第81話 会議
「……」
テレーゼが国に帰ってから数日後、ノンは午後の勉強会をするためにオウサマの部屋に向かっていました。しかし、その顔は少しだけ強張っています。
「オウサマ、入ります」
「ああ、いいぞ……どうした?」
緊張した面持ちで部屋に入ってきたノンを見てオウサマは首を傾げました。彼女からしてみればただの勉強会なのでしょう。ですが、彼にとって今日の話はこれまでの常識を学ぶそれとは訳が違いました。
「今日は……僕が戦うかもしれない相手について教えてくれるんですよね?」
「ああ、そうだ。ノンには悪いがテレーゼの花占いが不発に終わった今、試せる方法は残り一つとなった」
「あれ、まだあったんですね」
オウサマの言葉に驚いた様子で目を丸くするノン。そんな彼に対し、呆れたような表情を浮かべます。
「やはり、そう考えていたか……テレーゼが一か月後に来ると言ってすんなり受け入れたからもしやとは思っていたが」
「あ、あはは……」
「……ふん、そんなことどうでもいい。とにかく座れ」
何も言い返せず、乾いた笑い声をあげますがそれでは誤魔化せなかったようで彼女は少しだけ拗ねた様子で小さな椅子を指さしました。彼もこれ以上、オウサマの機嫌を損ねるわけにはいかないため、すぐにいつもの席に腰を下ろします。
「話を戻すぞ。残る方法はとても先の話だ」
「先の?」
「ああ、一年に一度、各種族の代表が近況を報告する会議が行われる。そこでノンのことを他の王たちに聞いてみようと思ってな」
「他の王……テレーゼもその中の一人ですか?」
「そうだ、あれでも妖精王だからな」
その言葉を聞いて『おほほ、わたくし、妖精王ですわー!』とすっかり耳に残った声と共に胸を張るテレーゼを思い浮かべてしまいます。オウサマもオウサマなので他の王も癖のある人ばかりなのでしょうか。
「その会議に人王が来れば話は早いのだが、あまり期待はできない」
「人王……人の国の王ですか?」
「そう、お前が暮らしていた国の王だな。まぁ、人間の王は何人もいて毎年、会議に参加する代表を決めたりするらしい」
『人口が多すぎて一人ではまとめきれないそうだ』とオウサマはどうでもよさそうに教えてくれます。人の国はいくつもあり、それぞれに王がいますが会議に参加できるのはその中でも一人のようでした。きっと、その代表を決めるのも色々大変なのでしょう。
「じゃあ、僕が暮らしていた国の王様が来るとは限らない、ということですか?」
「いや、そもそも人王が来る可能性が低いということだ。戦争中だからな」
「……え、戦争?」
予想もしない言葉にノンはポカンとしてしまいます。ですが、オウサマはそんな彼に気づかず、そのまま話を続けました。
「私も詳しい戦況は不明だがな……今、人間は魔族の侵攻を受けているらしいぞ」
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