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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第338話 二階

 屋敷の二階は三階と同じように骨董品や絵画の類はなく、どこか落ち着いた雰囲気が漂っています。部屋数は左右に三つずつ――つまり、三階と同じように六つありました。その中で僅かに動いている魔力反応が一つだけ。他の動いている反応は一階から感じ取れます。


(とりあえず、あの部屋以外を調べよう)


 わざわざ最初から屋敷の人に見つかる危険を背負う必要はありません。ノンは魔力反応のある奥の部屋を後回しにして手前の左の部屋に入りました。


「ここは……」


 その部屋に入った彼は思わず言葉を零してしまいます。その部屋には二つの大きなソファが向き合うように置かれており、その間にテーブルが設置されていました。ここは応接室なのでしょう。


 更に右の壁にはいくつかの本棚があり、中には分厚い本や束ねられた書類が入っています。その本棚に近づいて適当な本を手に取りますが漁業に関するものだったため、すぐに本棚に戻しました。


(こっちはどうかな)


 束ねられた書類に目を通してみますが残念ながらこちらはナーティ周辺の産業物や漁獲量をまとめたものでした。やはり、ナーティはケレスカ大陸への運賃や漁業に頼っており、海路が使えなくなってから毎年、赤字続きのようです。


(やっぱり、こんな資金難じゃリフトを建設するお金はないはず)


 それからパラパラと最後まで目を通しましたがそれ以上のことはわかりませんでした。書類を元の位置に戻した彼は応接室を後にして正面の部屋に入ります。ですが、そこは倉庫となっており、屋敷の備品しか置いておらず、有力な情報はありません。


 次は真ん中の左側の部屋。応接室の隣です。魔力反応があったのは右側の奥の部屋なので物音を立てないようにゆっくりと中に入りました。


 その部屋は壁際に小さな机と椅子。応接室のものより小さいソファが置かれています。ここは応接室に通されるまで待機しておく部屋なのでしょう。残念ながらそれ以外のものはないため、外れです。


「……」


 順当に行けば真ん中の右の部屋ですが、魔力反応のある部屋の隣ということもあり、中で物音を立てたらノンの存在がばれてしまう可能性があります。そのため、ノンは左奥の部屋に入りました。


(ここはもしかして……)


 部屋の奥には大きなベッド。更に他の部屋とは明らかに質の違う家具。そう、この部屋こそ領主の寝室なのでしょう。


 そして、この部屋には誰もいない。つまり、まだ領主は起きている。


「……」


 ノンの視線は自然と扉――その奥にある魔力反応に吸い寄せられました。現在の時刻は深夜の二時。娯楽の少ないこの世界では寝ている時間です。ましてや、領主ともなれば昼間の方が忙しいはずなので今のうちに体を休めていなければならないでしょう。


 ひとまず、領主の寝室を物色します。しかし、家具の質は違いますがその数は必要最低限であり、普段の生活で豪遊しているわけではなさそうでした。


(じゃあ、なんで獣人を攫うような真似を……)


 確かにリフトや旅客船などお金のかかる買い物をしているのは確かです。ですが、獣人を攫い、奴隷商に売ったお金はきっとそれ以上の額でしょう。また、普段の生活にお金がかからないのであればこれ以上、悪事を働いてお金を稼ぐ必要はありません。


 お金が好き? 生活とは違うことにお金を使っている?


 そもそも、どうして獣人を攫って奴隷商に売ろうとしたのか。その方法は?


「……」


 そんな疑問を思い浮かべながらもう一度、寝室を見渡した時、ベッドの横に置かれた小さなテーブルの上に写真立てが置かれていることに気づきます。そこには仲睦まじい家族の姿。幸せそうに笑う夫婦とその間で両手を上げている可愛らしい女の子。きっと、領主とその家族なのでしょう。


(家族もいるのに……どうして……)




 ――僕は傍にいたくてもいられないのに。




 色々と考えますがどうしてもその答えが出ません。だからでしょうか、ノンは堪らず家族写真から目を逸らしてしまいました。

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