第67話 花魔法
「は、花占い?」
オウサマの言葉にノンは目を白黒させてしまいます。
花占い。それは彼も知っていました。花びらを千切って運勢を占うありふれた占いです。ですが、今の状況でとても役に立つとは思えませんでした。
「あー、花占いね。でも、ノンくんの運命をちょっと見るだけよ?」
「それでも今は十分だ。少しでもヒントがあれば探し出せるかもしれないからな」
しかし、オウサマもテレーゼも普通に受け入れ、話し合いを進めています。なにより、運命を見る、という言葉が気になりました。
「えっと、その花占いってどんなものなんですか?」
「わたくし、妖精王だから花を使ってちょっとした運勢を見れるのよ。それを使ってノンくんの運命を見るの」
「え、それってすごくないですか?」
「うーん、まぁ、すごいこと? なのかしら?」
ちょっとしたことでも威張っていたテレーゼですが、今回はあまり納得していなさそうです。まるで、当たり前にできることを大げさに褒められている、といった様子でした。
「とにかく、今は何でもいいから情報が欲しい。テレーゼ、頼む」
「はーい、じゃあ、お花を用意するからテーブルの上を片付けてくださる?」
「そうだな。お前たち、頼む」
『はーい!』
テレーゼの指示でオウサマが部屋の外に合図を出すと精霊たちがなだれ込んできました。そして、テーブルの上に置かれていた黒板やチョーク、小さなコップをパッと片付けてしまいます。
「じゃあ、行くわよー!」
「ッ!?」
テレーゼが掛け声を出した瞬間、ノンは凄まじい魔力の奔流に思わず顔を庇います。地球儀に似た魔道具を使った時以上の圧力に言葉を失ってしまいました。
(これが、妖精王!?)
「今回はどんなお花が咲くのかしら! 楽しみね!」
お花を出すだけの魔法なはずなのに今にもひっくり返ってしまいそうになり、彼は必死に耐えます。オウサマも少しだけ顔をしかめているため、ノンほどではありませんがテレーゼの魔力を耐えているようでした。
「よーし、まんかーい!!」
いつまでも続くのか、とノンが冷や汗を流しているとその時は不意に訪れます。妖精王はクルクルと回転しながらゆっくりと上昇し、万歳をするように両手を真上へ突き出しました。
(こ、れはっ!?)
その瞬間、テーブルの上に凄まじい量の花が咲き乱れ始めたのです。花びらの色や形、大きさ、匂いまでも違うため、種類も数えきれないほど咲いているようでした。
「まぁ、ざっとこんなものでしょう! さっすが、わたくし! 今日も完璧な花魔法でしたわ!」
テレーゼは満開に咲いている花の上を楽しそうに飛び回り、自画自賛します。これまでの彼女と同じような言動ですが、その言葉の重みは全く違いました。
そう、これこそ、妖精王テレーゼの実力。小さな体に桁違いの魔力を内包した、まさに妖精の王様。そんな彼女を見てノンはただ茫然とするしかありませんでした。
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