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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第331話 リフト

 アレッサたちを別れたノンはその足で下町を歩きます。目指している場所は街の中でも目立つ場所にあるので道を聞かずとも迷うことはないでしょう。


「……」


 辿り着いたのは上町と下町を繋ぐリフト。関係者以外立ち入られないようにリフトを囲むようにフェンスが立てられており、注意書きの看板が取り付けられています。また、遠巻きに中を覗き込むと作業員が上町から来たリフトから荷物を降ろしているところでした。


(荷物を降ろしてる間、リフトは止めるんだ)


 木製の板を地面に降ろし、荷物を固定しているロープを外しています。ですが、誤って板から落ちないように複数のロープを使っているため、その作業だけでそれなりの時間を要しそうでした。


「……」


 作業員たちに気づかれないようにノンはフェンスをぐるりと回りこんでリフトそのものへと視線を向けます。やはり、いくつもの滑車を利用して小さな力でリフトを動かせるような仕組みになっていました。


「よーし、こっちはオッケーだ」

「じゃあ、動かすぞ」


 ノンの存在に気づかないまま、板から荷物を降ろした作業員たちは声を掛け合った後、リフトを動かします。ガタン、という音と共にゆっくりとロープが動き始めて木製の板が上町の方へと向かい始めました。


(速度はゆっくり。滑車の動きはぎこちないし、金属部分はほとんどないからかなりガタガタ揺れてる)


 これでは人が木製の板に乗った場合、大きい揺れのせいで落ちてしまうのも無理はありません。それは荷物も例外ではなく、過剰なほど固定していたのでしょう。


 しかし、確かに前世に比べたらお粗末だと言わざるを得ないリフトですが致命的な欠陥があるわけではなく、きちんと荷物を運べています。


「ん? おー、そこの君! 何か用かい?」


 登っていくリフトを眺めていると作業員の一人がノンに気づいて手を振りました。ノンはぺこりと頭を下げた後、フェンスに近づきます。


「ちょっと見てただけです」

「あ、もしかして午前中に来た冒険者さんたちの連れかな?」

「え? 知ってるんですか?」

「ああ、確か運搬依頼で来たんだろ? ローブで姿を隠してるから目立ってたからな」


 まさか自分たちのことが噂になっているとは思わず目を見開いてしまいます。確かに獣人組が目立つのは仕方ありませんがたった数時間で街中に広まっているとは思いませんでした。


「やっぱり珍しいか?」

「そう、ですね。どうやって動いてるのかなって」

「ああ、これは魔道具なんだよ」

「魔道具?」

「ほら、あそこに大きな魔石があるだろ? ここに魔力を注げばリフトが動く仕掛けになってるんだ」


 作業員が指さしたのはいくつもの滑車が動いている可動部――それを支えている支柱の下部分には黄色い巨大な魔石が埋め込まれていました。大きさは人の頭部ほどでしょうか。あれほど大きな魔石をノンは見たことがありません。


「でも、これだけ大きな魔道具なら要求魔力量も多くなるんじゃ……」

「お、しっかり勉強してるんだな。確かにそうなんだが、同じ魔道具が上町にもあるんだよ。それらは連動しててあのレバーを引けば同時に動くってわけだ」


 つまり、あの魔石が埋め込まれている支柱が上町にもあり、同時に動くことで魔力の消費量を減らしているのでしょう。


「まぁ、それでも作業員たちの魔力を注いでやっと動くってぐらいだから欠員が出ただけで苦労するんだよ」

「そうなったらどうするんですか?」

「街の連中に手伝ってもらってる。小遣い程度だけど賃金も出るから進んで魔力を提供してくれる人は多いよ」


 やはり、魔力問題はあるようでその点は苦労しているのでしょう。ですが、リフトは上町も下町も必要としているため、住民たちは率先して協力してくれるようです。


「因みにこのリフトっていつ頃からあるんですか?」

「うーん、三年前ぐらいか? 計画自体は四年前から始まって設置するのに一年かかって感じだな」

「なるほど、ありがとうございます」


 知りたいことはだいたいわかったのでノンは作業員に頭を下げた後、その場を離れることにしました。

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