表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

第4話 旧校舎・暗闇の大講堂③

 旧校舎は一種の館のような外見だった。

 しかし古い建物ということもあり壁にはひびが入っている。そしていくつものツタが這っている。もし夜であったなら、さぞかし妖しい雰囲気を醸し出していたことだろう。

 旧校舎の中へと足を踏み入れる。中には灯りがなく窓は汚れで曇っていることもあり少し薄暗い。外から入ってくる弱い光だけが校舎の中の構造を示している。

 ここでわたしは肩に掛けた鞄からあるものを探す。そして、それを取り出しカチッとスイッチを入れる。取り出した棒の先から光が放たれ周りを照らした。

 そう、懐中電灯である。

 光を照らしながら辺りを見渡す。

 入り口の左右には奥に続く廊下があり、正面には二階へ登る階段があった。外から見たかぎりこの校舎は四階建てだろう。その奥にも扉があったのだがそれは錠が掛けられていて通れそうにない。

 床には埃が積もっていて、後ろを見ればわたしたちの歩いてきた足跡がしっかりと残っていた。そしてコンクリートの壁、天井の至るところで塗装が剥がれ落ちている。

 これだけでこの場所、この空間が何年もの間使われていないことがわかる。


「どうする? ここは広いぞ。一緒に探すか? それとも手分けして探すか?」

「手分けして探した方がいいんじゃない」


 時間に余裕がないわけではないが、できればレンちゃんとニコルちゃんが部活から帰ってくるまでには寮に戻っておきたかった。

 もし寮にわたしがいなければ、わたしがどこにいるのか調べられる可能性がある。それ以上に彼女たちに心配させてしまうかもしれない。

 しかしながら魔術の痕跡が感じとれない。ここには何も無いのか。それとも儀式場があったとしても外部に魔力が漏れないように仕掛けを施しているのか。

「はい、これ」と言ってロイドくんに懐中電灯を渡した。


「あ、ありがとう。だが、手分けして探すならおまえも明かりが必要になるだろ」

「問題無し。もう一つ持ってるよ。しかもラジオ付きの大きいサイズ。ラジオの部分は壊れてるけど」


 鞄から取り出した懐中電灯は三十センチメートルほどの大きな物だ。ロイドくんに渡した物より明るく照らしてくれるが、ずっと持ち上げていると腕に少し負担がかかるのが欠点だった。

 重いそれを手に持ち、笑って答えるわたしをロイドくんは訝しげに見る。まあ、それは当然だろう。


「おまえ、それはどういう仕組みだ」


 ロイドくんに渡した懐中電灯とわたしの手にするそれの大きさを合わせると肩に掛けた小さな鞄にはギリギリ入るくらいなのだ。

 しかし――


「おまえの鞄、さっきからずっと空っぽのように見えていたんだが。小さい懐中電灯だけならまだしも二つ合わせて入れておいてそんなことは起こらないだろ」


 ロイドくんはわたしを指さして言う。


「これがおまえの能力か?」


 それは紛れもなく正解だった。


「ふふ、よく気付いたね」


 無邪気そうに笑うわたし。


「わざと気付かせたんだろ」


 ロイドくんは笑わなかった。


「あれ、わざとって分かったの?」

「あからさますぎるだろ」

「うう。まあ、そういうことなんだけどね。バレるとちょっと恥ずかしいな。わたしの能力は――」


 明かそうとしたところでロイドくんにちょっと待て、と遮られる。


「俺が一発で当ててみせよう。外れたら俺が主に使用する魔術を教えてやる」


 そう言って考え始める。

 話し始めると時間がかかりそうだ。同じ場所に長時間とどまることは得策ではないと思いとりあえず奥の扉は後回しにして一階の部分は一緒に探すか探さないか、どちらにせよ教室を一つ一つ一緒に廻っていくことにした。

 それにしても機会を見てロイドくんの戦闘時に使用する魔術を知っておきたかったから、これは丁度いい。正解しても教えてほしい。


「分かった。物体を自由に透明化させることができる能力、もしくは物体の大きさを自由に変えれる能力、かな。だが自由に姿を消させるだけなら鞄は大きいままのはず。おそらく後者だろ。鞄から出す直前に元の大きさに戻して俺に手渡した。これでどうだ?」


 その答えにわたしは無言で胸の前で腕をバツ印に交差させた。つまり外れ。


「そうか、残念だ。じゃあ俺の魔術の教えるよ」


 そう言って手のひらから火の玉を発した。


「炎だ。以上」

「おい」


 ずいぶんと簡単に明かしちゃうんだね。それでいいのか。

 その後さらに加えて説明してくれた。要点だけをまとめるならば、ロイドくんは近距離での戦闘を主としているということだ。腕に炎を集めて直接相手に叩き込むのだとか。

 少し危険性が上がるがその方が自分に合っていると。時には炎を飛ばして遠距離で戦うこともあるらしい。解りやすいだろ、と自慢気に言って締めた。

 ロイドくんの説明(それに雑談を含む)を終えた頃には旧校舎一階東側の探索が終了した。職員室、保健室、そして学園長室らしき部屋があった。

 しかし、どこも変わったことはなかった。放置された机や棚にはどれも埃が被っていて誰かが触った形跡はない。そして魔力の痕跡も感じとれなかった。

 一旦昇降口に戻って次は一階西側を調べに行く。


「結局、おまえの能力ってなんなんだ。まさか物体を自由に消せる方だったとか?」

「それは自分で違うって言ったじゃん。わたしの能力はね、実はその答えに結構近かったんだよ。ちなみに大きさを変えるのはできないから」


 そして次はわたしが説明を始めた。

 能力に名称はないけれど、あえてつけるとするなら『隔離空間』かな。

 いつでもどこでも自由に作り出すことができる異空間。任意の位置に大きさや形を指定して配置するの。

 それは外から中に干渉できず、その逆にしても同様。つまり隔離空間を配置した場所に人が通ったとしてもそれにぶつかるようなことはない。

 作れる空間の限界として体積は合計でおよそ五十立方メートル。数は大きさに限らず三つでそれを超えると安定せずに消滅してしまうんだ。

 そして当然、外界とは隔離されているために空気の出入りがない。つまり人は長時間入れないということだね。

 故に主な用途として倉庫がある。その名の通り中にさまざまな道具を保管して自由に出し入れできる。

 さっきの懐中電灯を一つの例とすれば、ある場所に隔離空間を配置し、そこに保管している懐中電灯を別に作った出入り口から取り出したという仕組み。

 ただしその出入口、どこにでも作れるわけではない。

 まずは隔離空間に直接設置できることは当然として、そこ以外の離れた場所は意外と難しい。うまく接続ができないんだ。

 今は物を出し入れするというイメージから鞄の口が一番安定して作れているんだけどね。これに関しては今後の成長次第でどこにでも作れるようになるかもしれないと思ってる。

 一見便利な能力に聞こえるかもしれないけど、はっきり言って戦闘には向いていない能力だと思う。どんなに強い武器を揃えたとしても自分自身が弱ければどうしようもないから。

 武器を適切に扱う技量は必須だし、武器を出す前に攻撃されたらその時点で終わりなんだよね。

 更に今は鞄の口の大きさを越える物体の出し入れはできないという弱点もある。

 そんな感じで他の魔術師や能力者のように異能の力に頼った戦いはわたしには出来ないんだ。

 以上で説明終了でございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ