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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第57話 測定

 オウサマはノンの保有する魔力量が常人よりも多いことには気づいていました。魔力は一切感じ取れませんが彼の中に膨大な魔力の気配を感じたからです。


 人間は成長と共に魔力量が増える。そして、運動して体力を付けるように魔力量も鍛えることができます。


 その方法は単純明快。魔力を消費する。それだけです。


 強力な魔法を放つ。常に魔力を消費し続けるなど、魔力に負荷をかけ続ければその分だけ魔力量が増えていきます。そして、一定の年齢から体力と同じように衰えていく。


 それがオウサマの知る人間の特性でした。


 では、赤ん坊の頃から『吸魔の指輪』を肌身離さず身に着けていたノンの場合、どうなるのでしょうか。


 最初、オウサマはノンから魔力を感じなかったせいで彼には微力の魔力しか残されていないと勘違いしました。赤ん坊に魔力を吸い上げる『吸魔の指輪』を装備するなどありえないため、前例がなかったからです。


 ですが、ノンの様子から逆に『吸魔の指輪』によって魔力が鍛えられたと知りました。きっと、ノンの保有する魔力量は通常の子供より多いだろうとすぐに察したのです。


 だからこそ、包帯を使った鬼ごっこくらいならできると思い、提案しました。一瞬だけ伸ばして物を掴む。そんな運用方法なら魔力量の多いノンなら使えるだろう、と。


 ですが、昨夜に見た腹部に巻かれた包帯を見た時、その考えがあまりに甘かったと再認識しました。


「では、魔力量を測定するぞ」


 翌日、午前中に文字の練習をして昼食を終えた後、ノンの頭にはオウサマの手が置かれていました。人間の魔力事情を聞いた後、すぐに魔力測定をすることになったからです。


「今からお前の中にある魔力を探る。少しくすぐったいかもしれないが我慢して欲しい」

「わ、わかりました」


 魔力量を測定する。そう言われて何か魔道具でも使うと勝手に思っていたが、まさかの手探りでした。そのせいで彼は少しだけ緊張してしまいます。


 思い出すのはこの国に来た日、【ステータス】を使っただけで吹き飛んだオウサマの姿。もしかしたら今回も前回と同じように彼女を傷つけてしまうかもしれない。ノンはそれを心配していました。


「では、始めるぞ」


 しかし、彼の心配に気づかず、オウサマは目を閉じて意識を集中させます。その瞬間、体の中に冷たい何かが入り込んでくるのを感じ取りました。ですが、嫌な感じはせず、ノンは特に抵抗せずに成り行きを見守ります。


「……やはり、か」


 どれほど時間が経ったでしょうか? 少なくとも【ステータス】を使用した時のように弾かれることはなかったようで冷たい何かが体から消えるとオウサマが目を開けます。魔力測定が終わったのでしょう。


「ノン、心して聞け」

「は、はい……」


 どこか深刻そうな表情でノンを見下ろす彼女に思わず、生唾を飲み込んでしまいます。


「お前の魔力量は異常だ。あまりに多すぎる」

「あれ、多いんですか?」


 あまりいい結果ではなかったと覚悟をしていたため、その言葉にノンは肩透かしを受けたような気分になります。魔力量が多いのはいいこと。そう考えるのが普通です。


「そうだ。人間としては桁違いの魔力量を保有している」

「えっと、体に悪影響とかは……」

「ない、とも言いきれないが今のところ、問題はない。だが、問題は魔力量が増えた原因だ」

「原因……」


 ノンはこの世界は理不尽だと知っています。


 前世では事故に遭い、家族を失い、最後は病魔に侵されながら死にました。


 今世でも精霊と出会い、家族と引き離され、精霊の国にいます。


 きっと、今回もそれと同じようなことが起きた。彼は覚悟を決めます。


「原因がわからないんだ」


 しかし、オウサマの答えはそんな曖昧なものでした。

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