第79話 それから
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「ノンくん! 魔法の無効化ばかりを狙って他のことが疎かになってますわ! もっと柔軟に対応なさい!」
「はい!」
テレーゼが精霊の国に来て早くも一週間が経ちました。最初はノンの実力を疑っていた彼女でしたが今ではすっかりノンの練習相手となっています。
今の彼は朝と午後にオウサマと文字の練習や勉強会を行い、それ以外の時間はテレーゼと組み手のように戦いながらの修行をしていました。オウサマの場合、使う魔法の規模が大きすぎるため、彼女と戦うのはもう少し強くなってから、ということになっています。
「さぁ、どんどん行きますわよ!」
それに比べ、テレーゼは意外にも手加減が上手く、今のノンと戦うのに最も適している人材――いえ、妖精でした。
今もノンはテレーゼからガトリングの如く撃ち出される風の塊を包帯で叩き落しながら魔力循環を用いた肉体強化で大木の床を蹴り、高速で逃げ回っています。更に彼女が大規模な魔法を行使しようとする度、白い包帯を伸ばして魔法の無効化を試みますが戦いながらとなるとまだ成功率は低いようでそれが今後の課題になりそうでした。
「わぷっ」
少し強引に魔法の無効化をしようとした結果、真正面から風の塊を受け止めてしまい、その場でひっくり返ってしまいました。痛くはありませんがそこそこの衝撃は来るので子供の彼はこれだけで床に転がってしまいます。
「あー、また駄目だった……」
「でも、最初に比べてとっても上手くなりましたわ。あとは経験。そして、最適解ばかりを選ばないことですわ」
「え?」
最適解ばかりを選ばない。そのアドバイスが意外だったため、ノンは思わず声を漏らしてしまいます。
「もちろん、悪手を選んでしまったらこちらが不利になっちゃうわ。でもね? 最適解は意外とわかりやすいの。そうすると相手にも読まれちゃうから最適解だったはずの答えが悪手になることもあるわ」
「じゃあ、どうするの?」
「それはノンくんが一番得意なことでしょ! 相手が考えもしない意識外の選択を取ればいいわ!」
つまり、意表を突け、と言いたいようです。確かにノンの手札は基本的に初見殺し。魔力が外部に漏れない体質によって魔力循環を使ってもまず気づかれない。白い包帯も普段は服の下にあるのでばれませんし、魔法の無効化など仕組みすらわからないまま、魔法を無効化されるでしょう。
「とにかく、ノンくんはすごい子だからこれからも頑張ってね!」
「うん、わかった」
「……」
「テレーゼ?」
「あ、えっと……」
その時、いつもとテレーゼの様子がおかしいことに気づき、首を傾げます。そんな彼を見てもにょもにょと何か言いづらそうに彼女は目を反らしました。
「実は……そろそろお別れしなきゃならないの」
そして、意を決したようにノンへそう別れを告げたのです。
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