第44話 今後
ほどなくしてオウサマに呼ばれたノンは昨日の夜と同じように彼女の部屋で朝食を食べていました。
「なに、勉強したいだと?」
「はい、これを機に色々と学びたいなって」
そこで先ほど思いついた妙案を口にします。それは暇な時間を使ってこの世界の常識や魔法のことを覚えよう、というものでした。
「まぁ、あやつらの世話や食事を作るだけだから私も時間はあるが……無理して勉強する必要はないんだぞ?」
「無理してるわけじゃないんです……でも、あまりやることもなくって」
「何もないからな。精霊たちも飛んでいるか寝ているかのどっちかだ」
ノンの言葉にオウサマは呆れたようにため息を吐きます。きっと、彼女なりの悩みがあるのでしょう。主に無邪気な精霊関係で。
「そういうことなら私は構わない。用事がある時もあるから毎日とはいかないが……今朝のような感じで会話ベースでのやり取りになるが大丈夫か?」
「はい、こちらとしても質問しながらの方が助かるのでちょうどいいです」
「わかった。とりあえず、何度か試して駄目そうならやり方を変えよう」
予想以上に乗り気なオウサマの様子にホッとするノン。きっと、彼女も精霊の相手をする時以外は暇なのでしょう。
「じゃあ、どんなことを知りたい? 私が知っていることならいいが……」
「そうですね……暦とか単位とかお金のこととか。あとは魔法のことも知りたいです」
「魔法?」
「はい、使えなくても知識と知っておけば役に立てられるかなって……」
「それなら先に魔力循環の応用を学べばいいだろう。お前にとっても損のない技術だ」
思わぬ切り返しにノンは目をぱちくりしてしまいます。魔力循環の応用。つまり、体の中で魔力を回す行為にも意味がある。オウサマはそう言ったのです。
「魔力循環って何か役に立つんですか?」
「それはもちろん。むしろ、自覚がないのか?」
「自覚、ですか」
魔力循環で役に立ったこと。例えば、魔力の消費を抑えられることでしょうか。また、おそらくですが魔力総量も増えています。
ですが、それ以外に魔力循環のメリットを感じたことがありません。そのため、オウサマの言葉の真意を読み取ることはできませんでした。
「そうか……無意識でやっていると考えれば将来が楽しみだな」
「将来?」
「いや、それは明日の勉強会で詳しく話そう。今日は素敵な日にしなければならないからな」
素敵な日。そう言われて彼はキョトンとしてしまいます。精霊の国に来た歓迎会でも開いてくれるのでしょうか。
(でも、昨日も盛大に歓迎してくれたような?)
「ん? まぁ、色々と準備をするから時間を潰していてくれ。あ、もしよかったら何を学びたいかこの紙にまとめておいてくれると助かる。準備が必要なものもあるかもしれないからな」
オウサマはどこからか一枚の紙と鉛筆を取り出してノンへ差し出します。しかし、それを見たノンはピクリと体を硬直させました。
「……どうした?」
「あの……すみません、字が書けないです」
「……そうか。まだ子供だったな。まずは字の練習をしよう」
ちょっとしたやり取りでノンが最初に学ぶことが決まりました。いずれ、読み書きは必ず修める予定だったので彼としても願ってもない提案だったので素直に頷きました。
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