第34話 抵抗
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「覗く、ですか?」
聞き慣れない表現にノンは首を傾げました。名前による探索が失敗し、家に帰られないとでは、と考えた瞬間に別の案が提示され、少しだけ意表を突かれたのもあり、その言葉の意味が思いつかなかったのです。
「ああ、あやつらは言葉すら話せない子供を連れてくることもあってな。その時は覗くんだ。そうすると名前や持っている才能を見られる」
「それって……」
彼が思い当たったのはまだ産まれて数日しか経っていない頃、何気なく試してみたお約束のことでした。あの時は突然、気を失ってしまい、何が何だかわからない状態になってしまいましたが、オウサマの言葉が本当であればこの世界にもステータスが存在していることになります。
「あまり褒められたものではないからな。可能な限り、やらないのだが、どうしようもない時は使っている。お前にもやっていいか?」
家を帰すため、という免罪符がある以上、勝手にステータスを覗いてもおかしくありません。特に子供の場合、説明しても理解できないと決めつけることだってありえます。
ですが、オウサマは子供相手でもきちんと説明して許可を求めました。きっと、子供のように無邪気な精霊をまとめているからでしょう。相手が子供だとしても尊厳を大切にするべきだ、とオウサマの考えが垣間見えました。そんな彼女にノンは勝手ながら尊敬の念を抱きます。
「……お願いします」
彼は転生者。ステータスを覗かれた場合、それがばれてしまう可能性もあります。転生のことは誰にも話すつもりはなかったノンですが、オウサマの丁寧な対応を見て彼女にならばれてもいいか、とその提案を飲みました。
「感謝する。では、早速……【ステータス】」
ノンの許可を得たオウサマはそのキーワードを口にしました。すると、僅かな魔力の揺らぎを感じ、それが彼の体内へ入り込んでくるのがわかります。
――魔力を感知しました。『■■■の■愛』の効果により、抵抗します。
「なっ――」
そして、甲高い音と共にオウサマの体が弾かれるように後方へ吹き飛びました。バタン、玉座が倒れると同時に吹き飛んだオウサマも地面に落ちます。
「お、オウサマさん!?」
その光景にノンは慌てて立ち上がり、彼女の元へと駆け寄りました。外傷はないようですが、吹き飛ばされた衝撃でオウサマは天井を見上げながら茫然としています。
「な、にが起きた?」
「わかりません……」
ノンもオウサマも何が起きたのかわかりませんでした。オウサマが吹き飛ぶ直前、何か聞こえたような気がしましたが今の騒動のせいでよく思い出せません。
「……すまない。この方法も駄目だった」
「いえ、僕のためにありがとうございます」
「お前をここに連れてきたのはあやつらだからな……責任ぐらいは取る」
『しかし……』とオウサマはその場で座り込み、何かを考え込み始めました。名前による探索も駄目。【ステータス】は不思議な力によって弾かれてしまう。他に方法がないか考え込んでいるのかもしれません。
「あの……その覗くのって自分自身にもできますか?」
いよいよ、家に帰られるか怪しくなってきたため、ノンも自ら動くことにしました。
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