二番目の犠牲者
プロローグの段階では残酷な描写はありませんが、
いずれ描写される可能性がありますので、年齢制限を確認の上読んでいただければ幸いです。
たった一日だった。
正確には二十時間と二十四分。それだけの時間が過ぎただけなのに、裏かくれんぼのステージに立たされた二番目の犠牲者は八十七時間十九分という時間を過ごした。
一人しかいない空間では精神的な疲労の衰弱は激しく、二番目の犠牲者はもうまともな思考は持っていなかった。
唯一、口から出ていた言葉。
「……だれか…………だれでもいいから」
何度も繰り返し、何度も力なく呟き続けた。
もう自身で救うことのできないと判断したのはいつの事だったか、どうして、こんな状況になってしまったのか、自分が誰なのかさえ忘れつつある。
限界だった。思考で限界と脳裏に思い浮かべてから数時間の後、闇雲に歩き続けていた脚が力なく折れる。
それが本当の限界だった。
床に倒れ冷たさで束の間の間正気に戻された。
そのおかげで全てを諦められた。これ以上は辛いだけ、諦めてしまえば最悪の結末を受け入れられる。
久しぶりに二番目の犠牲者から笑顔がこぼれた。
次いで声が出る。
「あは、あははははははははははははっっっ!」
狭い道に反響した声が響き渡る。
合図……。
犠牲者が――、
人間が――、
精神が――、
壊れる直前の合図。
二番目の犠牲者は静かに瞼を落としていく。全てが閉じたとき、自分は解放されるのだと信じ、二度と目を開けなくて済むものだと思い、安息を手に入れる為に眠りにつこうとする。
この瞬間が、二番目の犠牲者が幸せを感じられる最後。
だったはずなのに、二番目である犠牲者にはそれが許されなかった。暗闇が支配したはずなのに、意識はつなぎとめられている。
再びガタガタと身体が震え始めた。
終わっていない、終わらせてくれない、開けたくない、見たくない、知りたくない。そう何度も思った。それでも、行動を起こさなければこの恐怖は永遠に続く。
二番目の犠牲者の瞼が意思とは別に静かに持ち上げられた。
「……ああ、あぁ、そんな、まだ」
――現れていた。
それが存在するたびに恐怖に襲われ、何度も押すのをためらった【スイッチ】が現れていた。
手は伸ばされる。
押すしかないのだ。
選択肢など始めからない。
カチと静かに音が鳴る。
押した。
押してしまった。
その瞬間から、二番目の犠牲者は次のステージへと駒を進める。
「…………だれか、だれでも、いいから…………見つけて……」
現在進行形で書き続けていく予定なので、矛盾が生じる場合があるかもしれません。(あらすじも変わる可能性があります)
最終的には編集で直しますが、お気づきな個所があれば連絡お願いします。
細かな進行状況は、活動報告の方で確認お願いします。
(UP予定などです)
では、しばらくの間ですがお付き合いの程お願いいたします。