第66話 本命
「じゃあ、人間の国を旅すればいずれ家に帰れるってことですか?」
「……」
「うーん……」
思わぬヒントを得られたからでしょうか。ノンは少しだけ前のめりになってオウサマとテレーゼに質問します。しかし、二人は顔を見合わせて難しい顔をしていました。
「残念だが、人間の国はとても広い。他の国を探さなくていいとなったとしても現実的かと言われたら微妙だ」
「あ、でも、季節でもうちょっとだけ絞れるのではなくて? ノンくん、一週間前ってどんな季節だった?」
「春でした」
この世界が惑星であり、自転と公転をしているのであれば同じ国だとしても地域によって季節が異なります。すかさず、答えましたが提案したテレーゼは『あー』と目を反らしました。
「ごめんなさい。今の季節が春だと……おそらく、最も大きい大陸にある国ですわ。子供の足で旅をするには……その、大変かもしれないわ」
「……」
そう言われてノンはチラリと部屋に置かれている地球儀に似た魔道具を見ます。地球に似た惑星ですが、大陸の形に見覚えはありません。そして、その中でも地球で最も大きな大陸であるユーラシア大陸よりも大きいものがあるのを見つけました。確かにあの広さを旅するのはあまりに無謀だと言わざるを得ません。だからこそ、テレーゼは誤魔化すように言葉を濁したのでしょう。
「……でも、それでも僕は行きます」
しかし、それはすでにわかりきったこと。ノンはそれを見越してこの国で準備を進めています。むしろ、旅をする大陸がわかっただけでも進歩といえるでしょう。
「っ……そうか。なに、まだテレーゼを呼んだ本当の目的は達成していない。それを試してからまた考えよう」
覚悟を決めた表情を浮かべて宣言したノンにオウサマはどこか心配そうな顔をします。だからでしょうか、彼女は問題を先延ばしにしました。子供が好きな精霊にとって無謀な旅に出さなければならなくなるかもしれないこの状況を受け入れ難いのでしょう。
「あら、【ステータス】を試すためではなかったの?」
「何度もそう言っている。私もやったがお前と同じように弾かれた。おそらく、スキルか何かが【ステータス】を抵抗しているのだろう」
「ほぇ、ノンくんはすごい子ねー。あれ、じゃあ、わたくしはなんで呼ばれたの?」
首を傾げるテレーゼにオウサマはニヒルな笑みを浮かべ、立ち上がります。そんな彼女をノンとテレーゼは不思議そうに見つめました。
「テレーゼ、お前に頼みたいことがある。そう、花占いだ!」
ドドン、と効果音が付きそうな勢いでそう言い放ったオウサマは勝った、と言わんばかりの表情を浮かべていました。
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