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偶然


『今日のスケジュールは?』


『あぁ、午前中は海外支社の計画案の確認。午後は取引先の社長と昼食を兼ねて面談だ』


『なら、夕方には帰れそうだな』


赤信号で止まり、直樹がこちらを向きニヤリと笑う。


『そんなに雪ちゃんが心配か?』


『馬鹿なこと言ってないで、前みろ前 信号変わったぞ』


直樹の冗談を聞き流していると、会社が見えてきた。

緒方ビル 21階建ての本社ビル。

聞けば、初代緒方屋から現在に至るまで建物こそ変わったが建っている場所は変わらないそうだ。

江戸時代から、代々受け継がれてきた土地だ。

大事にしなければならない、というのが先代社長達の意向らしい。


直樹が会社の駐車スペースに車を止める。

受付に挨拶し、エレベーターで最上階へ そこが俺の仕事場だ。


高級そうな革作りのイスに腰掛け、直樹から書類を受け取り目を通す。


―――


『こんなもんか』


『終わったか、お疲れさん』


直樹に書類を渡し、身体を伸ばす 朝からかれこれ3時間ほど座りっぱなしだったから疲れが溜まった。


『ちょっと疲れたか、昼食まで2時間以上あるから会社の中でも歩いたらどうだ?』


直樹の好意を素直に受け取り、一回の自販機まで歩く。

エレベーターを降りて、少し歩くと見慣れないドアがあった。


『そんなとこにドアあったっけ?』


不思議に思いながら、ドアノブを捻る。

呆気なくドアは開き、地下へと続く階段が見えた。


『地下室?倉庫かなんかか?』


暗い階段を降りてゆくと、薄暗い部屋に出た。

電気は…ないのか。


開けた入口から差し込む光を頼りに歩く。

―ガタッ

しかし、足元の窪みに躓き 前方の棚を巻き込んで転んでしまった。


『うわっ!?』


棚から本やら骨董品の置物が落ちてきて、床に散らばった。


『あぁ…しょうがない』


ついてないなと悪態をつきながら、拾い集めていく。


すると一つの巻物に興味が沸いた。


『表紙はかすれて読めないな、中は…』


案の定、中身もほとんど読めなかった。

しかし一部、気になる部分を見つける。


『先代達の名前…と日付?あとは…これは血印か?』


首を傾げていると、巻物に ぽたり と赤い染みが広がった。


『さっき転んだとき、切ったのか…後で処置しとかない…と?』


血が染み込んだ巻物が微かに 光を帯びはじめた。

次第にそれは大きくなり、俺と部屋を光で満たしていく。


『な、なんだ?』


突然のことに困惑していると、光が一気に拡散し俺を飲み込んだ!


『うぅ…?』


しばらくして瞼をゆっくりと開けると そこには。

『目を覚ましたか!中々起きぬからちょっぴり心配してしまったのじゃ』


推定 10歳くらいの浅紫色の着物を着た女の子が立っていた。


『だ、誰だ?』


『誰だ、とは失礼じゃのう わらわは 魅姫 お主の先代に付き従った 鬼神 じゃ』


は?鬼神?先代?

わけがわからず、目を白黒していると 魅姫 がずいっと顔を近づけた。


『しかし、わらわを呼び起こしたということは魔や鬼でも出たのじゃ?』


『待て、そんなに一辺に言われてもわからん。とりあえず場所を変えよう』


『そうじゃの、ここは埃っぽいから嫌いなのじゃ』


と二つ返事。

魅姫を社長室まで連れていくと慌てて直樹がこちらを振り返る。


『帝、もうすぐ時間だ……ぜ……?』


そのまま直樹が固まってしまった。

魅姫が直樹に近づき不思議そうに眺める。


『変なやつじゃのう、固まったのじゃ』


ニコニコと笑う魅姫。

するといきなり、直樹が魅姫を抱き抱えた。


『かわいい!』


『のじゃ!?』


突然のことに驚いたのか、魅姫が変な声を上げる。

そんな魅姫に直樹がほお擦りする。


『なんだなんだ?迷子か?名前は?』


『子供扱いするでない!わらわは鬼神の姫たる魅姫なのじゃ!』


ポカポカと直樹にパンチを入れる魅姫。

一旦直樹から魅姫を取り上げ事情を説明した。


『なるほど…にわかには信じられないな』



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