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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第86話 失敗

「三つです」

「……目を開けろ」


 その言葉でノンは目を開けますが宙に浮く水球の数を数えて肩を落としました。その数は全部で五つ。今日も不正解です。


「うぅ……今度こそ、正解だと思ったのに」

「いやいや、かなり精度は上がっている。一か月前とは大違いだ。だが、まだ足りないな。精進するように」

「はーい」


 ノンが魔力感知の練習を始めて早一か月。つまり、この国に来て三か月が過ぎました。すっかり、この生活にも慣れ、オウサマ相手でもフランクな態度を取るようになってきた彼ですが、魔力感知の練習は思うように進んでいないようです。


「……」

「ん? どうした、テレーゼ。そんな目で私を見て」

「いえー? あなたの思惑は理解できるけど……わたくしは気に入りませんわ」


 一か月に一度、遊びにくるテレーゼですが、精霊の国に来た時は以前のように午後の修行は彼女が相手をします。ノンも彼女との修行は非常にためになると真剣に取り組み、メキメキとその実力を伸ばしていました。


 なお、さすがに三週間もの間、国を留守にしたのは駄目だったらしく、滞在期間は三日ほどしかありません。だからこそ、最初よりも短い期間で実力を付けるため、彼女との修行は最初とは比べ物にならないほど苛烈になっていました。


 そんな修行の相手として最適な彼女ですが、初めてオウサマとの魔力感知の練習風景を見ました。そして、ジト目でオウサマを見てそう感想を述べます。


「ははは、いい練習だろう?」

「やり方が気にくわないと言ってるの! ノンくん、早く正解しちゃって!」

「うーん、でも、何故か合わないんだよ……感覚的には間違いないのに」


 なお、魔力感知の練習ですが、最初にオウサマが魔力を放出してそれを感じ取る時間を設け、試験として水球の数当てをするという流れでした。つまり、数当ての挑戦は一日一回。すでに三十回もの失敗を重ねています。


「また明日も挑戦してくれ。さぁ、昼食にしよう」

「あ、お待ちなさい! わたくしの気はまだ治まってないの!」


 笑いながら部屋を出るオウサマとそれを追いかけるテレーゼ。そんな二人を見ながら平和だな、と呑気に考えながら一歩、踏み出そうとした時でした。


「あ、れ……」


 少しだけぐらりと眩暈がしてその場で立ち止まります。そして、どこか悟ったような表情を浮かべてしまいました。


(あ、これ、熱出る)

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