表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

渡る異世界はサルだらけ

作者: true177
掲載日:2025/11/27

 赤いカーペットが敷き詰められた部屋は、そこら中に針が浮いているような空気につつまれていた。刀を鞘におさめる従者も、王座に深く腰をかえる初老の王も、みな描かれた魔法陣に目を奪われていた。

 長年の時を経て、ついに召喚の儀式が復活したのだ。先祖代々の魔法書を読み漁り、断片をあつめ、ようやく出来るようになったのである。


「ジョセフ、とくとく召喚せよ。この国の生き死にはこの召喚にかかっておるのだぞ!」

「承知しております、王。ですが、失敗しては元も子もありません」


 末裔であるジョセフは、その魔法陣の前に座っていた。金貨やらバナナやら、古書にある通りの材料をならべ、召喚の時を待っている。

 否が応でも、魔法陣から何かを出さなければならない。何も起きませんでした、と素直に引き去れるとは思えない。


(……だから国が荒廃しているんだ、とはとても意見できない……)


 圧政も圧政、金にモノを言わすプライド高き王である。あとは言うまでもない。

 塩を一面にふりかけ、ついでバナナを中央へ。これで準備は整った。


「……これより、召喚の儀を開始する。古書では、光が天より舞い降りて……」


 ジョセフが言い切るよりも前に、図体だけ大きいシャンデリアを透過して光が差しこんだ。あのお天道様ですら与えてくれない、純真な光であった。

 王も含め、皆が光の柱に意識を持っていかれている。どのような者が登場するのか、期待と不安が交錯している。


 静寂を打ち破ったのは、柱から浮き出たひとつの影だった。


「ウキー! ウッキ、ウッキ、ウキー!」


 はぁ?


 毛むくじゃらな手が空間に現れた。手には皮が剥かれたバナナを持って、その場に踊り跳ねていた。


 世界はひとつだけでなく、ジョセフたちとは違う道筋をたどった星もいるのだ。知能ある人間ではなく、進化が止まってしまった世界も……。


(……あってたまるか! 俺の名声が、未来が、かかって、る……んだぞ!?)


 サルがモンスター討伐に使えるはずがない。むしろ穀物を食い荒らし、とどめの一撃を刺す反逆者、いや反逆動物である。


 王は眉間にしわを寄せていた。小さくまとまった暗愚の目でソレをけなし、白く変わったあごヒゲをさすっていた。


「キーキーキー! ウキッ?」


 何も考えていない目で見てくるな。首を傾げるな。今すぐぶった切ってやる。


 重厚な王のしわがれ声が、王室中にこだました。


「……サル二匹、片づけろ。ただし、魔法陣は壊すな」


 ぶった切られるのはジョセフだったようだ。


 見物にまわっていた従者たちの剣が抜かれた。どれもこれもさび付いており、刃こぼれでまともに切れなさそうだ。長く傷みつけるつもりか。

 どちらにせよ、ここで終わりたくない。ジョセフが愚鈍な召喚士もどきだったなど、歴史に刻まれていい話ではない。


「……王! もう一度だけ……、もう一度だけ、チャンスを……!」


 聞き入れられることは前提にしない。手順にあった通り、金貨を魔法陣の上に乗せた。


 忠実な部下たちは、命令があるまで前の状態を保つ。余命はもう幾ばくも残されていないということだ。


 剣が振りかざされた刹那、淡い青の光が解き放たれた。


 一度目ほどの時間はかからず、光はすぐに魔法陣へと吸収されていく。残ったのは、目をニヤつかせている男だけだった。


 男は、見上げることしかできていないジョセフに向かって一言。


「ここが異世界ってやつだな。まさに、俺の暴れるところピッタシじゃねえか!」




----------




 先人たちが残した文書には、ジョセフたちがたどり着けなかった続きがあった。

『……もしこの手順に沿ったならば、まずサルが出てくるであろう。これは、我々の警告である。正真正銘『サル』しか召喚できない、という警告である……』

サルだらけじゃないかこの世界は

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ