第91話 襲来
「こ、今度は何!?」
突然の出来事にノンは目を白黒させてしまいます。魔力の気配はなし。少なくとも魔法による爆発ではなさそうです。
(大木の中まで熱気が来たってことは相当な火力だ!)
爆発音の主が大木を襲ったとしたらその敵はかなりの強敵となるでしょう。彼はいきなりの展開に思わず生唾を飲み込んでしまいました。
『なになにー!?』
『あっつーい!』
『こわいよー!』
周囲にいる精霊たちも今の爆発には動揺してしまったらしく、わたわたと大慌て。このまま放置すれば正面からぶつかってしまいかねません。
(魔力を循環ッ!)
「みんな、落ち着いて!!」
この半年で見事、自分のものにした肉体強化を使い、ノンは螺旋階段の上から大声で精霊たちに呼びかけます。体を強化したおかげで彼の声は大木中に響き渡り、飛び回っていた彼らは一斉にノンを見上げました。
「大丈夫! とりあえず、外の様子を見よう! 緑の子たち、着地は任せてもいい?」
『いいよー!』
「よーし、じゃあ、行くよー!」
とにかく状況把握が優先です。少しでも時間が惜しい今、ノンは勢いよく大木の最上階から飛び降りました。そして、緑色の精霊たちが同時に魔法を使い、風を起こしてノンを受け止めます。
「ありがとー! 黄色い子たちは大木の入り口に壁が必要になるかもしれないから準備して!」
『はーい!』
「赤い子と青い子は攻撃呪文の準備! 僕の合図に合わせて撃ってね!」
『わかったー!』
最下層に着地した彼は入り口に向かって走りながら精霊たちに指示を出します。半年もの間、指示を出す遊びをしていたため、彼らの連携に一切の乱れがありません。
「紫の子たちは相手の視界を塞いでもらうよ! できるよね!」
『もちろん!』
そして、オウサマの勉強会により、魔法の属性に詳しくなったため、紫色の精霊たち――つまり、闇魔法の使い道もすんなりと思い浮かぶようになりました。
精霊たちに指示を出し終えた彼は彼らを引きつれて大木の入り口に辿り着きます。あれ以降、爆発音はしませんが油断は禁物。体に巻き付けた白い包帯に魔力を通しながら慎重に顔を出します。
「なっ!?」
大木の外は一面の赤。そう、火事です。先ほどの爆発音によって森の木々に火がつき、勢いよく燃えていました。このままでは大木にも火が回るのは時間の問題でしょう。
「青い子たち! 消火するよ! 黄色い子たちは大木の周りに壁を作って火が燃え移らないように!」
ノンは咄嗟に大木を守ることを選択します。魔法の準備をしていたおかげで青い精霊と黄色い精霊は即座に魔法を行使して消火活動と防壁の建築を始めました。ですが、燃えている範囲が広すぎるため、すぐには鎮火できなさそうです。
(多分、この一帯が暑い気候だから青い子たちの力が少し落ちてる。このままじゃ間に合わない!)
「緑色の子たち、火の勢いが弱まるほどの突風で消火できる!?」
『やってみるー!』
「よーし、お願いね! 赤い子、紫色の子は魔法を待機させておいて! 何が起こるかわからな――ッ!?」
その時、上空で大気を震わせるほどの咆哮が轟きます。咄嗟に上を見上げたノンはその視界に捉えた存在を見て目を見開きました。
鈍く光を反射する黒い鱗。その巨体を支えるため、大きく広げられた翼。一振りで太い木をへし折れそうな尻尾。全ての生物を八つ裂きにできそうなほど鋭い爪と牙。なにより、ノンの何倍もある巨大な体。
その正体は――前世で見た物語に何度もでてきた伝説の生物。
「ど、ドラゴン!?」
そう、森の上空。そこからこちらを睨みつけていたのは黒い鱗に全身を覆われた黒龍だったのです。
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