第330話 方針
調査をすることになったものの、時刻はお昼を過ぎていたため、ノンたちは宿屋近くにあった食堂でご飯を食べることにしました。
「とりあえず、上町には一度行ってみた方がいいわね」
もぐもぐと大きなエビが乗ったパエリアを食べながらアレッサがテーブルに置いたナーティの簡易的な地図を指さします。その地図はナーティを初めて訪れた時に入り口で受け取ったもので、大雑把ではありますがナーティの街にどんな施設があるのか記されていました。もちろん、その中に上町と下町を繋ぐ坂もあります。
「ああ、そうだな。だが、この大人数で行けば目立つ。二手に分かれて上町と下町で更に情報を集めた方がいい」
その正面で焼き魚を食べる手を止めたグレイクは地図を睨みながら提案しました。獣人組はローブで姿を隠しているため、歩くだけで人の目を引きます。そのせいで今後の動きに制限がかかる可能性を危惧したのでしょう。
「なら、私とノンは分かれた方がいいわね。ミア、今度は私についてきて」
「なら、上町に行くのはオレとノン、アゼラの三人か」
「は、はい!」
「おう!」
「……」
お子様ランチを頼んで楽しそうに食べていたアゼラたちは元気よく頷きました。しかし、その中でノンだけは何か考え事をしているのか、ジッと目の前に置かれたシーフードカレーを見つめています。
「ノン、どうしたの?」
「……いえ、何でもないです」
そのことに気づいたアレッサが声をかけますが彼は首を横に振ってスプーンでカレーを掬い、口へと運びました。カレー特有のスパイシーな味の奥から海鮮の風味が口内に広がります。
(うん、美味しい、けど)
この世界にカレーがあったことに驚きましたが味はやはり前世の方が洗練されているような気がしました。やはり、前世と似たような物が多くても技術的な部分は前世の方が進んでいるのでしょう。
(だからこそ、引っかかる)
「すみません、今回も僕だけ別行動でもいいですか?」
「何か気になることでもあるの?」
「ええ、少しだけ。街からは出ないので安心してください」
「……わかった。だが、気を付けるんだぞ」
漁師の話を聞いてから気になっていたことを調べると言ったノンにアレッサとグレイクは一瞬だけ顏を見合わせた後、頷きました。ノンの実力なら単独行動しても問題なく、むしろ、漁師から話を聞けたように子供だからこそ集められる情報があると判断したのでしょう。
「はい、わかりました」
それでも心配そうなグレイクの言葉にノンは苦笑を浮かべて頷きました。
ここはナーティ。周辺には強い魔物はおらず、街も雰囲気も少し沈んではいますが平和そのものです。そんな街中を歩くのにグレイクは気を付けろと警告した。それだけ彼もこの街に違和感を覚えているのでしょう。
「じゃあ、ご飯を食べたら私とミアは引き続き下町の調査。グレイクとアゼラは大変でしょうけど上町をお願い。ノンは気になることを調べたら私たちと合流せずに宿屋に戻って。行き違いになったら大変だから」
「わかりました」
今後の方針は決まりました。あとは怪しまれないように調査をするだけ。それだけのはずなのにどうして、こんなに胸騒ぎがするのか。ノンもその理由はわかりませんでした。
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