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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第82話 魔族

 魔族。オウサマは確かにそう言いました。前世で様々な異世界物に触れた彼はその言葉に思わず生唾を飲み込んでしまいます。


「その、魔族というのは?」

「ん? ああ、そうだな。じゃあ、ついでに勉強会もやってしまおう。今日しようとしていた話に繋がるからな」


 会議の話は一度、切り上げるようで彼女は自分とノンの前に置かれたコップに指先から水を注ぎました。それは勉強会が始まる合図。自然とノンも背筋を伸ばし、聞く準備をします。


「まず、前提としてこの世界には様々な種族が生きている。その中でもノンと同族である人間が最も人口が多い。そして、私のような精霊。テレーゼと同じ妖精……あとはお前の家で働いていた獣の耳を持つ獣人」


 ここまではノンも知っている種族ばかりです。きっと、順序立てて説明するためにノンが知っていることから話に入ってくれたのでしょう。


「あとは森の中を好み、自然と共に生きているエルフ。酒と鉱物が大好きなドワーフ。水の中で暮らす魚人。凄まじい力を持つ龍族。ほかにも色々いるが……その中で魔族という存在がいる」

「魔族……」

「ああ、特徴は高い魔法適正と身体能力。なにより、死なない(・・・・)

「……え? 死なない?」

「ああ、魔族は不死の存在だ。首を落としても、心臓を握りつぶしても、魔法で焼き尽くしても、な」


 あまりにぶっ飛んだ特性にノンは言葉を出せませんでした。きっと、強力な種族なのだろうと予想はしていましたが『不死身』は予想外です。


「そ、そんな相手に人間は戦争を?」

「そうだ……魔王がいきなり人間を攻め始めてな。我らも止めようとしているのだが、相手が魔族だからどうやっても止められず、少しずつ人間の領地が攻め込まれている状態だ」

「それって……いつ頃からですか?」

「確か……お前が産まれた頃だった。ちょうど、五年ほど経つはずだ」


 ノンはこの世界に産まれてから平和に生きていました。エフィもジェードもルーも特に世界情勢を気にしている様子はなかったと思います。だからこそ、まさか産まれた頃から魔族との戦争が始まっているとは考えもしませんでした。


「ふむ、では、お前が暮らしていたのは人間の国の中でも王都に近かったかもしれない。まだ、攻め込まれているのは人間の国の中でも外側の方だからな。まずは最初に王都を目指すのはありだ」

「それは、そうですけど……本当に魔族を倒す手段はないんですか?」

「数は少ないのが幸いして一気に攻め込めずにいるらしいが奴らを倒す手段はない」

「……魔族ってどの時代からいますか? 数が少ない理由とかは?」


 ノンは続けざまに質問します。人間が攻め込まれているから焦っている、というわけではありません。どこか、違和感を覚えたのです。


「魔族の歴史は古いぞ。エルフよりかは短いがそれでも長寿だから……む?」


 ノンの質問に答えていた彼女ですが、途中で何かに気づいたように言葉を止めました。それから眉をひそめ、考えごとを始めてしまいます。


「オウサマ?」

「あ、いや、出生率こそ少ないはずだが、長寿だからな。どうして、数が少なくなってしまったのかと思って――まぁ、いいか(・・・・・・)

「……え?」


 オウサマが何か、重要なことに気づきかけたその時、不意に動きを止め、考えるのを放棄してしまいます。あまりに突然のことでノンは驚きのあまり、体を硬直させてしまいました。


「魔族の話はこれぐらいでいいだろう。次にお前に関係がある、魔物についてだ」


 そのせいでオウサマが話題を変えるのを止められませんでした。違和感を残したまま、勉強会は次の課題へ移ります。

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