表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
96/169

第93話 防御

「紫の子たち、僕についてきて! 他の子はさっきの指示通りに動いてね! 僕が隙を作るからどんどん攻撃して!」


 まず、ノンがしたのは大木から離れることでした。紫色の精霊を引きつれて彼は全力で左側へ向かいます。魔力循環によって強化された脚力により、彼は凄まじい速度で大木前の広場を駆け抜けました。


「―――」


 そんな彼を見て黒龍は少しだけ驚いたように目を細めます。子供と侮っていたのでしょう。ですが、すぐにノンを追いかけるように体を反転させます。


(よし、誘導できた!)


 精霊に指示を出している姿を見ていたのか、黒龍はノンから視線を外していませんでした。だからこそ、自分が移動すれば彼もついてくる。そう考え、大木を守るためにドラゴンの顔の向きを変えたのです。


(攻撃は主に赤い子たちの火球だけ。でも、ドラゴンは火に強そうだからあまり効かなそう……頼れるのは――)


「――くっ。みんな、僕から離れて!」


 白い包帯に魔力を注ぎながら作戦を考えますが黒龍が再びブレスを吐こうとしたため、思考を停止させて対処に回ります。ですが、ブレスを相殺できるのは赤い精霊だけ。すぐに紫色の精霊たちを逃がし、ノンは白い包帯を袖口から伸ばしました。


(大丈夫、こんな時のためにこれまで頑張ったんだ!)


 逃げた精霊たちを無視して自分を凝視している黒龍を前に彼は心の中で叫びます。そんな強い気持ちが包帯にも伝わったのでしょうか。魔力が注がれたそれは『任せろ!』と言っているように仄かに輝きました。


「お願いッ!」


 ノンはその輝きを見ながらイメージ通りに包帯を操り、巨大な壁を作り出します。そして、それとほぼ同時に黒龍がブレスを放ちました。


「ッ――」


 巨大な壁となった白い包帯がブレスを受け止め、ノンはその衝撃に思わず顔を歪ませます。彼の魔力が込められた包帯は一瞬で崩れることはありませんでしたがブレスの勢いに少しずつ押され始めていました。もし、少しでも壁がバランスを崩した瞬間、この均衡が崩れてノンはブレスに飲み込まれてしまうでしょう。


(絶対に、受け止める!)


 白い包帯に魔力を注ぎ続け、歯を食いしばります。更に魔力循環の勢いも強め、肉体強化の効果を増幅させました。


「……はっ、ぁ……ふぅ」


 永遠にも感じられたそんな時間ですが、少しずつブレスの勢いが弱まっていきます。それから程なくしてブレスが止み、とりあえずやり過ごすことができました。耐えきったことに安堵し、彼は小さく息を吐きます。


 ですが、休んでいる暇はありません。包帯を壁にしたせいで彼の視界が塞がっています。この後の動きを誤ると一気に劣勢になってしまう可能性もあります。


「――――――!!」


 その時、壁の向こうで黒龍の雄叫びが聞こえました。しかし、その声はどこか苦痛の色が含まれています。


『あかいこ、やった!』

「っ!」


 いつの間にか戻ってきていた紫色の精霊の一体が叫びました。どうやら、赤い精霊たちが攻撃を仕掛け、命中させたようです。その隙に白い包帯を回収し、視界を確保しました。


「――――!!」


 黒龍は赤い精霊たちが集まっている上空を見上げています。精霊たちも大木を守るつもりらしく、攻撃する位置を変えてくれたようでした。更に緑色の精霊も赤い精霊に追従するように動いてくれています。ノンの指示通り、赤い精霊の援護をしているのでしょう。


(やっぱり、あまり効いてない)


 しかし、緑色の精霊によって威力の上がった火球でも黒龍に目立った外傷はありません。あの黒い鱗が火球のダメージを極限にまで減らしたのです。


「ほんと、どうしようかな」


 これは大変だ、と彼は引きつった笑みを浮かべました。

感想、レビュー、ブックマーク、高評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ