第352話 残党
「……」
確かに今回の事件の解決にノンの存在はとても大きかったのは間違いありません。ですが、ナーティの住民たちはノンを見て信じられないと言わんばかりに視線を彼に集めます。
「こんな、子供が?」
「ええ、そうよ。今はまだ銅級だけど近いうちに銀級に上がるでしょうね。それだけの実力はあるわ」
「……」
言葉ではどうとでも言える。きっと、住民たちの大半がそう思い、ノンに視線を注ぎます。注目されることに慣れていない彼は少し照れ臭そうに目を正面から逸らしました。
「……すみません、少しいいでしょうか?」
しかし、そこで何かに気づいたノンはそう言いながら包帯を真上に伸ばします。袖から射出されたそれを住民たちは目を見開いて驚愕しました。
「そこの人、動かないでください。一番後ろに立って魔道具を使おうとしたあなたです」
そんな住民たちを無視して包帯を伸ばしながらノンは一人の男性を睨みながら警告します。彼の視線の先には指摘された後、すぐに後ろ手に何かを隠した若い痩せぎすの男が立っており、明らかに動揺した様子で目を泳がせていました。
「お、俺? 別に魔道具なんて使ってねぇよ!」
「じゃあ、今隠したものを出してください。通信用の魔道具ですよね?」
「ちっ」
どうやら、男が魔道具を使おうとした時に発生した魔力反応を彼はしっかりとキャッチしていたようです。ノンの指摘に男は言い逃れができないと思ったのか、すぐにその場から逃げ出しました。その足は一般人にしては明らかに速く、街に潜んでいた闇ギルド組員だとすぐにわかります。
ノンたちの噂が半日程度で街中に広まっていたのは住民に紛れ、自分たちに不利益な行動をしている人がいないか監視している闇ギルド組員がいたからだとブレッドは教えてくれました。しかし、誰が闇ギルド組員なのかまではわからず、組員をあぶり出すためにあえて住民たちを一か所に集め、これまでの顛末を堂々と話したのです。
それこそ、この演説を開いた本当の理由。ノンたちが住民たちの前に出た目的でした。
「逃がさない!」
ノンはその場で跳躍し、空へ伸ばしていた包帯を踏みました。そして、跳躍。それを高速で繰り返してあっという間に逃げ出した闇ギルド組員に追いつきます。
「色々と話してもらいますね!」
「ぐえっ」
そのまま包帯をまとめて球体にして男に向かって振り下ろしました。避けることもできず、彼は球体を頭に受けてドサリ、とその場で倒れ込みます。マジックバックは領主邸に置いているため、ロープの類は所持しておらず、彼は包帯でぐるぐる巻きにして拘束しました。
「すみません、この人を応援に来てくれた冒険者さんたちに渡してきます」
気絶した闇ギルド組員を肩に担ぎ、ノンは足早に広場を後にします。現在、アレッサが呼んだ冒険者たちは捕まえた組員たちの尋問をしているため、そこにこの男を追加するためでしょう。
「す、すげぇ……」
「これで満足した? 彼なら空から襲われてもそれなりに対処できる。魔族相手にどこまでやれるかわからないけど一方的にやられないわ」
ノンの戦う姿を見た住民たちはアレッサの言葉を信じるしかありませんでした。
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