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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第35話 真実

 【ステータス】。それは一度、試したことがありました。もし、あの昏睡状態が【ステータス】を試したのが原因だとしたらノン自身も扱える可能性があります。


「ん? うーん、どうだろうな。私以外に【ステータス】を使える奴は片手で数えるほどしかいないから簡単にできるとは思えない」

「えっと、実は――」


 家に帰るためなら転生のことがばれても構わない、とノンはオウサマに【ステータス】を試した時のことを話しました。


「赤ん坊の頃から物心があった? それはまた何とも稀有な……だが、お前が昏倒した原因は想像できる」

「え!? そうなんですか!?」

「ああ、単純に魔力欠乏症を起こしたのだ。【ステータス】は魔法だから使おうとすると魔力を消費する。人間は成長と共に魔力量が増えていく体質だから赤ん坊の体には耐えきれなかったのだろう」


 まさかこのタイミングであの時の真実を知ることになるとは思わず、ノンは目を見開きました。ですが、そんな彼を見てオウサマは訝しげな表情を浮かべます。


「待て。お前、魔力はどうした?」

「え? 魔力、ですか?」

「全く感じない。こんな人は見たことがない」

「えっと、もしかしたらこの指輪のせいかもです」


 そう言って彼は衣服の下から指輪付きのネックレスを引っ張り出しました。お風呂に入る時ですら身に着け続けているため、すっかり体の一部のようになっています。


「……おい」


 ですが、そのネックレス――いえ、指輪を見た瞬間、オウサマの雰囲気が変わりました。子供に対して丁寧に接していた彼女から一気に怒気が吹き出したのです。


「それは……誰から貰った?」

「え、母からです……僕、『魔漏症候群』という病気で、死にそうになった時、これ以上、魔力が漏れないように魔法が使えなくなる指輪を付けたんだそうです」

「……はぁ」


 ノンの説明を聞いた彼女はため息を吐きながら頭を抱えました。全てを察した、と言わんばかりの態度にノンは戸惑ってしまいます。


「何もかも偶然が重なった、というわけか……ノン、はっきり言おう。お前は『魔漏症候群』ではない」

「……へ?」


 病気ではない。そう断言され、彼は目を点にしてしまいました。ですが、どこか納得している自分もいます。


 『魔漏症候群』。魔力が少しずつ漏れ出してしまう病気。確かにノンは常に魔力を何かに吸われています。魔力操作を鍛え続けた彼だからこそ、それは間違いないと自信を持って言えました。


 しかし、魔力操作を鍛えれば鍛えるほど魔力を吸われている原因が首から下げている指輪だとしか思えなくなっていました。魔力が漏れ出る、というには少し違うような気がしていましたし、魔力の流れを辿ると必ず、指輪へと行きついていたからです。


「きっと、お前が【ステータス】を使用して昏倒した後、お前の母は医者に駆け込んだのだろう。そして、お前を医者に見せ、魔力欠乏症と診断された。その後、魔力が欠乏した原因を考え、赤ん坊が自ら魔法を使うとは思うわけもなく、最も可能性の高い『魔漏症候群』だと判断したのだ」

「ッ――」

「そして、お前の母は我が子を守りたい一心でその指輪を装備させた……丁寧に外れないよう、呪いまでかけて、な」

「のろ、い?」


 ――外れないようにお(まじな)いをかけたけどこれは大切なお守りだから外したら駄目だからね?


 ふとエフィの言葉が浮かびました。単にノンの無事を祈りながらネックレスを付けたのかと思っていましたが、どうやら勝手に外れないように細工をしていたようです。


「呪われている装備は外すことも、勝手に外れることもない。呪いと聞けば悪事に使用されると思うかもしれないが、たまに常に道具を身に着けていなければ死んでしまう人のために使われることがある。お前の母もそれと同じだ」

「そう、だったんですね……」

「だが、問題はその指輪だ」


 オウサマは眉間にしわを寄せながらノンの首から下がっている指輪を睨みつけます。彼女が怒りを露わにしているのはこの指輪が原因のようでした。


「その指輪は『吸魔の指輪』。装備者の魔力を常に吸い続ける魔道具だ」

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