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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第329話 噂話

「――領主様、ねぇ」


 漁師の男性と別れた後、ノンは一度、宿に戻ることにしました。そして、すでに宿に戻ってきていたアレッサとアゼラに聞いた話を報告したのです。


「やっぱり、気になりますか?」

「ええ、ちょっとね」

「え、なんでだよ。みんなを助けるために船を買ってくれたんだろ?」


 アゼラにもわかりやすいように話をしたおかげで彼はベッドの上で腕を組みながら首を傾げます。話を聞く分には民のために船を買う体でお金を渡した。そう聞こえますがノンもアレッサもそれを素直に飲み込めなかったのです。


「アゼラ、港は見に行った?」

「お、おう。船がたくさんあってすごかったな!」


 アレッサたちも街を見て回ったのでしょう。アゼラは目をキラキラさせてベッドから飛び降りました。


「そうだね。でも、あれって全部、漁船らしいよ」

「え、漁船って魚を捕まえる船だろ? でも、さっき領主って人は人を運ぶ船を買ったって」

「うん……買った船はどこに行ったんだろうね?」


 それが引っかかっている理由。このご時世、旅客船を買う物好きはいないでしょう。更に仮に売れたとしても領主ならば維持費がかかったとしてもどこかに売らずに港で維持。そして、魔族との戦争が終わった後に元の持ち主へ安値で返す。それが最も理想的でしょう。


 しかし、現実は違います。旅客船は全て港から姿を消し、領主は上町で民に感謝されながら日々を過ごしている。目先だけの利益だけで領主を称え、魔族との戦争が終わったら旅客船を返せと訴える。そんな姿が目に浮かびます。


「それがわからない領主じゃないと思うんだけど」

「そんなに優秀な領主なんですか?」

「住民たちの話を聞く分にはね。旅客船以外にも色々やってるみたい」


 アレッサたちが集めたのは主に領主に関する話でした。


 例えば、食料を調達するために定期的にキャラバンを呼んでいること。月に一度、下町を中心とした祭りが開催されていること。漁業以外の産業にも手を出し始めていること。


 しかし、ノンが手に入れた旅客船に関してはアレッサたちも知りませんでした。おそらく、話を聞いた相手が市場にいた店主や住民が中心だったからでしょう。


「戻ったぞ」

「戻りましたー」


 その時、グレイクとミアが帰ってきました。フードを脱ぎ、頭を振って形の崩れた耳を整えます。その仕草がどこか似ており、ノンは少しだけ笑ってしまいました。


「そっちはどうだったの?」

「あまりいい話は聞けなかったな」


 グレイクたちが集めた話は周辺の地理について。上町と下町は長い坂で繋がっており、それぞれの街に用事がある時は徒歩で行き来をすること。そして、上町のある崖下には長年、波が岩を削ったことで自然とできた洞窟がいくつもある、とのことでした。


「他にもナーティの街周辺には強い魔物はいないって言ってました」

「まぁ、だからこそ、キャラバンは商品をここまで運べる。それを下町の人たちが買い取り、リフトを使って上町の人に売る。上町の人はそれをお金で買って生活をする。そんな循環ができてるのね」


 その仕組みを作ったのが今の領主。それまでは下町から馬車を使って強引に荷物を運んだり、上町の人たちが毎日のようにあの坂を往復して必要な物を買っていたそうです。


「そう考えるとやっぱり、領主は優秀なはず。旅客船だけがあまりにも杜撰だわ」

「……もう少し調査した方がよさそうですね」


 噂話はあくまでも噂話。それを鵜呑みにして行動するのは危険です。


 ですが、その噂話の真相を明らかにすることは大事なこと。ノンたちは集めた噂話を調べることにしました。

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