第52話 ゴミ捨て場
魔道具。それは魔力を注ぐことで効果が発揮する不思議な道具です。家にいた頃に見たのはトイレやコンロ、部屋の明かりなどに使われていました。ですが、ノンはそれらに一度も触れたことはありません。
「相棒?」
「ああ、そうだ。あの話を聞いて私はお前が魔力循環を使いながら魔道具の武器を持って戦う。そんな光景が思い浮かんだ。だから、ここへ連れてきた」
「で、でも……魔道具なんて使ったことないですよ?」
「これから使い方を覚えればいい……いや、むしろ、逆だ。すでにお前は魔道具を使う最低条件を満たしている」
「最低条件?」
彼女の言葉を繰り返しながらノンはガラクタの山を見やります。そんな彼を見たオウサマはポン、と小さな肩に手を置きました。
「魔力操作。自分の中にある魔力を操作して魔道具へ注ぐ。それだけでいい。あの口ぶりから察するに魔力循環をしながら魔力操作はできそうなのだろう?」
「は、はい……試したことはないですが……」
やり方は簡単です。魔力をぐるぐる回しながら『吸魔の指輪』へ流れようとする魔力の軌道を少しだけズラせばいい。そのズラした方向に魔道具があれば注ぐことは可能でしょう。ズラした分を補うように『吸魔の指輪』へ流れる魔力は増えるので結局、吸収される魔力量は変わりませんがそうすれば魔道具に注ぐ魔力を捻出することができるのです。
「とりあえず、お前にプレゼントするのは確定だ。時間もあることだし、ゆっくり探してみるといい。私がここで見守っていてやる。山が崩れたら魔法で吹き飛ばすからな」
「あ、いや……それ、かえって危ないような……」
どこかわくわくした様子のオウサマに苦笑を浮かべたノンは改めて宝物庫の中を見渡しました。何度も見ていますがこの中に彼の相棒となる魔道具があるとは思えないほど混沌としています。
(武器になりそうな剣とか盾は何個かあるけど……)
とりあえず、近くに落ちている物を拾って観察しようとしますがそのほとんどがノンの身長よりも大きく、魔力循環によって体を強化したとしても満足に扱えそうにありません。
「あの、これはなんですか?」
「それは……ただの椅子だな。ボロボロだからここに投げ捨てたのかもしれん」
「え、ええ……じゃあ、これは」
「見ての通り、金槌だ。魔道具ではないから釘を打つぐらいにしか役に立たん」
なにより、この部屋にある物の大半が魔道具ではないようでした。これでは宝物庫ではなく、ゴミ捨て場と呼んだ方がいいかもしれません。
それからあーでもない、こーでもないと目についたものを片っ端からオウサマへ見せる彼でしたが、特に目ぼしいものもなく、時間だけが過ぎていきます。
「あれ、これって……」
その時、ふと視界に入ったのは白くて長い布でした。
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