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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第43話 命令

 オウサマに自由にしていいと言われたノンですが、やることがありません。朝食ができるまでさほど時間はかからないと思いますが部屋に戻るのも味気が無いと思ってしまうのは精霊の国に来たばかりだからでしょうか。


「あ、そうだ」


 とりあえず、部屋に戻ろうと足を一歩だけ踏み出した時でした。精霊たちが遊びたがっているのを思い出したのです。特にやることもないので会いに行こうと螺旋階段の方へと向かいました。


「おー……」


 大木の螺旋階段に辿り着き、その大きさに改めて驚いてしまいます。大木の内部を丸ごとくり抜いたような構造なので下を見れば最下層まで丸見えでした。高所恐怖症の人は足が竦んでしまうだろうとなんとなしに考えます。


『のーん』

『やっほー』

『あそぼー』

「うん、いいよ」


 その時、螺旋階段付近に精霊たちに見つかり、彼らはふよふよと近づいてきました。お誘いを受け入れますが精霊は普段、何をして遊んでいるのでしょうか。


「普段はどんな風に遊んでるの?」


『おいかけっこ!』

『かくれんぼ!』

『いっしょにとぶ!』

「うーん、僕にはちょっと難しいなぁ」


 大木の内部はほとんど空洞であるため、ノンが移動できる範囲は決まっています。かくれんぼも隠れる場所がなくてあまり面白くなさそうでした。もちろん、一緒に飛ぶのは論外です。


『じゃあ、きのうみたいなやつやりたい!』

「え? 昨日?」


 昨日といえば螺旋階段を昇る時に色々と指示を出したことでしょう。確かにあの時はノンも精霊たちも楽しかったのは確かです。


(精霊は命令されるのが好きなのかな?)


 オウサマからはそんな話を聞いていなかったので首を傾げました。ですが、やりたいのなら断る理由はありません。早速、周辺にいる精霊たちを集めました。


「じゃあ、行くよー」


『きゃー!』

『わー!』


 さっと集めただけなのに数えられないほど集まった彼らに苦笑を浮かべながらノンは色々と指示を出します。精霊たちはそれに従い、きゃっきゃと笑っていました。


(赤い子とか青い子はいいけど紫の子は難しいな)


 精霊は色ごとに属性が決まっています。赤い子には火を出させたり、青い子には水を出せたり――その中でも闇を司る紫の子たちは何ができるか不鮮明で指示が曖昧になってしまいました。


「……あ、そっか!」


 精霊たちに指示を出しながらどうしようと考えているとふと妙案が浮かびました。オウサマの協力は不可欠ですが、とりあえず朝食の時に話そうと飛び回る精霊を見ながらノンはうきうきした様子で笑います。

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