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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第76話 布石

「まさか最初からこれを狙って!?」


 テレーゼはすぐに自分の考えを改めました。ノンは最初から攻撃をしているわけでなく、大掛かりな仕掛けを作っていたのです。


「本当に、ノンくんは規格外ね!」


 これほどの大掛かりな仕掛けなら途中で気づかれてもおかしくありません。ですが、ご丁寧にテレーゼに気づかれないように巣を張る高さを固定し、彼女が上を見ないように包帯の軌道をコントロールしていました。


 このまま放置すれば布の天井は完全に塞がり、逃げ場が少なくなって身動きが取れなくなる。きっと、機動力に優れているテレーゼに確実に攻撃を当てるための作戦なのでしょう。


「でも、こんな穴だらけの罠は意味ないわ!」


 そう叫んだ後、彼女は張られた巣を突破するために一気に上昇します。いくら、複雑に絡んでいたとしても所詮、包帯。妖精特有の小さな体を持つ彼女なら僅かな隙間を通り抜けられるでしょう。


 そう、ただの包帯なら、の話ですが。


「ふぎゃっ」


 今まさに巣の境界を越えようとした瞬間、包帯が横に肥大化したのです。それによってテレーゼが通り抜けようとした穴が塞がり、彼女は柔らかい布に顔から突っ込んでしまいました。


 ノンの包帯は魔力によって伸び、動き、硬質化します。そして、伸びるのは盾だけではなく、横幅も例外ではありません。


 包帯は白くて細長い布。その先入観に加え、テレーゼを散々追いかけ回したことで縦に伸びる印象を強め、横に大きくなると感づかせないようにしたのです。


 そんなノンの策略にまんまと引っかかったテレーゼはマズイ、と思いながらもふと疑問に思いました。どうして、包帯を硬質化させなかったのか、と。


 彼女は勢いよく布の天井へ顔を突っ込ませました。もし、硬質化させていたのならそれなりのダメージを受けていたでしょう。


 ノンの優しさ? それとも、大掛かりな仕掛けを作り、伸ばした包帯の横幅を広げたせいで魔力が足りなかった?


 いえ、それすらも布石でしかありません。


 包帯へ突っ込んだ勢いが弱まり、一瞬だけ動きを止めた彼女でしたが今度は包帯が縦に縮みました。すると、複雑に絡んでいた包帯はお互いに引っ張り合い、ピンと張ったのです。


「え、ええ……きゃあああああ!?」


 もちろん、テレーゼが顔を突っ込んでいる包帯も例外ではなく、その勢いに負けて一気に下に向かって弾き飛ばされてしまいました。ぐるぐると視界が回転する中、なんとか態勢を立て直そうと魔力を放出します。風魔法を使い、勢いを殺すつもりなのでしょう。


(最初は魔力が足りなかった? ううん、違う。範囲が狭かったんだ)


 それを魔力感知で察知したノンは魔力を込めて待機させていた右側の包帯を見やります。最初に試した時、ほんの少しだけ手ごたえがありました。しかし、彼が思ったようなことは起こらず、失敗。その原因は包帯の小ささだと考えました。


「ならっ!」


 範囲を広げればいい。そう結論付け、勢いよく白い包帯を伸ばします。それは寸分違わず、魔力が放出された場所に突き刺さります。そして、包帯の先端がその場所でぐるぐると渦巻き、球体のように一気に膨張しました。


「ちょっ――ぐぇ」


 その瞬間、放出していた魔力が包帯によって吹き飛ばされてしまいます。まさか魔法の行使を邪魔されるとは思わなかったテレーゼは目を見開き、そのまま最下層の床に叩きつけられました。


「きゅう……」

「そこまで。ノンの勝利!」


 目が回ってしまったのでしょうか。床で仰向けに倒れるテレーゼを見てオウサマはどこか興奮を抑えられないように顔を赤らめながらノンの勝利を宣言したのです。

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