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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第348話 船内

「……」


 獣人が連れていかれた洞窟。闇ギルド組員たちが積み荷を準備している砂浜。その両方で魔力反応が動かなくなりました。それを合図にノンは隠れていた物陰から出ます。そして、一番近くにあった魔力反応に近づきました。


「あーあ、早く陸地が恋しいぜ」

「交代までもう少しの辛抱だ」


 そこには暇そうに欠伸を噛み殺す男と笑いながら酒の入った瓶を傾ける男がいました。ブレッドの話では洞窟に向かった奴らが奴隷商と交渉し、小舟で戻ってくるまでその場で待機するそうです。


「もがっ」

「んぐっ」


 しかし、それも今夜まで。ノンはゆっくりと包帯を伸ばして男たちの顔を一瞬で覆ってしまいました。そのまま首を絞めてガクンと力が抜けるまで待ちます。


「ふぅ」


 再び船員を無効化した彼は小さく息を吐き、彼らを近くのロッカーに押し込みました。もちろん、手足を縛って身動きが取れないようにするのを忘れません。


 それからノンは次々と闇ギルド組員たちを戦闘不能にしていきます。この船は一度も陸に接しておらず、見張り担当も跳躍(ジャンプ)で侵入したノンを見逃しているため、完全に油断していました。


「なぁ、なんか人少なくねぇか?」

「そうか? どっかで酒でも飲んでんだろ」

「獣人を売りに行った奴らも戻ってこねぇし」


 しかし、動ける人数が一桁になった頃、やっと船員の一人が違和感を覚えます。すでに時刻は夜の二十二時。彼らに見つからないように『慎重に、確実に』を心掛けて行動していたため、それなりに時間がかかってしまいました。


「よっ」

「なっ!?」


 ですが、ここまでくればもう隠密に徹する必要はありません。ノンは三人で行動している男たちへと一気に接近して包帯で作った拳を叩き込みます。まさか小さな男の子が目の前に現れるとは思わなかった男の顔面にそれが直撃して吹き飛ばしました。


「なんだ、こいつ!?」

「侵入者――ごぼっ」


 仲間の一人でやられ、慌てて腰に刺した剣を抜こうとする彼らですがその間にもう片方の脳天に踵を落とすノン。魔力循環で強化された脚力によるその一撃は男の意識を刈り取ります。


「こ、のっ!」


 慌ててノンへ剣を振るう残った一人ですが、動揺が剣筋に現れたせいで大振りとなり、ノンはそれを軽くかわしました。


「はい、寝ててね」


 そのままカウンターの要領で顎に右拳を掠らせ、脳震盪を起こして一発KO。たった数秒で三人の男を制圧してしまいます。


「今の音はなんだ!?」

「おい、集まれ!」

「なんでこんな時に誰もこねぇんだよ!」


 今の戦闘音を聞きつけた船員たちが続々と集まってきました。しかし、それもノンの作戦のうち。さっと物陰に隠れた彼は息を潜めます。


「なっ……おい、どうした!? 誰にやられた!」


 倒れ伏す仲間の姿に駆けつけた男の一人が慌てて様子を見に部屋に入ってきました。更にその後ろから三人ほどやってきます。


(この人たちが最後の船員かな)


 この船で動く魔力反応は四つであり、部屋に入ってきた四人を倒せば晴れて船を完全に制圧できたことになります。


「こんばん、は!」

「ぎゃあ!」


 それを確認したノンは再び物陰から飛び出して包帯の拳を二人の男へ叩きつけました。もちろん、予想外のところから攻撃だったため、殴られた二人はそのまま気絶。いきなり倒された仲間を見て残った二人も体を硬直させていました。


「じゃあ、おやすみなさい!」


 その隙を逃すノンではなく、流れるように片方の男の腹部へ蹴りを叩き込んだ後、残った一人へ包帯を伸ばして顔面を覆います。頼れる仲間は誰もおらず、最後の一人も窒息によって気を失ってしまいました。


「……よし」


 バタリ、と音を立てて男が倒れた後、船内に動く魔力反応がないか確認。そして、数分経っても反応はなかったため、ノンは体から力を抜き、小さく言葉を零しました。

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