第332話 発見
リフトのことを聞いたノンは次に上町と下町を繋ぐロープを観察するためにリフト場の周辺を探索することにしました。
下町のリフトが設置されている場所は下町の中でも東側。少し高台になっているところです。そのため、最も東側で下を覗き込めば海が広がっており、その上をリフトが上町に向かって伸びている構図でした。
「おー」
こそこそと誰にも見つからないように移動したノンは高台から海を覗き込むとそこは岩場になっていました。ザバン、と波が岩場を叩き、白い飛沫が舞います。
(つまり、高台の下に行くためには港から海に飛び込んでここまで泳ぐ必要がある、と)
必要のない情報かもしれませんが彼は念のために頭の片隅にメモを残しました。更に顔を上げると上町のある崖がそびえ立っており、ガタガタと音を立ててリフトが登っていきます。
「……」
上町の崖下も同じように岩場であり、ほぼ垂直の壁となっているため、下から登るのは不可能でしょう。もちろん、ノンが愛用する包帯のような特殊な魔道具がなければ、という話ですが。
(あとは魔族か)
翼を持つ魔族は空を飛べるため、海から上町に侵入することは可能でしょう。それこそ、海路が使用できないのは飛行能力を持つ魔族の襲撃を警戒したからです。
(ううん、駄目だ。違和感のせいで疑心暗鬼になってる)
ナーティの街では特に問題は起きていません。ただ、魔族との戦争によって海路が使えないだけ。ノンたちの目的はあくまでも獣人の国があるケレスカ大陸に行くこと。すでに目立っているせいで噂が広がっている現状、下手な動きを見せたら住民たちに警戒されてしまうでしょう。そうなる前に早く海を渡る方法を――。
「……」
――いえ、それも違います。ノンはすでに海を渡る方法を持っている。だから、万が一のことがあってもケレスカ大陸へ行くことは可能です。ただ、あまり使いたくないから別の方法を探しているだけ。
違和感を覚えているのはノンだけではありません。アレッサもグレイクもおかしいと思っているから積極的に調査をしています。優先するべきなのはこの違和感の正体を明らかにすること。
だって、この違和感を無視して海を渡ることを優先したせいで多くの人が不幸になったら悔やみきれないから。
「……よし」
ノンは一言だけ呟き、周囲を見渡して人がいないことを確認。そして、包帯を上町の崖へと伸ばしました。幸い、包帯を硬質化すれば刺さるほどの硬さしかなかったらしく、上手く包帯の先端は崖の中腹辺りに刺さります。
「よっと」
そのまま高台から飛び降り、海の上をターザンのような軌道を描きながら勢いよく跳び越えました。もちろん、崖に激突する前に両足を前に突き出して着地します。きっと、魔力循環によって足を強化していなければ折れていたかもしれません。
ノンは包帯をゆっくりと伸ばして崖下の岩場に降ります。近くで波が岩場に当たり、水飛沫が上がるせいですぐにずぶ濡れになってしまいました。
「……」
しかし、それでも彼の足は止まりません。滑らないようにゆっくりと岩場を移動して反対側へと向かいました。グレイクが言っていたことが気になり、下町の方から見えないところを確認しておきたかったのです。
「……あった」
そして、ぐるりと崖の反対側に回ったノンが目にしたのは上町の上からも死角になっているところに小さく開いた入り口。そう、波によってできた天然の洞窟です。
きっと、この洞窟に入るためにはノンのように崖を降りるか、小船に乗ってここまで来るしかありません。ですが、今、ナーティの人々は街から見える範囲でしか漁をしていないと言っていました。そのため、この洞窟の存在は知っていても近づきはしないでしょう。
「……」
しかし、何故でしょうか。ノンの魔力感知はこの洞窟の奥に複数の魔力を感じ取ったのです。
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