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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第95話 作戦

「みんな、無事!?」


 白い蒸気に突っ込み、ほとんど見えない視界の中、ノンは青い精霊たちに声をかけます。ブレスは大量の水を激突した後、貫通していませんでした。もし、貫通していたのなら森の木々が倒れる音が聞こえるはずだからです。


『だいじょうぶー』

『こわかったー』

『せーふ!』


 どうやら、彼らの水はブレスを防いだようでノンの声に気づいた精霊たちが集まってきました。あのブレスの属性はおそらく『火』。水との相性が悪いのが功を奏したようです。


「よかった……消火活動の方はどう?」

『ほとんどきえた!』

『もうちょっと!』

『たいぼくもぶじ!』

「もう……ん、待って」


 精霊たちは『がんばったよ、ほめて!』と彼の周りをぐるぐると飛び回します。そんな彼らの様子に苦笑を浮かべますが、何かに気づいたように周囲を見渡しました。


「……よし。みんな、消火活動は一旦、中止! 一緒に戦ってくれる?」

『もちろん!』

『がんばる!』

『どらごんたおす!』


 ノンの言葉に彼らは気合十分な様子で頷いてくれます。それを見たノンは不思議と勇気が湧いてきました。


(そうだ、僕一人で戦ってるわけじゃない……みんなも一緒に戦ってる!)


 そう、ノンは一人で戦っているわけではありません。精霊という心強い味方がいます。ここにいる全員が大木を――おうちを守るために(・・・・・・・・・)おうちを守るために必死になって戦っているのです。


「じゃあ、黄色い子たちも一緒に連れてきてくれる? あの子たちの力も必要なんだ」

『わかった!』

「よし、今度は――ぐっ」


 青い精霊たちが大木の方へ向かったのを見てノンは振り返ろうとしますが、いきなり強風が吹き荒れて吹き飛ばされないように踏ん張りました。どうやら、紫色の精霊が作った靄を晴らすため、黒龍が羽ばたいたようです。その影響で白い蒸気も吹き飛んでしまいました。


(でも、作戦は思いついた!)


 あとは精霊たちと協力して黒龍へ攻撃を当てるだけ。ノンは強化された脚力で地面を蹴り、一気に黒龍へと迫ります。


「ッ――」


 まさか自分から突っ込んでくるとは思わなかったらしく、明らかに動揺する黒龍。しかし、彼はすぐに我に返って手を広げた状態で右腕を振るいます。五本の指先には鋭い爪。掠っただけでも上半身と下半身がお別れしてしまいそうでした。


「よっ」


 ですが、テレーゼと幾度となく回避する練習をしたノンは冷静に白い包帯の先端を右側の地面へ突き刺し、一気に縮めます。体重の軽い彼の体は引っ張られ、その場を離れました。


 更にその途中でもう片方の先端を黒龍の胴体へ伸ばします。右腕を振るった状態で咄嗟に動けず、黒い鱗が白い包帯で覆われていきました。


「―――――!」

「うわっ!」


 何か仕掛けてくると判断したのか、黒龍はその状態で力強く羽ばたき、空へと逃げます。もちろん、黒龍の胴体に包帯を巻きつけたままなのでノンも空へと連れ出されてしまいました。


「赤い子、火球の準備! 緑の子は援護しなくていいからいつでも魔法が使えるようにしておいて!」


 魔力循環により強化した声量で精霊たちに新たな指示を出しました。もちろん、その声は黒龍にも聞こえていますがあまり気にしていないようです。いえ、ノンを振るい落とす方が優先だと考えたのでしょう。


(うっ……絶対に離さない!)


 右へ左へ。急上昇と急降下。複雑な空中機動を繰り返しました。ですが、ノンも顔を歪ませながらも必死に耐えます。


「――――」


 そして、痺れを切らした黒龍は地面に向かって一気に急降下を始めます。このままでは黒龍もろとも地面に叩きつけられてしまうでしょう。


(ううん、違う!)


 刹那の思考の中、ノンは黒龍の思惑に気づきました。きっと、地面すれすれで急上昇に切り替え、ノンだけを地面にぶつけるつもりなのです。

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