第74話 模擬戦
昨日分が一話少なかったので一話多く投稿。
最近、仕事の方が忙しく、昨日も休日出勤をするレベルです。
そのため、投稿ペースが乱れることがあるかもしれません。
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「さぁ、どっからでもかかってきなさい!」
「……」
大木の最下層。中央に螺旋階段しかないフロアでテレーゼはシャドーボクシングをしながら叫びます。そんな彼女に対し、ノンはどうしてこうなったとため息を吐きました。
「悪いな、あやつは頑固者でな。一度言ったことは何が何でもやり遂げる。私でも断れたことはない」
「まぁ、いつかはお願いしようと思ってましたけど……とにかくできる限りのことはしてみます」
「ああ、頑張れ。何かあったらすぐに助けに入るからな」
そう言って傍にいたオウサマは精霊たちを連れて彼らから距離を取ります。なお、多くの精霊たちは向き合うノンとテレーゼを見てわいわいと騒いでいました。
『のん、がんばれー』
『まけるなー、のん』
『てれーぜなんかにまけるなー』
「精霊に好かれていますのね。わたくしを応援する声が一つもないわ」
「そうじゃなきゃ、ここにはいないからね」
「……あら、ノンくんって皮肉も言えたの? それなら今後のお話も楽しくなりそう!」
そう言った彼女でしたが、コホンと咳払いを一つ。そして、その身に纏っている雰囲気がガラリと変わりました。
「もちろん、本気は出しません。これでもわたくし、妖精の国の中で一番強いから」
ボン、と魔力が高まった気配を感じ、ノンは咄嗟に両腕の袖口から白い包帯を伸ばしました。いつでも動かせるように魔力を通しますが、少しだけ冷や汗をかいてしまいます。
(これでも手加減してるんだろうなぁ……でも)
テレーゼの体から溢れる魔力。強大すぎるからこそ、その気配を感じ取りやすいようです。また、そのおかげで試したいこともできました。その準備として白い包帯の先端に高濃度の魔力を集めます。
「じゃあ、ノンくん! 存分に暴れてくださいな!」
幸い、ノンは魔力を放出しない体質。魔道具に魔力を注いでも気づかれません。その証拠にテレーゼが戦闘開始のゴングを鳴らす代わりにその頭上に魔力を一気に放出しました。
(これが魔法の行使!)
これまでノンの前で魔法を使った人は三人。彼をあやすために小さな魔法の球を生み出したエフィ、宝物庫でガラクタの山を吹き飛ばしたオウサマ。そして、先ほど花魔法でテーブルいっぱいに花を咲かせたテレーゼです。
ですが、そのどれもがノンに向けて放とうとしたわけではなく、こうして魔法を行使する瞬間を真正面で見るのは初めてでした。
「ッ――」
今まさに魔法が形になる瞬間、ノンは振りかぶるように右腕を振るい、袖口から白い包帯を一気に伸ばします。それは白い軌跡を描き、テレーゼへ――いえ、彼女の頭上で形になりかけている魔法に直撃しました。
「なっ!?」
「ほう?」
まだ魔法は形成されたわけではないので白い包帯は何もないところを通過しました。しかし、テレーゼとオウサマはほぼ同時に声を漏らしてしまいます。
「今の、なんですの!」
絶叫に近い声と共に彼女の頭上に吹き荒れる風の塊が出現しました。それを見た緑色の精霊たちが嬉しそうな悲鳴を上げます。
「なんだろうね!」
作戦が失敗したと判断したノンはすでに左腕を真上に向けていました。その袖口からは遥か高くまで伸びた白い包帯。
「せーい!」
可愛らしい掛け声と共に風の塊がノンへ迫ります。それを見た彼は――。
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