閉鎖。
「もうっなんなのよっ! スイッチは見つけるし、爆発音は聞こえるし、また閉じ込められるし、全然意味ないじゃんか!」
それが思ったことをすぐに口にする阿部奈津美の不満で亀裂が入る。それは誰しもが抱えている不満であったが、孤立というチームを組むことで生まれた恐怖心が口を閉ざさせていた。だが、一人がそれを口にすることで、溜まっていた不満がぶち撒かれた。
「うるせぇって」
最初は小さな不満だった。
「はぁ? 誰、今言ったの?」
睨みに反応したのは熊谷志保だ。
「皆我慢してんだって、あんたばっか文句言ってんなよ」
「これ以上どれだけ我慢しろって?」
じわじわと二人の距離が詰め寄られる。
「ちょ、ちょっと二人とも今喧嘩したって仕方ないでしょ!」
当然割って入ったのは、千鶴だった。
しかし、
「だいたいあんたの指示でこうなってるんだけど!」
これには冷静だった千鶴の表情もこわばる。しかし、ここで感情的になってはいけない。すでに蒲田卓が見せた失敗は己の感情を抑えられなかったのが原因。今、ここで同じ事を行えば同じ道を辿ってしまう。
「分かりました。それに関しては謝ります、だけど――」
だから、謝罪をすることでこの場を乗り切れればと考えた。確かに、過去の場面と境遇で蒲田卓が同じ事をすればチームは存続した可能性はある。誤算があったとしたら、すでに不満が拡大し、頼れる存在が千鶴の手から零れ落ちているということだった。
この場に頼れる者がいないと理解してしまっている不満が支配する場では、自身の怒りを鎮められても他人の感情までも鎮めることはできない。
「あんたさ、少しは自分で考えるってことすれば? だいたい我慢って何を我慢したって、スイッチ見つけたら文句、順番を決められたら文句、それのどこか我慢?」
「さっきから、あんたあんた、って名前あるんだけど! そもそも何も見つけられなかった奴に言われる筋合いないし、見つけただけでも役に立ってんじゃん、それを何もしてない奴に文句言われる筋合い無いんだけど!」
間にいた千鶴を跳ね除け喧嘩は仲裁役をなくす。バランス崩した千鶴をおろおろするしかない古河愛が支え、波真奈美、萩原祥子はもう復元しないチームに早々に切り離しを考える。すでに千鶴の統率力は謝罪したことで完全になくなっていた。
その最中、
「望、笹倉君の所に行こう」
「え、あ、うん」
抜け駆けのように陰で話された発言が、さらに場を悪化させた。
睨みは二つから来た。
喧嘩中の熊谷志保と阿部奈津美だ。
「ナニ勝手に決めてんだよ!」
ただし、口にしたのは志保だけだった。
喧嘩しながらもお互いに『次』は当然考える。
現状、多目的ホールで遭遇した人数から考えられるチームは五つ。
不良とされる荒木と柴崎のチーム、付き合っていると噂の千葉俊介と加藤梢のチーム、欠席していたはずなのにいる『裏切り者』の可能性が高いチーム、最初の段階で省かれた個で動いているであろう蒲田卓、そして、笹倉直がいるチームだ。
不良、恋人、裏切り者が論外だとされれば、その中でも二つに絞られる。その中でも熊谷志保は蒲田卓に嫌悪感を抱いたことから、選ぶ道は一つしかない。
それに気が付いている奈津美は敵対する志保さえいなければいいと考えるのは自然なことだった。睨んでしまった視線を消し、すぐに立ち位置を変えた。
「勝手に決めるもあんたが来なければいいだけじゃん。私達が行くからあんたはいらない、ね。紀子?」
「――えっ!?」
蚊帳の外でただ成り行きを見守っていた田辺紀子は、話を振られると思っていなかったためにまともな返事を返せなかった。
「ほら多数決であんたはいらないって」
勝手に進められるが多勢に無勢、今さら紀子一人を取り込んだところで志保の立場は変わらない。普段の学校生活でも基本二人で行動している加奈と望、状況次第で誰かを引き連れている奈津美、場の雰囲気に流される紀子では味方に付けられない。この状況下では加奈と望の二人が優位に立っている、そしてそれをいち早く気づき取り込んだ奈津美が有利だった。
「は……、はぁ、勝手に――」
「とりあえず、直には私が話すね」
志保は無視されることで存在事なかったことにされた。
これでは何を言ったところで、喧嘩腰の会話すら成り立たない。掴みかかってもそれは変わらないだろう。ふいに元々の千鶴のチームが目に入る。しかし、すでに自分から切り捨てたチームは志保の動向など気にしてもいなかった。
完全なる孤立。
感じ取ってしまった瞬間、よろよろとふらつきながら志保は後退し、壁にぶつかると静かに動きを見せなくなった。
それを合図するかのタイミングで、ガチャリと閉鎖から解放される。
その勝利に浸りニヤついている奈津美は普段目立たった行動をしない麻生望が、ごくごく小さな動きで鈴木加奈の耳元でささやいたのに気付かなかった。
「…………加瀬君の所に行こう」
思わぬ提案に思わず大声で返事を加奈はしそうになった。
普段から小さい声しか発しなかった望みだったが、加奈は奈津美と紀子に聞こえるのは良くないと感じ取り、二人に気付かれない距離を保ち小声で尋ねた。
「違いなくない?」
加奈と望が二人で行動するのと同様、良太と直が普段から行動を共にしているのは周りも周知している。だから、どっちに提案の話をしても違いなどあるはずがなかった。
しかし、望はぶんぶんと首を振る。
望は良太と直で行われたチーム間での話を知らない。だから、厳密には直のチームに良太がいない事など知り得ることなどありえなかった。当然、望も直のチームに良太が入っていると思っている。
しかし、望は頑として譲らなかった。
「……わかった。でも、たぶん一緒にいるから、奈津美たちと同じ行動になるよ」
この提案がいずれ違いを生むことになるなど誰も予想していない。それは望ですらそうだ。この提案は引っ込み思案である望が人間観察で人を見た結果、人が人でいられる可能性を加瀬良太という人間性に賭けただけなのだから。
そして――。
その可能性を摘む残酷なゲームは現在も続行される。




