第333話 警戒
洞窟を発見したノンはそのまま宿屋へと戻りました。あのまま魔力反応の数が多く、一人で入るには危険だったからです。
「戻ったぞ」
「はぁ、疲れたぁ」
時刻は夕方頃、最初に戻ってきたのは上町に行っていたグレイクとアゼラでした。二人は男部屋に入った途端、ローブを脱いで小さくため息を吐きます。やはり、ずっとローブで姿を隠しているのは窮屈なのでしょう。
「おかえりなさい」
ベッドに座ってマジックバックの整理をしていたノンはその作業を止めて立ち上がりました。そのまま、マジックバックから革製の水筒を取り出して二人に渡します。冷たい水を入れた直後にマジックバックに収納したため、今も冷えたままでした。
「おー、さんきゅ! やっぱ、便利だな、マジックバック!」
「ねー」
テレーゼから貰ってから何度もお世話になっているマジックバック。ノンはそれを一撫でした後、床に置きました。
「そっちはどうでした?」
「……」
ノンの質問にグレイクはどこか難しい顔をして黙り込んでしまいます。まさかの反応に首を傾げました。
「何かあったんですか?」
「入れなかったんだよ」
「え?」
「だから、上町には入れなかったの!」
まさに納得できません、と言わんばかりに声を張り上げるアゼラ。しかし、ここが宿屋だと思い出したのかハッとして口を閉じました。
「入れなかったんですか?」
「ああ、どうやら、上町には領主が住んでるからセキュリティが厳しいらしくてな。下町で許可証を発行しないと入れないそうだ」
ナーティは港町。この街を訪れる人は基本的に下町にしか用事はありません。そのため、住民以外の人が上町に入るためには手続きが必要なのでしょう。
「特にオレたちはローブで姿を隠してたからな。門前払いだった」
「あんなに頑なにならなくてもいいのにな! めっちゃ嫌な感じだったぜ」
「まぁ、怪しいのは間違いないからね。僕たちのこと、ちょっと噂になってるみたいですし」
運搬依頼で街に来た怪しい冒険者が上町に行こうとした。そんな噂がすでに流れ始めているでしょう。もしかしたら今まで以上に動きづらくなるかもしれません。
「はーい、戻ったわよー」
その時、アレッサとミアも男部屋にやってきました。しかし、二人ともグレイクとアゼラのように何とも言えない表情を浮かべています。
「そっちも何かあったのか?」
「そっちもってそっちも? はぁ、やだなぁ」
グレイクの言葉にアレッサは不思議そうな顔をした後、すぐに面倒事の匂いを嗅ぎ取ったのか、深々とため息を吐きました。
「アレッサさんたちは何があったんですか?」
「最初の方は普通だったのにいきなり住民たちの反応が悪くなったの。なんていうか警戒されてるって感じ。おかげで進展は特になしよ」
「警戒され始めたのは何時くらいだ?」
「えっと、確か十六時くらいです」
「おれたちが上町に入れなかったすぐ後だな」
「そこで警戒されて下町に連絡が行ったのかもしれませんね」
つまり、すでにノンたちはナーティの街に住む住民たちから怪しまれているのでしょう。これでは下手な動きをすると通報されて街から締め出されてしまう可能性があります。
「でも、早くない? 私たちが仲間だってばれてるし」
「この街に冒険者が訪れたのは久しぶりらしいし、印象に残っているんだろう。だが、今後はどうする?」
「あ、その前に伝えたいことがあるんです」
そこでノンは上町の崖下で見つけた洞窟とその奥にいくつもの魔力反応があったことを伝えました。
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