第73話 共有
「しかし、テレーゼの花占いも駄目となるとどうするか……」
改めて二人の協力を得られましたが問題は何も解決していません。オウサマはテレーゼの花占いに期待していたようで腕を組んで次の方法を考え始めました。
「その前に情報共有をして欲しいですわ! まだノンくんのこと、ほとんど知りませんもの!」
「確かにそうか。ノン、これまでの経緯を話してくれるか?」
「わかりました」
「……ノンくん、わたくしに対する対応とこの女のそれに明確な違いがあるように見えるけれど?」
これほど明け透けだとさすがに気づかれてしまったようでテレーゼはジト目をノンへ向けます。ここで彼女のご機嫌を損ねたら面倒なことになるでしょう。
「テレーゼは親しみやすいからつい……ごめんね」
「親しみやすい……つまり、わたくしの方がノンくんと仲良しということね! なら、許すわ!」
「別に私に対してももっと砕けた感じでいいんだがな……」
妖精王がチョロくて助かりました。その分、オウサマが拗ねてしまいましたが彼女のことはあとでフォローしましょう。
それからノンはテレーゼにこれまでにわかったことを手短に話しました。しかし、最初のうちはうんうんと頷いて話を聞いていた彼女ですが、どんどんその顔が歪んでいきます。
「産まれた直後に【ステータス】を使って『魔漏症候群』と間違えられた? 今も『吸魔の指輪』に魔力を吸われてるけど、とんでもない量の魔力を持ってる? それ、どれが嘘で、どれが本当ですの?」
「全部本当だぞ」
「ありえませんわぁ! 二人してわたくしを騙そうとしてるんでしょう!」
「なら、見てみるか? 少なくとも魔力量の多さは証明できるぞ」
そう言ってオウサマはノンへ視線を向けます。何となく言いたいことがわかった彼は黙って袖口から白い包帯を伸ばしました。その姿はまさに白蛇。生きているようにうねうね動くそれを見たテレーゼは大きく目を見開きます。
「なんか出てきましたわ!?」
「ノンにあげた魔道具だ」
「ほー、魔道具……でも、ノンくんから魔力が感じないのだけど……」
「魔力を放出する器官が塞がっちゃったみたいで」
「は?」
ノンの言葉に今度こそ、彼女は言葉を失い、オウサマと同じようにペタペタとノンの体を触り始めます。ついでに白い包帯に【ステータス】を使ったようでその詳細を見て愕然としていました。
「なんて魔力量なんですの……人間でこれほどの魔力を持ってる子は初めて見ましたわ。その魔道具を手足のように操れるのも納得」
「それでいて魔力循環もほぼ完ぺきだ」
「……魔力循環をしながら包帯に魔力を注いでいますの? そんなの机上の空論では……ああ、そっか。魔力を放出する器官が塞がってるおかげで現実になったのね」
一気にノンの規格外な面を知ったからでしょうか。テレーゼはジッと彼を見つめ、うんと一つ、頷きました。
「ノンくん、わたくしと戦ってみません?」
「……え?」
そして、とんでもない提案をしてきたのです。
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