第351話 功績
住民たちの前に出てきた五人の人物。人間の魔法使いと幼い少年。そして、大人の獣人と子供の獣人二人。彼らの存在は住民たちも知っており、まさか彼らこそがこの事件を解決した冒険者であり、被害者でもあるとは思わなかったのです。
「彼らにこうやって出てきてもらったのは君たちに私の話を信じてもらうだけではない」
そんな彼らを見て申し訳なさそうな顔をしながらもブレッドは一歩前に出て住民たちの視線を自分に集めました。
「一つ、確かに彼らのおかげでこの事件はひとまず解決した。だが、残党はまだ残っている。そう、ケレスカ大陸に、な」
その言葉に住民たちはハッとします。獣人誘拐はハーニンド大陸にあるナーティの街で攫ってきた獣人を奴隷商に売り払う。そして、その商品はケレスカ大陸で調達していました。そう、海の向こう側には未だに獣人たちを攫っている奴らがいます。
「なにより私たちは売られてしまった獣人たちを元居た場所へ帰す義務がある……しかし、それは情けない話だが私一人では絶対に不可能な話だ」
悔しいのでしょう、ブレッドは奥歯を噛み締めながら硬く拳を握りしめました。その表情だけで彼が強い後悔を持っていると住民たちは気づきます。
「私がしでかした罪の尻拭いを君たちに押し付けるのは間違っている! それはわかっている! わかっているが……君たちを頼るしかないんだ」
そこでブレッドは更に一歩前に出ました。たったそれだけなのに住民たちは彼の雰囲気に呑まれ、息をするのを忘れてしまいます。
「だから、頼む! 私に力を貸してくれ!」
そして、深々と頭を下げました。領主にとって、貴族にとって『頭を下げる』という行為はとても重いものです。一般市民であるナーティの住民もそれは知っていました。
だからこそ、ブレッドの覚悟を感じ取れたのです。
「だ、だがよ!」
その時、漁師の一人が声を上げました。ノンはその人に覚えがあります。最初、この街に訪れ、色々な話をしてくれた親切な男性でした。
「俺たちにできることっていったら船を動かすことぐらいだ! だが、今は海路が使えねぇ! 手伝えることなんて……」
「いいや、君たちには船を動かしてほしい」
男性の言葉にブレッドは堂々と言い放ちます。ですが、海路が使えない理由――魔族の存在が住民たちの脳裏に浮かび、顔を引きつらせました。
「む、無理だ! 魔族に襲われたら全員、海に沈む! 向こうは空を飛べるんだ! そこにいる冒険者が強くても二人だけじゃ――」
「――二人じゃないわ」
「わっ」
その時、ずっと黙っていたアレッサがその言葉を遮ってそっとノンの背中を押します。いきなりのことでノンはそのまま一歩前に出てしまいました。
「この子も冒険者よ。ランクは銅級。十分な戦力になるわ」
「はぁ!? そんな子供が冒険者!?」
漁師の男性は悲鳴のような声を上げ、ノンを見た後、彼も色々と話をした子供だとわかったのか、目を見開きます。
「それに今回の事件を解決したのはほぼこの子のおかげよ。私たちは最後に手伝っただけ」
「え、いや、そんなことないですよ」
「少なくともあなたがいなきゃ絶対に解決できなかったわ」
今回、ノンがしたことは主に三つ。
一つは情報収集。子供だからこそ、話してくれた人は少なからずいたでしょう。また、集めた情報を基にリフトの情報や崖下の洞窟を見つけたのは彼の功績であることは間違いありません。
二つ目にブレッドとの出会い。魔力を放出しないという体質を活かしてノンは領主邸へ潜入し、情報を集めるどころかブレッドと顔合わせ、協力関係を結びました。これがなければ詳しい敵の情報は得られず、作戦を立てることはできなかったでしょう。
最後に闇ギルド組員たちの制圧。ノンは跳躍を使い空を駆けることが可能です。そのため、最も制圧が難しいと思っていた船を最も油断する海上で内部に潜入し、各個撃破できました。
きっと、アレッサの言うとおり、ノンがいなければこうも簡単に事件は解決しなかったでしょう。
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