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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第75話 攻防

「よっと」


 すでに白い包帯を上のフロアへ伸ばしていたノンは包帯を縮めることで上空へと避難。危なげなく、風の塊を回避しました。この数日ほど精霊たちの力を借りて大木の中を飛び回っていた成果です。


「さぁ、どんどんいきますわ!」


 しかし、その隙にテレーゼは小さな風を無数に発生させて次から次へと彼へ射出します。小さな風なので当たってもさほどダメージは受けなさそうですが、体重の軽い彼の場合、当たった瞬間に吹き飛んでしまい、大きな隙を晒すことになるでしょう。


「ほっ」


 すかさず、右腕の袖口から伸ばした包帯を別のフロアへひっかけて軌道を変えます。先ほどまで彼がいた場所に小さな風の塊が通り過ぎていきました。


 ですが、テレーゼはそんな彼を逃すわけもなく、彼が移動する方へどんどん風を撃ち出します。今はある程度の速度が出ているため、回避できていますが、彼の移動方法は白い包帯によるもの。ターザンロープを掴んで前に進むのと同じ要領なため、軌道を変える度に減速していまいます。


(なら!)


 彼は左腕の包帯を硬質化させ、後ろへと伸ばしました。小さな風の塊が硬くなった包帯とぶつかり、乾いた音と共に霧散します。その隙に螺旋階段へと着地した彼は下にいるテレーゼを見下ろしました。


「まぁ、これぐらいやってもらわなきゃ面白くないですわ。さぁ、次はノンくんの番よ!」

「え? いいの?」

「ええ、一方的に攻め立てるのはあまり優雅ではありませんもの! さぁ、いらっしゃい!」


 そう言いながらもテレーゼは最下層付近でびゅんびゅんと飛び回り始めました。今のノンは魔力循環による肉体強化と包帯による攻撃しかできません。ましてや、肉体強化はまだほとんど練習しておらず、戦いに使えるほどの練度はありませんでした。生半可な攻撃では簡単にかわされてしまうでしょう。


「……よし」


 一つ、妙案を思いついた彼はおもむろに左腕の袖口からテレーゼに向かって伸ばします。それなりの速度で伸びていますが一直線で伸びてくる包帯を彼女はひょいっと回避しました。


「あら、そんな攻撃じゃ私には届きませんことよ?」


 からかうように笑う彼女でしたが、また包帯が自分の方へ伸びてきたのを見て首を傾げます。それもかわしますが包帯はすぐに軌道を変えて再び彼女の方へと向かいました。


「もー、しつこい男は子供であっても嫌われちゃいますわ! もっと、色々とやってきていいんですのよ!」


 アドバイスを飛ばしながら向かってくる包帯をやり過ごします。しかし、また追ってくる包帯。簡単にかわしたせいでムキになってしまったのでしょうか。そんなことを考えながらテレーゼは模擬戦なのだから彼の好きなようにさせようと付き合うことにします。


「さぁさぁ、鬼さんこちら! わたくしはここですわ!」


 かわす。伸びる。回避する。追ってくる。やりすごす。軌道を変える。また、かわす。


 そんなやり取りが何度、行われたでしょうか。これだけの時間、包帯を伸ばし続けるノンの魔力保有量を褒められるべきでしょう。


「でも、攻撃は当てなきゃ意味がないわ!」


 十分、付き合った。魔法を回避するのは初めてにしては上出来だが、攻撃面は赤点。そう判断したテレーゼはそろそろ戦いを終わらせようと彼がいる方へ――螺旋階段の上へ視線を向けます。


「なッ!?」


 そして、白い包帯が蜘蛛の巣のように複雑に絡み合っているのに気づきました。

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